7 悪魔との契約
意外と早く書きあがりました。
悪魔と契約することになった。
「で、契約ってどうやるんだ?」
「この契約書にお互いにサインをし血を垂らせば契約成立だ」
赤文字で悪魔契約書と書かれた黒い紙を受け取り内容を確認してみる。
契約書には名前を書く欄しか乗っていなかった。
滅茶苦茶怪しいんだけど……
「おい……名前書く欄以外、乗っていないんだが?」
「し、仕方なかろう。我らの方から契約を持ち出す場合は一方的な契約させるために、このように内容を誤魔化してあるのだ」
「それはつまり、俺に一方的な契約をさせようとしたってことか?」
「ち、違う。お互いに契約書に血を垂らすことで対等の契約になるのだ」
「本当か? ちょっとどもってるぞ?」
「本当だ! 我が名に誓うと言っただろう! それとどもったのはお主が怖いからだ!」
「……まぁ、いいか。一応、先に名前書いてくれ」
契約書をバフォケスに渡す。
「対等の契約だと言っているではないか……」
何やら呟いているが用心するに越したことはない。
「書いたぞ」
バフォケスはそう言うと契約書を渡してきた。
契約書を確認すると名前の欄に字なのか記号なのかよく解らないものが書かれていた。
「おい、ふざけてるのか? 俺は名前を書けと言ったんだ」
「だから書いたではないか! ……お主、もしかして字が読めないのか?」
これがこの世界の字なのか?
言葉は通じるけど字は読めないってことか?
「この字は読めん。 日本語か少しなら英語も読めるんだが……」
「日本語? 英語? お主、地球の住人なのか? 何故、別の世界にいる?」
「何故と言われても成り行きとしか言えん。というか、異世界で日本語を知っている悪魔が居る方が何故なんだが」
「何を言っている? 生物の住む世界は複数あるが地獄という名の世界は一つしか存在していない。我ら悪魔はその地獄から複数の世界へと干渉し、このように人間などと取引しているのだ」
「マジか……地獄が一つしかないなら閻魔様も知ってるのか?」
「閻魔? ああ、死人を裁いてる者か……知っているが我の住処から離れた場所に居るから会ったことはないな」
衝撃的な事実を知ってしまった。
この悪魔何てことない感じで説明してたけど俺が知っていい情報だったのか……
「深く考えないことにしよう……取り敢えず日本語に書き直してくれ」
「ああ、了解した……これで良いか?」
再び契約書を受け取り、名前を確認した。
今度はちゃんと書いてあるな。
「あとは俺の名前か……」
俺の名前バグってんだけど、この場合は河内 宗隆って書けばいいのか?
それともあの名前が今の本名なのか?
そもそも悪魔との契約に本名書いて大丈夫なのか?
でも、本名書かないと契約成立しなさそうだしな……
「カタカナでムネタカって書けば大丈夫かな?」
そう名前を書こうとしたとき、近くの地面に突き刺さった巨大な氷柱に映る自分の姿が目に留まった。
見た目は完全に女の子だ。
この容姿で名前が宗隆は俺的に無しだな。ゲームの時の名前にしよう。
「ウル・ユーダリルと」
この名前でも大丈夫だろう。ウル・ユーダリルはもう一人の俺みたいなものだし、容姿は全然違うけど……
今後、この世界ではウル・ユーダリルと名乗ることにしよう。
そもそも河内 宗隆という人物は死んだのだから、知っていて欲しい人以外には教える必要はないだろう。
「ほら書いたぞ」
「うむ、ウル・ユーダリルと言うのか……では最後に契約書に血を垂らせば契約成立だ」
血を垂らすね~、如何にもって感じだな……
「ん? さっきお互いに血を垂らせば対等な契約になるって言ってたよな?」
「そうだが……それがどうかしたのか?」
「一方的な契約を結ぶときはどうしてるんだ?」
「ああ、それなら相手だけに契約書に血を垂らさせればよいのだ」
「なるほど」
つまり、名前だけでなく血を垂らすことで何らかの形で相手を縛ることができると……
「例えば、あんただけが血を垂らす場合はどうなるんだ?」
「!? そ、それは……」
そう聞くとバフォケスはあからさまに取り乱した。
「ふーん、なるほどなるほど。俺は血を垂らさないからあんただけ垂らしてみてくれよ」
「な、なんだと!?」
「俺は血を見ると気持ち悪くなるんだよ。ましてや自分が流血しているところなんか見たら気絶しちまう」
「嘘をつくな!! この惨状を引き起こしたお主がそんな気が弱いはずなかろう!?」
「いやいや、マジで駄目なんだって」
「どう考えても嘘であろう!?」
「あ~、うるさいな! だったら契約しなくていいよ」
「ま、待て! それは困る!」
「じゃあ、さっさと血垂らして契約しようぜ」
「……お主は我を下僕にするつもりか?」
「別に下僕にしようなんて思ってない。ただ、悪魔との契約なんて初めてだから安全だという保証が欲しいんだよ。あんただって口頭の説明だけで信用されると思ってないだろう?」
「うっ、確かにそうだが……」
「だから、行動で示して欲しいんだよ。悪いようにはしないからさ」
「むぅ……………………………………よかろう、契約しようではないか」
丸め込めちゃったよ、案外ちょろいなこの悪魔。
バフォケスはナイフを取り出し自身の掌を切りつけ契約書に血を垂らした。
すると契約書に付いた血は吸い込まれるように消えていった。
「バフォケスの名の下、ここに契約を結ぶ」
バフォケスがそう宣言するように言うと契約書が光り輝き、瞬く間に燃え尽きてしまった。
「これで契約成立か?」
「ああ、成立だ。手の甲を見てみろ」
手の甲を見てみると紋章らしきものがあった。
「それは我を示す紋章だ。紋章に向かって呼びかければお主の下に召喚される仕組みだ」
「なるほど……じゃあ、これからよろしくな! バフォケス!」
「……我は少し疲れた、用があるときは呼ぶがよい」
そう言うと闇に溶けるように消えていった。
悪魔でも疲れは感じるのか。
「まぁ、やることはやったし、この場所からおさらばするか」
そう思い帰ろうとすると屍となった畜生が目に留まった。
バフォケスに片付けて貰えればよかったな。
「片付けるの面倒くさいな……」
そうだ、本当に何時でも呼べるか試すついでに片付けて貰おう。
「カモーン、バフォケス!」
そう叫ぶと目の前に魔方陣が浮かび上がり、バフォケスが現れた。
「……なんだ?」
「あの畜生の身体あげるから片付けてくれ」
「あんなボロボロの身体などいらん! お主が散らかしたのだからお主自身で片付けよ! 我は疲れているのだ、帰る!!」
「あ、ちょ……」
帰っちゃったよ……
自分で片付けろとか言われても死体の処理なんてしたことないんだけど……
「燃やしとけばいいか……ん?」
燃やそうと畜生に近づくと赤い光を放つ石と破損した白い腕輪を見つけた。
こいつの持ち物か?
石の方は洞窟の途中にあった物だな。
「【鑑定】」
【遠望石】
名前の通り遠くを望み見ることができる石。
また、ある一定の距離にある遠望石と接続でき、接続先の映像を見ることができることから、要所の監視に重宝されている。
監視カメラみたいなものか。
これで監視していたからテュクスが俺を連れて洞窟に戻ってきたことを知ったのかもな。
腕輪にも鑑定を使ってみた。
【―――の腕輪】 破損
詳細不明
壊れせいなのか鑑定を使っても何も分からなかった。
まぁ、畜生が持ってた時点で大した物ではないだろう。
畜生を燃やして早くここから出よう、緊張が切れたせいかさっきから睡魔が襲ってくる。
「【ファイア】」
火を放つと辺りには形容しがたい悪臭が立ち込める。
遠望石は一応持っていこう、腕輪はいらないな。
腕輪を火の中に放り込むとその場を後にした。
途中でもう一つ遠望石を見つけアイテムボックスにしまった。
それから数時間迷ったが何とか洞窟の出口に辿り着いた。
「やっと着いた……眠い」
「あ! 来ましたよテュクスちゃん!」
「やっとですか……何をしていたんですか?」
外に出るとテュクスとテュースさんが待っていた。
「少し迷ったんだよ」
「少し迷って数時間も掛かったと?」
「こらっ! テュクスちゃん、他に言うことがあるでしょ!」
「うっ……その、助けてくれてありがとうございます」
「ああ、お礼とか今はどうでもいいからどこか寝る場所ないか?」
「………………知りません」
何故かそっぽを向かれてしまった。
「あらあら……寝床でしたら私たちの家にありますからゆっくりお休みください!」
「おおー、助かります。因みに家は何処に?」
「湖の近くにあります!」
「また数時間歩くのか……」
早くふかふかのベッドで寝たい。ユーティアたんを抱き枕にして寝たい。
「寝床にはユーティアたんの抱き枕はありますか?」
「はい?」
「母様、頭のおかしい人の話は気にしないで下さい」
誰が頭のおかしい人だ……
眠気がひどいなか湖の方角に向かって歩き出した。
バフォケスさん苦労しそうですね……
主人公のステータス
【ムネタカ・ウル・ユーダリルカワチ】 男性?
《種族》ハイ・ヒューマン
《職業》弓星
《EXスキル》弓星術
《ユニークスキル》使い魔 (バフォケス)召喚(NEW)
《技能スキル》
戦闘スキル――弓王術、武王術、拳王術、剣聖術、狩猟術、狙撃術、隠密術、投擲術
魔術スキル――獄炎魔術、大海魔術、暴風魔術、大地魔術、神聖魔術、冥闇魔術、無形魔術、治癒魔術、身体強化魔術、猛毒魔術、麻痺魔術、錬成魔術、複合魔術、魔力操作、属性付与
耐性スキル――物理耐性、魔術耐性、全属性耐性、全状態異常耐性、即死無効
常態スキル――気配感知、魔力感知、危険感知、鷹の目、暗視、思考加速、超感覚
《ギフト》言語理解、鑑定
《称号》転生者、魚キラー、成獣殺し、狂信者、惨殺者(NEW)、悪魔契約者(NEW)、悪魔の主人(NEW)、女神に不貞を働いた者
次回から主人公の名前はウル・ユーダリルで統一します。たまに河内 宗隆という名前も出てくるかもしれませんが……
誤字脱字がありましたら、教えてください。