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最優先する青  作者: 青木りよこ
23/35

収穫

今日もちゃんと喋れなかったな。

私ってホント駄目だな。

食べるのと喋るのが両立できない。

食べたらそれに意識がいっちゃうし、でも食べなかったらずっと喋ってなきゃならなくなりそうでそれはできそうもないし。

電車に乗り一人で反省会をする。

収穫は青柳さんが青野椿という声優さんが好きということと甥っ子がいるということがわかったくらい。

青柳さん、今日も淡々と食べてたな。

あれだけ美味しいカレーうどんを食べても一切顔色も変えず何でもなく振る舞えるなんてかっこいいと思う。

自分はどうも食べていると大げさに振る舞ってしまう傾向がある。

そのくせ食レポなどできそうもない程語彙力は乏しく美味しいとしか言えない。

本でも読もうかしら。

でも美味しいと言うこの世で最も幸せな感覚を表す言葉が日本語で他にあるとは思えない。

美味しいって言ったら通じるはず。

だって他にこの幸せを相手に伝える術を私は知らない。

青柳さん呆れてたかな。

でも又会ってくれるって言ったし、メールもしていいですかって言ったらいいと言ってくれた。

青柳さん気持ちいい食べっぷりだったな。

こう、美味しいことなんて自明の理みたいに食べてた。

美味しいことに驚いたりしてなかった。

ああいう人になりたい。

食べ物で興奮するのいい加減いい年なんだから辞めたい。

恥ずかしい。

でも他に興味あることなんかないし。


今週はちゃんと魔法少女カノンかのん見よう。

DVDがあったはずだから最初から見てみよう。

会話の糸口を掴みたいし、あの何が起きてもなんともない顔をしてそうな青柳さんを冷静でいられなくするほどの人だ。

魔法少女カノンかのんの話になった時ほんの少しだけど声に未知の熱量を感じた。

あんなに美味しいカレーうどんを食べても、揚げたてのぷりぷりしたエビ天を食べても表情の崩れなかったあの人が。

青柳さんアニメばっかり見ているのかな。

楽しかったって言ってくれたけど、それは社交辞令だろうけど、美味しいは嘘じゃないよね。

どうしたらいいんだろう。

青柳さんとどうなりたいんだろう。

付き合いたいのかな。

自分でもよくわからない。

でもわかってるのは、私は青柳さんのことが気になっている。

どうして気になるのかはわからない。

唯淡々と何でもないような顔をして食べるあの人をカッコいいと思う。

それが単純な好意と呼ぶにはまだ全然決定的に足りていない気がするけど、今のところはそうだ。

あの人と又会いたい。

ちゃんと話してみたい。

あの人が何に心を動かされるのか知りたい。

もうすぐ彦根に着く。

家に着いたら青柳さんにお礼のメールをして、穂乃果に電話して、アイスを食べよう。

いや、景気づけにアイスを食べてからにしよう。

その方がきっと上手くいく。

食べ物はいい。

無言でいつも寄り添って力を与えてくれる。

このもやもやの正体はわからないけれど、それもいつかすっきり霧が晴れたようになるのかもしれない。

というより家に帰ってアイスを食べたら自然とどうでも良くなるかも。

駅の階段を降り井伊直政の銅像を見てほっとする。

やっぱり彦根はいい。

家が一番。

青い髪のパトロールAIが一体隣に並ぶ。

どうやら家まで送ってくれるらしい。

まだあどけない顔立ちの少女のAIを見て青柳さんは彼女の名を知っているだろうかと思う。

そういえばAIの話をした時も彼の声に熱を感じた。

それを思うと何故だか嬉しく今すぐにでも話して顔を見たいと思った。

見上げた月はとても柔らかく澄んでいて黒い闇夜に一際映えて、あの人ももしかしたら見ているのかもしれないと思い、そんな想像をしたのは初めてで、自分にも想像できたのだと思うと無性に嬉しかった。

隣では人ではない美少女が静かに使命を果たしていた。













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