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最優先する青  作者: 青木りよこ
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26/35

お土産

まただ。

また上手く喋れなかった。

逃げる様に電話を切ってしまった。

もうちょっとお話したら良かった。

せっかくお土産を買って来てくれて、栗と柿お好きですかって聞いてくれたのに、ふがいない。

肉じゃがお好きですかって何か意味があったのかな?

話しを広げようとしてくれてたなら申し訳ない。

本当に情けなくて自分が嫌になる。

メールしてくれたんだからこっちもメールで返せばよかった。

でも何だろう。

声を、聞きたいと思ってしまった。

ちゃんとお礼を言いたいと思ってしまった。

それがいけなかった。

もっとちゃんと何喋るか考えてから電話したらよかった。

結局食べ物の話しかしていない。

青柳さんイベントに行ったんだから、声優さんの話してもいいと思っていたかもしれないのに。

楽しかったですかくらい聞くべきでしょ。

あー、もう、嫌。

なんて気が利かないんだろう。

いい年して恥ずかしい。

でも半可通の知識で声優さんの話したら本当に好きな青柳さんからしたら気分がいいものじゃないかもしれないし。


「魔法少女カノンかのん」を一話から見てみたけど正直他の声優さんの声とどう違うのかよくわからない。

青野椿の出演作まとめてみたって動画を見ると小さな女の子から大人の女性まで演じていて役に一貫性がなくて青柳さんが好きなのがどれなのかもわからない。

今度会ったら話してみようかな。

青野椿さんのアニメ見ましたって。

でも一本見たくらいで語っていいものか。

ああ、駄目だ。

絶対駄目。

プロの前で素人が話すなどおこがましい。

もうちょっと見てからにしよう。

でも出てるアニメが多すぎて、どれから見たらいいですかとか指示を仰いだ方がいいのでは。

会話の糸口になるかもしれないし。

でももしもそう言う話したくない人だったらどうしよう。

この間何のオタクなんですかなんて聞いてよかったのかな。

本当は嫌だったかもしれない。

自分のこと話すの好きじゃない人かもしれないし、そもそも趣味って人に話すもの?

趣味がないからわからない。

食べることは趣味?

趣味じゃないな、生きることそのものだし。

食は人生。

人生とは食。


前向きに考えよう。

ちょっと整理してみよう。

青柳さんは青野椿さんという声優さんが好きで彼女に会うために石山から電車で岐阜まで行き一泊し翌日名古屋に移動し、イベント終了後石山に帰って来て私にメールをくれた。

栗きんとんと柿羊羹は岐阜の名物だ。

つまり岐阜からずっと持っていてくれたのだ。

お土産とは結構場所も取るし嵩張るものだ。

それに羊羹は重い。

わざわざ一日お土産を持ったまま移動してくれていたのだ。

私が食べたいかもしれないと、喜ぶかもしれないと思って。

図々しい。

自分のために買ってきたと思うなんて。

うぬぼれるのも大概にしないといけない。

家族のためだ。

お婆さんとお母さんのためだ。

私はそのついで。

職場にも買っていったのかもしれないし。

それなら凄い荷物だから駅のコインロッカーにでも入れたのだろうか。

ついででもお土産買いながら私のこと思い出してくれてたってこと、になるんだよね。

ほんの一瞬でも思い出したよね、私のこと。

食い意地の張った女として青柳さんの頭の片隅にでもいたかな。

そうだ。

メールもくれた。

岐阜からも名古屋からも。

写真を送ってくれた。

それも食べ物の写真だけじゃなくて岐阜の風景写真。

気の利いた返しもできないのに何枚も送ってくれた。


纏めよう。

総括として私は青柳さんのメールが嬉しい。

お土産を買って来てくれたのも嬉しい。

青柳さんとお食事に行くのも楽しみにしている。

青柳さんが好きな青野椿さんのことはよくわからないけれど最初から理解できるとも思えないから保留。

でも嫌いじゃない。

多分好きになれると思う。

これは私は青柳さんに好意をもっているってことでいいのだろうか。

でも違う。

やっぱり違う。

食べ物が絡み過ぎている。

栗きんとんと柿羊羹が嬉しいのか、青柳さんがお土産を買ってきてくれたのが嬉しいのかがわからない。

だって青柳さんと栗きんとんなら栗きんとんだし、青柳さんと柿羊羹なら柿羊羹だし。

そもそも同じ天秤に乗せるのもどうなんだろう。

あー、もう、どうしようもない。

どうしてこんなに食べることばかり考えているんだろう。


木曜日まで時間はある。

考えてみよう。

純粋な好意とは呼べなくても青柳さんと会いたいと言う事実に偽りなんかない。

青柳さんに会いたい。

無表情で何でもないことの様に美味しいものを淡々と食べてしまえるあの人を見ていたい。

一度何にも食べないで会えないだろうか。

食事以外で会ってもらえるかな。

外食ばかりさせたら悪いし、でも何したらいいんだろう?

朝から待ち合わせしたらお昼ご飯一緒に食べるだろうし、喉渇いたらお茶するだろうし。

アイス食べたっていいし、ケーキでもいい。

コーヒー一杯だっていい。

何も食べないとか有り得ない。

やっぱり食べることから人間は離れられない。

特に私は。


木曜日お土産渡してこれっきりじゃないよね。

私はこれっきりにしたくない。

そうだ。

ちゃんとはっきりしている。

青柳さんと私はまだ会いたい。

さよならしたくない。

この感情を何と名付けるのか名付ける程のものなのかすらわからないけど。

今は身体が喜ぶ方へと進む。

だって青柳さんからメールが来て考えもしないで景気づけにアイスも食べないで電話した。

考えるのやめよう。

身体に従う。

任せる。

きっと心より先に行ってくれる。

早く木曜日になって欲しい。

栗きんとんに柿羊羹に青柳さん。

その取り合わせは見たこともないくらい可愛く食べ合わせもよさそうだと思った。

そして青柳さんが食べ物なら食べれるなと思い、青柳さんなら多分和菓子で、どら焼き、水無月、麩饅頭あたりかなと考えている間に自然と頰が熱くなり自分の想像に急に恥ずかしくなりベッドに突っ伏した。























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