その29
――――にゃにゃみちゃん、にゃにゃみちゃん、にゃ…………
七海は自分を呼ぶ声に揺り起こされ目を覚ました。
「ん……ここはどこ?」
七海がぼんやりした頭をおさえながら目を開けると、自分を見つめるブルーの瞳と目があった。
幾瀬家の愛猫、黒猫のクーが目の前にいた。
「クーちゃん………。ここは…………」
―――――おかえり。帰って来たんだよ、うちへ。
七海はまだ体は動かせないまま、頭だけを巡らせた。確かに自分の家の、自分の部屋のような。ただ、自分の部屋にしては、妙にきちんと片付いているが。
―――――にゃにゃみちゃんの代わりは、このクーがちゃんとつとめたにゃ。あんしんするにゃ。
「代わりって………何のこと?……あれ、あたし、しゃべり方元に戻ってる。」
ずっとニャーニャーしゃべるにゃにゃみ………いや、七海にイラついた方もいらっしゃったとは思うが、本来七海はほぼほぼ普通にしゃべる女子なのだった。
―――――それはね、にゃにゃみちゃんがいない間、クーがにゃにゃみちゃんと入れ替わっていたから、一部、能力交換の都合上そうなってしまったのにゃ。
「能力交換?」七海はやっと起き上がるとクーを膝に乗せた。
―――――そう。能力交換。にゃにゃみちゃんは学校で地震にあった時、ちょうど真上にあった天井が崩れて下敷きになって意識不明になったにゃ。最初は病院に入ったけど、すぐ家に帰ってきてずっとねむってたにゃ。
「わたしが?」
猫のクーの発する音声はにゃ~だったが、七海の脳内にはテレパシーの様に日本語が聞こえていた(←最初にフェルゼンと出会った場面を参考にご覧ください)。
―――――そうにゃ。毎日、お父さんもお母さんも泣いて…………おじいちゃんは、死んじゃうかもと思うくらい泣いてた。クーも辛かった。
でも、クーは見つけたにゃ。
クーは七海の膝の上で、きりっとした表情に変わった。