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31/34

その31

 ―――――だから、何も心配いらない。にゃにゃみちゃんが戻ってきてくれたから、今まで通り。何もかも。


 にゃにゃみちゃんが眠り始めてから、つまり地震の日から五か月がたってるにゃん。


「5か月?私は向こうで2年くらい過ごしたよ」


 ―――――それも、時間軸と空間軸のゆがみとか、なんたらかんたらだと思うよ。(←ん?)


 七海はクーの言葉を聞きながら、ほっとしていた。ほっとすると同時に何か大切なことをほうり出しているような罪悪感にさいなまれた。


 ……………王妃様は?国王陛下は?王女様と、王子様は?フェルゼンさんは?


 七海は、置きっぱなしになっていたスマホを手に取ると電源を入れた。幸いバッテリーは切れてはいなかった。


 七海は検索画面を見ながら泣き続けた。国王一家のその後の不幸がありありと伝わってきたからだ。


 あの日、七海をおいてテュイルリー宮殿を抜け出した国王一家は逃亡に失敗してしまったこと。あの日の国王一家の逃亡は『ヴァレンヌ事件』と銘打たれ、のちに語り継がれるものとなったこと。その逃亡のさなか、国王ルイ16世はフェルゼン伯の同行を拒否し、そのことがこの逃亡の失敗の要因の一つだと言われていること。

 この逃亡の失敗から、急速に王室への敬意が傾き、やがて国王のみならず王妃も断頭台の露と消えたこと。残された王子のその後の不幸な境遇と短い人生、生き延びたとは言いながら、幸せとは言えなかった王女の生涯。


 とうとう辛くて、読むことができなくなって七海は床に突っ伏して泣き始めた。


 クーはそれを黙って見ていた。


 しばらくたって、


 ―――――にゃにゃみちゃん、きいて。


 クーは突っ伏した七海の背中にのり、慰めるようにもみながら


 ―――――悲しいことばかりだったけど、でも一つだけ、王家も希望を残したんだよ。マリー・テレーズ王女を覚えているよね。


 七海は顔をあげた。クーは七海を見つめながら言った。


 ―――――彼女には替え玉が用意されていたんだ。彼女は逃げ延びて生き抜いた。そして彼女の命は今、にゃにゃみちゃんが受け継いでいるんだよ。

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