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Re Day toーリデイトー  作者: 荒渠千峰
Date.1 まだそれは日常でしかなかったということ
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5 ふたり

「なんであんたにフラれなきゃいけないわけ?」


待ち合わせ場所は目印にもなる駅広場にしていた。けど俺はどこかで見たことのある女子たちに囲まれていた。

集団リンチだ、暗殺部隊だ。

その中央に元カノ織田明羽が立っている。


「それは言いがかりだよエージェ●ト・スミス君」


さあ! どこからでも掛かってこい……。俺の腹には少年の夢憧れ、四百八十ページ相当の雑誌を至る所に仕込んである!

これぞ週刊少年アーマー!


「え」


気づいた時には既に遅し、明羽の片手には刀身のしっかりした文字通りのカタナが握られている。


「そこは普通くだものナイフとかカッターナイフとかだろ!?」


たかが四百八十ページなんぞ真っ二つではなかろうか!?

俺の叫びも虚しく周りの女子たちが俺の動きを封じるため手足をガッシリ拘束してきおった。


「お……おのれぇええ!!!」





チュンチュン。


「…………」


頭をポリポリ掻いてみる。触れただけでも分かるくらいに寝ぐせがすごい。

夢だった。まぁ、そうだよね。


「それにしても死ぬ前の言葉がおのれぇえは無いわな」


ゆっくりと俺はベッドから降りる。

さ、お出かけの準備しよっ。









駅前広場は花壇がありそこには年中何かしらの花が咲いている。品種とか分かんないけど手入れはきちんと施されているので見ていて不快感など覚えるヤツがいるのなら、そんな心が荒んだ人間の気がしれない。

電車でライブ会場までの時間とか、最近はスマホで調べれば何でも分かるのでホント文明の利器というやつは侮れない。

受付は11時からだけど少し早めに待ち合わせを指定した。これが1人であったならもう少し遅く来てよかったかもしれない。なんで少し早めなのかというと、悲しいことに明羽の時間に対するルーズさが主な要因である。

さすがに週刊少年アーマーを仕込むことは断念したが念のために周りを警戒しながら目印になりそうな場所へ移ろうとする。

っ。

少し意外だった。待ち合わせ時間の15分前に来た俺に対して明羽は既に到着していた。

過去に俺より早く集合場所へ来たことが果たしてあっただろうか?

……ないな。

やはり俺を罠に陥れる為に先に来て工作をしているとしか思えない。


「あ」

「あ」


そうこうしているうちに明羽に気付かれた。腹を括るというか、こうなってはもう観念するしかない。


「おはよう」

「おはよ、早いね」

「まぁたまには」


指先でカールがかった髪をいじりながら視線を逸らす明羽。やはり自身も慣れないことをした自覚はあるようだ。


「そっか。じゃ、ちょい早いけど移動しますかね」


先行する俺に何も言わず後ろから付いて来る明羽。なんというか、覇気がないというか随分としおらしい。

服装のひとつでも褒めた方が良かっただろうか。いや、やめておこう。今はあくまで共通の趣味を介した友人に過ぎない。ビバ、ゴライアス。

普通電車で数駅揺られればだいたい受付開始には目的の場所に到着する計算なのでさっそく改札を抜けてホームへ降りる。特急に乗ればもう少し余裕を持てるのだろうが如何せん高校生というのはお財布事情が乏しく、グッズを回収するためにもここいらで経費を削っておきたい。そんな俺の予定に半ば無理矢理入り込んだ明羽は当然俺の予定に文句のひとつも付けない。


「朝ごはん食べた?」


何気なく聞いてみると苦笑いで返された。つまり答えはノーということね。

困った、この駅は発展しているかと訊かれると古き良きとしか返しようがない程、簡素な場所だ。売店やコンビニ、飲食店が駅構内に広がる大都会と違ってあるのはせいぜい自動販売機が数台。

このタイミングで訊いても解決の糸口がない。うっかり失言。


「ふーん」


そんな自販機の前に立ち如何ほどのラインナップなのか眺めながら声を漏らす。腹持ちのよさそうで上手いモンは……。

ボタンを押してカードをパネルにかざすとピロリンと軽快な音を立ててガコンと落ちてくる商品。このピロリンのせいであとの自販機(コイツ)の仕事が雑に感じてしまう。

俺の手に持たれた缶を見て明羽は心底嫌そうなしかめっ面をした。


「なんでナタデココ?」

「いや、腹に溜まるかなーと思って」

「まさかそれアタシに? 罰ゲーム?」


人の親切を罰と捉えるか。


「んじゃ、あとはおしるこくらいしか無さそうだけど」

「論外!」


声高らかに却下された。駅構内に人気がほぼ無くて良かったと胸をなで下ろす。

仕方なく手に余るナタデココのプルタブを開けゴクゴクと勢いよく飲む。


「めちゃめちゃ引っかかるやんけ」


肝心のナタデココを味わえない不親切設計に俺は落胆した。

そんな俺を黙って見ている明羽だったが、とくに何か言いたそうでもないのでスルーしておいた。

まもなく、2番線に普通電車〜行きが到着します。(しつら)えられたアナウンスとともに電車がやってくる。

ちらほら席は埋まっているようだけど、2人が座れるくらいはすぐに見つけられた。


「窓側譲ってやんよ」

「いやアタシ通路側がいい」


俺の提案をことごとく突っぱねるのね。


「だってトイレとか行きたいし」

「トイレ近いとかお年寄りみたいだ」


左肩に思いっきりグーパンされた。暴力反対!

怒ったまま先にトイレのある隣の車両へズンズン歩いていく明羽の後ろを逆撫でしないように二歩半距離をとってからついていく。目星をつけていた席の他にトイレに近い場所で空いている席がないか探すためだ。


「とくに空いてないか」


大人しくさっきのところに戻るか。

明羽が戻ってきて俺の隣に座った。俺は暇つぶしにイヤホンをつけて音楽を聴いていた為、座るまで存在に気付かず1度見やるが。

こちらには目もくれず明羽もまたスマホを操作し始めたので視線を窓の外に向ける。

移り変わる景色にとくに何か感想を抱くわけじゃない。強いて何かに気付くとすれば木々によってはまだ桜が散り終えていないところだろうか。今年は遅咲きという話も聞かなかったが。

そして目的の駅に着いた俺たちは改札を出てから腕時計を確認。うん、余裕はまだまだある。


「コンビニかどっか寄るか」

「う、うん」


どこかぎこちないのは気のせいだろうか。もしやまたトイレという線も考えられる。コンビニで用を足してもらうしかないな!


「手遅れになる前に行こう」

「ん?」


なんの事か分からない様子の明羽だったが、その疑問を口にすることはなく黙って斜め後ろをついてくる。






バタースカッチのパンを頬張りながら時折カフェ・オ・レをちゅーっと飲みながら列に並んでいた。グッズの先行販売だ。明羽は苛立たしげに前の列ばかりを気にする。


「なんでこんな暑いわけ?」

「春先だと思って油断したな、これだけ人が多いならそりゃ暑くもなるんじゃて」


俺は呑気にまたストローに口を伸ばしズズっと中身が無くなるのを確認してから手提げていたレジ袋に放り込みもう1本取り出す。


「トイレに行きたくなっても知らないから」

「安心しろ、俺は尿意をコントロールできる」

「自慢になってな……」


一貫して平静でいる俺に深い溜息を吐いた。少し考えればこんな状況になるのは必然でしょうに。

待ち時間なんて等しいものなんだからその時間を楽しんだもん勝ちだと思うが。


「係りの者に従って、押さないでください」


順番が回ってきそうになったところで混雑が一気に押し寄せるかのように商品に引き込まれていくファン。みんなとお友だちになれそー。


「よしっ」


明羽がここにきて瞳を爛々と輝かせ闘志を燃やしている。


「ズズ」


2本目を飲み終えた俺はレジ袋に空容器を放り込みそれをリュックにしまう。

財布はあとで出せばいい、今は目当てのグッズを回収することが先決だろう。

昔で言うところのバーゲンセールといった惨状がこんなところに語り継がれているのかと言わんばかり。これが若手イケメンアイドルグループだったなら、確実にうっちゃりだっただろう。


「なんかもう満足した気分」


明羽が紙袋を両手に持ち満面の笑みを零している。その気持ちは分からなくもない。メインイベントは始まってさえいないのに充実してしまっている現状。カタチに残るのはグッズだからそう思い込んでしまうのも頷ける。

会場へ向かう途中、フリップにチケットを譲ってくださいと大きく書いてある人が遠目に何人か見える。珍しくはない、けど同情の余地はない。そう切り捨てなければ今日を楽しむ資格など持ってはいけない気がしたから。


「ダフ屋とか今となっては規制対象だもんな」


今となっては、とは言ってももともと浮き彫りにされてなかっただけでモラルには反していたに違いないだろう。情報社会に至る現在ではインターネットでの取引が主流だろうが、個人同士の取引は確約されない為詐欺被害も少なくないらしい。


「でもなんか見てて気持ちはよくないよね」


俺と同じくして遠くに佇む人影を見て明羽は困惑した表情になる。


「街中ですれ違う人と違って今は明らかな線引きがされてるからかもしれない」


持てる人と持たざる人、非常に分かりやすいカテゴライズ。

人は平等にはなれない。出生、性格、能力が個人差である限り、等しくはなれない。優劣は絶対。

好きなアーティストのライブが待ち遠しいからといってこんな時に感傷に浸ってしまうあたり己の器の小ささが再確認される。それも、例として自身を優位に立たせて考えてしまうのだから。如何に自分が愚かしいかを痛烈させられる。

元が根暗だから、どうでもいいことで優位に立とうとしているのか。


「また難しい顔してる」


明羽に声をかけられたことで我に返る。


「そういう顔の時ってさ、良くないこととか考えてる時でしょ。せっかくのゴライアスなんだからあの人たちの分もってくらい楽しもうよ」


チケットを手に入れられなかった人の分まで、というのはお門違いだと思う。けど明羽なりの励ましなのかなと思えば、つっこむ気も失せるというもの。


「そういう気の利かせ方は似合わない。調子狂う」


またも肩をグーパンされた。断固、暴力反対!

ちなみにライブは最高の盛り上がりを見せた。ひたすら叫んで喉が枯れた。






午後4時半。

晩ごはんというにはやや微妙な時間帯で、かといってお腹が空いていないわけでもないので近くの喫茶店に入り小休止することにした。

まぁ、この後の予定とか考えていなかったのでそのまま帰るか少しぶらりするか、そんな話くらいしかしないだろーなと。

明羽はホットケーキとアイスカフェラテ、俺はパフェに黒豆茶という組み合わせでそれぞれ会計を済ませてソファとチェアの向かい合わせで座る。ソファ席は問答無用で明羽に陣取られた。呂布め。


「で」

「で?」


まぁ、そうなるよな。

今日の目的は達されたわけで他に行きたいところ、やりたい事があるわけじゃない。これが戸田かマコっちゃんだったら適当にダベって解散になるところだが流石に男女でそこまでフラットな関係を築けているものでもない。


「買いたい服とかないの?」


だいたい買い物に付き合わされてきたこっちとしては肝心な時に物欲を発さない明羽に物申したいところだけど、今日久々に会ってみてどこか違和感を感じてしまっている。


「今はあんまりお金無いから我慢してる」


なるほど金欠と来たか。物心ついた学生の永遠の課題ですな。


「んー」


ここにきて気まずいったらありゃしない。

ライブ中とか気兼ねなく楽しんでいた数時間前がまるでウソのようだ。

そんな俺の気苦労も知らんぷりでホットケーキを写真に収めどこぞにアップしている明羽へ視線を寄越す。

改めて俺とはまるで住む世界が違う生活を送っていそうだ。オシャレに余念がない、ちょっとサバサバしてるくらいで友達は俺なんかより断然多い。最近の俺はとっとと帰ってゲームしたりダラッとしがちだからこうも生活態度が表面に浮き出るのか、お腹の肉もつまめるようになたよ。


「ん、お手洗い」


不意に立ち上がりトイレへと消え入る明羽。しかしながら頻繁に行くな。ホットケーキひと口も食ってないし、冷めたら美味しくないと思うんだけどな。

仕方なしにスマホを取り出す。こういう時、暇つぶしに困らないから助かる。


「や!」


視線を画面から外し、正面を見るとそこには明羽ではなく、


「え、なんで?」


私服姿の塚本麻衣が屈託のない笑みで座っていた。不覚にも俺はその姿に見蕩(みと)れていた。


「連休中にまさか見掛けるなんて思わなかったよ、この店はよく来るの?」


不意を突かれた。まさかこの状況で知り合いに遭うなんて。

いや、幸か不幸か目の前の塚本麻衣は今年転入してきたから俺と今日行動を共にした織田明羽との関係性まではきっと見抜けないだろう。


「いや、初めて来たけどいい所だよね」


だから余計に取り繕う必要は皆無。平静を装って、そしてあらぬ噂や余計な波をたてることなくこの場を、この先学校生活を滞りなく過ごせることを内心祈りつつ退散願おう。


「誰かと一緒だったよね、女の子と」


背筋が少し寒い。いや、遠目に見ていたならそれは誰もが抱く素朴な疑問だ。その言葉に裏はない。


「そっとしておこうとは思ったんだけど、ちょうど彼女さん席を離れたから声だけは掛けておこうかなって」


塚本の挙動を見ても何か疑っているわけでもない。塚本からしてみれば友達が偶然居たから声を掛けた、で合っているはず。自然体だ、いつも通りでいれば変に勘繰られることもない。けどそのいつも通りがこれまた難儀。


「好きなバンドが被っててね、それで今日ライブだったんだ」


初めは1人で行くつもりだったんだから、間違いではない。誘われたから応じただけ、それ以上でも以下でもない。


「へぇ意外、そういうところ行くんだ」

「むしろこういう機会だからこそって感じかな」


塚本の前では、というか最近は消極的に過ごす事が増えたから俺の根暗な部分ばかりを見てきたせいでライブなんかに行くキャラには見えなかったのだろう。もちろん人混みは好きではない。けれど頻繁にライブに行ける機会と貯金が無いからね、好きこそもののってやつ。


「どちら様?」


後方へ振り返って即エマージェンシー。明羽が目を細めて塚本を見下ろしている。自分が座る席に誰か座っていたらまぁ、いい気はしないけど。


「あー、今年転校してきた塚本」

「初めましてですね、立川くんと同じクラスの塚本麻衣です」


ソファから立ち上がり退きながら手を差し出す塚本。

数秒その手を見つめて視線を塚本の顔に向けるとゆっくりと手を握り、


「1組の織田明羽です。巡瑠とはーーーー、共通の趣味を介した友人です」


一瞬、言葉に迷った明羽だがそう言い放つと短い握手が交わされる。


「今日はお邪魔してごめんなさい、それじゃ私はこれで」


このあと用事でもあったのか、左手に巻かれた腕時計を見てからは笑顔で手を振りながら店を去っていく。

それを見送った後、さっきまで塚本が座っていた席に深々と腰掛ける。


「清廉潔白って感じよね、さぞ男受けするでしょう」

「……俺に言うなよ」


別に当たり障りのない、単に社交辞令のようなものだったのではないのか。


「誤解しないで、別に嫌ってるわけじゃない。苦手なタイプではあるけどね」


確かに。口に出すと怒られそうで言わないが、世界観が違うように見えるのは否めない。

明確な違いがあるとも言い難いけど、例えるなら読モとアイドル。


「初対面でそこまで言うか?」

「アンタはいつも近くにいるから気付いてないだけでしょ」


それとこれとは話が別だと思うけど。


「ちょっと悔しいけど色々納得することもあったから」


どうも話の全容が掴めない。

訝しむ俺を他所に明羽はホットケーキをカットして口に運ぶ。


「ぬるい」

「そらそうだ」


俺は香ばしい黒豆茶をひと口飲む。室内の適温に冷たいものを食べながらの温かい飲み物冥利に尽きますわぁ。




このあと、特に何もすることなく適当な電車に乗って帰りそのまま解散となった。

その夜ちゃんと家に帰れたかどうかsignalを起動して文章を打ち込む。いや、彼氏彼女じゃないからそこまで気を回すのも気持ち悪いか。

打ちかけた文章を消去しスマホを置いてから脱衣場へと向かった。

残りのGWは特筆するようなことは何もなく、沙希と一緒に新作ゲームを買いに朝早くから大型家電量販店前に出来た長蛇の列に混ざり無事購入を終えてはルンルンスキップで帰って即プレイとか、そんなん。

要は充実していたってこと。







そんな楽しい日々はあっという間に過ぎ去り、1週間近い休みからの学校生活にリズムを切り替えなければならない。ノイローゼになりそ。

迎えた登校日。


「おはよー」


1人でトボトボ歩いていく俺の横を通り過ぎ、振り向きざまにブレーキをかけて止まる自転車。


「あー、塚本おはよ」


俺に声を掛けてくる自転車の女子なんて数えるに虚しく、驚きもない。


「低血圧?」

「誰が好き好んで元気に学校行かにゃならんのか」

「今年はうまい具合に土日挟んでたから休み長かったもんね」


スイッチの切り替えができる人間とそうでない人間がいるが俺はモチのロンで後者だ。

赤信号青信号だけじゃなく俺は黄色もきちんとつけていて欲しいタイプの人なの。だから休日と学校がある日の間に準備をする日とか設けてほしい。


「この先雨も多くなるだろ? 余計に学校行きたくねぇよ」

「それ五月病だ五月病!」

「なんで嬉しそうなんだ」


もしかして俺の精気を吸収してるんじゃないだろうな。破廉恥め。

高校生活2度目の五月病。

おそらく去年も同じような心中だったのだろう。モチベーションとしては久しぶりに友人に会える、それくらいしかない。

校門をくぐり抜けて自転車置き場に流れでついていく。自転車に鍵をかけカゴに乗った荷物を取る塚本を待ち2人でトボトボ靴箱へ向かう。

この時、事件は既に起きていた。

靴を履き替えて廊下を歩いていると掲示板のところにやたらと生徒が群がっているのが見える。


「あれなんだろ」

「連休明けだから何か貼ってあるのかもね」


にしてもそこまで騒いで見る必要もあるのか。


「え? なんかすごく見られてる」


塚本が身をよじり俺の背に隠れるように小声で言った。

そして、塚本が言うように掲示板に群がっている奴らはこぞってこっちを見ては戸惑ったり嘲笑したり。どちらにせよいい気分ではない。

他の生徒が少し距離をとるように掲示板と俺たちを交互に見やる。

何事かとさすがに気になって臆していた塚本の手を握り掲示板前まで来た。


「え」

「なんで」


そこには数枚の写真が貼り付けてあった。

4月に席が前後で俺と塚本がよく話をしている時の写真、一緒に登下校をしている写真、角度が様々で明らかな盗撮だという事が分かる。

けど、写真はそれだけじゃない。

高校1年時、俺と織田明羽が付き合っていた頃の写真が幾つか比較対象のように貼り付けてあった。

さらには極めつけと言わんばかりか、それはGWの出来事。俺と明羽がカフェで向かい合っている写真。そして明羽がトイレに行っている間、俺と塚本が楽しそうに会話をしている写真。









俺は絶句した。




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