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その17


 七海がふと目をやると、先ほどから侍女らしい者に手を引かれた少女と少年が部屋の隅にいた。


 …………だれにゃん?


 この二人は当時6歳と9歳になる国王と王妃の間に生まれた王子と王女であった。


 二人は、不安げに大人たちの言い合う姿を見つめていた。


 七海はふとかわいそうになり、


「もしよろしかったら、私と遊びませんか?」と二人に問いかけた。


 養育係の侍女たちは一瞬、身を固くしたが、それよりなにより、自分たちの今後の身の振り方の対策の方が大事だった。とりあえず、いつでも逃げ出せるよう荷物をまとめるために、この場から離れられることに喜び、あっさり、王家の子どもたちから手を離した。


 七海は部屋の外に出て、だれもいない廊下で


「追いかけっこしましょう!」と二人を誘った。


 王子の方は無邪気に


「遊ぶ、遊ぶ!」とぴょんぴょん飛びながら乗ってきたが、王女の方は、ツンとすまし、扇を使いながら、


「私の事は、マダム・ロワイヤル(王女様)とお呼びなさい」と命じてきた。


(ここで余計なお世話のプチ解説。マダムっていうのは自分より目上の女性に対する敬称なので、『王女』であれば幼くても、地位の高い女性なので、この場合ふさわしい呼び方です。実際、このマリー・テレーズは幼いころよりそう呼ばれていました。結婚したからミスがミセスになるようにマドモアゼルからマダムに変わるわけではないです♡)


 幼い王女は、もっと幼いころから、自分の体重と同じくらいの重さのパニエを身につけさせられ、誰よりも気位を高く保っていなければならなかったのだ。


 だが、そんな王女様の気品も虚勢も、七海にかかっては


 …………おしゃまさんだにゃ。かわいい!


 としか、感じられていなかった。


 七海はなんとなく、この二人に親近感を感じ、


 …………何とか、この可愛い顔から不安そうな様子をけしてあげたいにゃ。


 と思っていた。


 七海は、追いかけっこだけでなく、アルプス一万尺、ずいずいずっころばし、果ては人間竹馬やぶんぶん風ぐるまなども駆使して、二人の気を引いた。


 結局なんだかんだ言っても、『王女様』も子ども。最後にはノリノリで、三人はしばらく遊んだ。


 ひとしきり体を動かしたことで、目にした大人たちの繰り広げていた騒動への不安が薄れたのか、まず王子が、そして王女も、眠気を口にし始めたので、女官を探し、七海は子どもたちを寝室へと運んだ。






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