その12
ルイ十六世は七海から錠前を受け取り従者に渡し、王妃に
「では私は狩りにでかけるよ」と声をかけ、従者とともにトリアノンを出て行った(この日実際に、ルイ16世がトリアノンを訪問したかは定かではありませんが、主人公七海との出会いを平和な日常の中で設定したかったので、ご了承~♡)。
アントワネットは、ほっと一息つき、
「では、いつものように楽しみましょう」と声をかけ、自らもハープの前に座り他の貴族たちと合奏を始めた。
「七海、舞って頂戴!」王妃に言われる前から七海の体はリズムをとらえ始めていた。
王妃の声を待っていたように、カーテーシーの後、中央の空間に躍り出て、いきなりのカブリオール(ジャンプして空中で両足を打ち付ける踊り)で見ているものの度肝を抜き、観衆をどよめかせた。アラベスクから得意の連続ピルエット…………。
七海の通っている教室はあるバレエ団に付属する、主にクラシックバレエを教える教室だったが、七海はコンテンポラリー(現代舞踊)も得意としていた。そして、いつかダンサーだけでなくコリオグラファー(振付師)としても活躍したいと思っていた七海は、ぼんやりしている授業中に、振り付けを考えていることも多かったので、初聞の音楽でも自由に踊りを乗せていくことができたのだ。
その時である。
「王后陛下(王妃の敬称)、こちらにいらしたのですか!」いきなりドアが開き、血相を変えた家臣が現れた。