003:転校生は突然に②
しばらくは水原視点が続きます。
ホルダー。
生まれながら異能力を持ち、人類の範疇を超えた力を発揮する者たちの総称。
世界に約10万人、日本には約2000人しかいない稀有な存在である。怪異「ロウズ」に対抗できる唯一の戦力であり、能力を持った人間は国連直下組織の元で人類の為にその身を粉にして戦う...
これが水原をはじめとした一般人のホルダーに対する認識である。ホルダーという存在は、TVのニュース番組に出てくる画面越しのトップホルダーたちが一般人の持つホルダーのイメージそのものであり、自分とは無関係、別世界の存在として認知している場合がほとんどである。
水原もこの瞬間まではそのうちの1人であったのだが、転校生空木零の出現によりたった今同じ世界の存在となった...
(この顔... どこかで...)
必死に記憶を探ってみるのだが思い出せない。有名人か?動揺して思わず声に出しそうになるのを必死に抑える。幸い、超感覚人間の玲香にも気付かれていない。
(他の人は...?)
玲香に悟られないようにさりげなく周りを確認してみるが、驚いたような顔をしている生徒は1人も見当たらない。みんな転校生に対する一般的な反応をしている。
「え〜〜〜っと... 空木は確か東京出身だったな。」
「はい!まあ東京って言ってもそんな都会ってわけでもないんですけどねー。」
「まあいいや。じゃあ今日からお前らの仲間が1人増えるってわけなんで、仲良くやってくれよ。じゃあ席は...水原の隣だな!」
(いやいやいやいやいやいやちょっと待て。転校生ってこんなに自然と隣の席になるモンなの!?)
(ん?今なんで言った?私の隣?)
よく考えてみればそれは必然であった。席は出席番号順、「み」ずはらなので左下の一個右、そしてこのクラスは左端の1番下まで埋まる一個手前で人数カウントが停止するので...
「水原...さん?今日からよろしく。」
机と椅子を手に持って空木が挨拶する。対する水原は動揺のあまり挨拶の声が裏返り、玲香をはじめとするクラスメート達にあらぬ誤解を生むのであった。