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第三十五話:食屍姫



*廉視点


……どういうことだ?俺はそう呟かざるをえなかった。


ユーディットは一通り切り離された俺の手の指を丹念に舐めた後、小指を噛みきって咀嚼し始めた。


「……んふ。おいひい」


くちゃくちゃと音をたてながらユーディットは指を噛み砕き、そして飲み下した。


そして次は親指にかぶりつき、一通りしゃぶった後に噛み千切って飲み下した


決して嫌々食べているようには見えない。かといって美味い料理を食っているような表情ではない。


つまり……その、なんだ。こんな状況でなんだが……、そう、エロいんだ。


目は細められてそこには危うい光がともり、頬は上気して赤く染まり、口からは俺の指へと赤く染まった唾液の糸が伸びている。


妖艶というか淫靡というか……。そういった事柄に縁の無い俺でも十二分に色気というものが感じられるほどなのだ。


無論、こんな状況でなければ、だが。


右腕の痛みで正気を取り戻した俺はアービティアリィ・ハッカーで傷口を塞いだ後に即席の腕を作り出す。


無機物と神経をつなぐといった芸当は出来ないが、アービティアリィ・ハッカーの能力には形状の変化も含まれている。自由自在とまではいかなくとも、違和感の無い程度には動かせるだろう。


「(……くそ、なんて時に呆けてたんだ俺は――!!)」


俺にとって裂傷擦過傷打撲切断貫通、どれもおそるるに足らない。脅威に足りうるのは欠損と即死だけだ。


……まあ、他にもあるかもしれないが今は放っておこう。


柱に打ち抜かれた程度で慌て、本来慌てるべき今に呆けてるなんて――どうかしている!!


「返してもらうぞ……ユーディット!!」


俺の腕を食う事にどんな意味があるかは知らないが(ただの趣味だとは考えたくない)、こちらの修復の意味でも放っておけるわけは無い。


脚力の強化を施して一気にユーディットとの距離を詰め、四つの拳を放つ。


これでダメージを与えられるとは思えないが、流石にこの状況で食いつづける事は……無いと思いたい。


それを見たユーディットは俺の腕にかぶりつき、咥えたままそれぞれ素手とアームズで受けとめる。


そしてそのまま足だけ動かして俺の脇腹に向かってミドルキックを放つ。


今のユーディットの身体能力なら勢いや腰の捻りの入らないミドルキックでも十分なダメージはあると思うが……甘いな。


「アービティアリィ・ハッカー!」


俺の腕が、二本で済むと思ったら思い違いだ。アームズでも、素手でも、な。


脇腹から腕を作り出して足を受けとめ、そして胸辺りからも腕をもう一本作り出して俺の腕を奪い返した。


流石にユーディットのアームズを抑えこむのに分割したアービティアリィ・ハッカーでは少々心もとない。


急場であるため、関係無い所から骨や筋肉を持ってきたために眩暈や吐き気がするが、あくまでこれは切り札だ。そうそう乱用する気は無い。


乱用するということは、限界や対策を知られてしまう事だからな。


拒否反応を起こす前に適当に体を戻しそして腕を繋ぎなおすために一旦距離を取る。


こちらが放った拳を掴んで俺を捕まえようとするが、それぞれ形状を変化させて逃れる。


……まあ、そう簡単には行かないとは思ったが……。いくらなんでもこれは無いだろうに。


ゴキィ!!


「が、グッ!?」


なんの前触れも無く、巨大な柱が俺の左肩に突き刺さった。


ノーモーションで撃てるのなら……初めからそうしておいてくれっ!!


いちいち放つときに腕を振っていたのは完璧なフェイクだったのだ。……騙すのは得意だが、騙されるのは苦手なんだな。俺は……


無論、突き刺さった程度で止まる質量ではない。そのまま後ろに押し倒され、地面に縫い付けられる。


俺はすぐにアービティアリィ・ハッカーで逃れようとするが、ユーディットのアームズの腕が両腕を地面に縫い付けたことによって腕が腕で無くなり、その場で消えてしまった。


……絶体絶命って奴か。くそっ!!


ユーディットはアームズでアービティアリィ・ハッカーと素の腕を抑えつけたまま俺に覆い被さる。


そして俺の右腕は奪い返され、ユーディットは俺の右肩にかぶりついた。


「――なにをっ!?」


「……見れば分かるよね。廉君を、食べちゃうんだ」


痛みは無いが、それでも自分の体にかぶりつかれているというのはあまり気分が良くない。


「私のアームズの名前は『グーラークィーン』……食べた人の能力をそのまま身につける能力」


……なに?


「……それは、まさか……!?」


驚き、二の句を繋げられない俺に、口を真っ赤に染めたユーディットが応える。


「そう、この柱の能力も、アームズだけを遠隔操作する能力も、この……狼みたいな外観すらも、もとは別の人の能力なんだ」


するとユーディットのアームズの表面が泥のように流れ落ち、緑色の皮膚をしたゾンビのような醜悪な姿に変わっていく。


グーラーというのは確か女性型のグ―ルで、美女の皮をかぶって男性を誘惑し、食べるというが……。


「でも、ね……」


そこで、ユーディットの声色が変わる。


ユーディットは俯き、しかし零れ落ちてくる無色透明の液体がどのような表情をしているのかを教えてくれる。


「辛かった……!!人を殺す事も、それを一口ずつ食べる事も……!何度も何度も吐き戻した!!でも、そうしなきゃ私は勝てなかったの……!!」


ユーディットは自らの頭を抱き、そしてその時の事を思い出したのか、軽く嗚咽をこぼす。


……これなら、いける!!


ユーディットは食人について忌避している。なら――!!


ガッ!!


「ユッ――!?」


「でも、でもね廉君……?」


説得に入ろうと開いた口がユーディットの手でふさがれる。


そこで、俺はユーディットの表情を見て愕然とする。


………………………………はは。


俺は馬鹿だ。なに日和ったこと考えてるんだって話だよ。


「廉君の体はね……?すっごく美味しいのぉっ!!」


さっき俺の腕を喜びながら食べていたじゃないか。ユーディットは――!!


まさに輝くようなという形容がふさわしい満面の笑みを浮かべ、ユーディットは再び俺の体を貪り始める。


「ぐ、アァッ!!止めろ、止めるんだユーディット!!」


「やーだ。だって……こんなに美味しいの始めてなんだもん!!」


シンの時にすら感じなかった種類の恐怖が俺に襲いかかる。


本当に……、あのユーディットなのか!?


いや、三年以上の月日というのは人を変えるものか……。俺も然り。


俺は必死に暴れるが、ユーディットはびくともしない。


「離してくれ。なんでもするから。助けてくれ!!」


……くそっ!もうなりふりなどかまっていられるか!死んだら全てがおしまいだ。どれほど無様でも、どれほど屈辱でも、生きるということには代えられない!!


やっとこ、チャンスが舞い降りたというのに……!!


ユーディットに会いに来たのは、過去に決着をつけに来たというのもあるが……。本当の目的は協力の要請だった。


シンらの実力が未知数である以上、戦力はあるに越した事は無い。そんな中でユーディットは最高の人材だったのだ。


実力に関しては申し分無く、目的があるとはいえ戦いを嫌っている……いや、それは違うか。


あのときには既に、一人以上の人を食っていたのだからな。


ユーディットの胃袋で人一人を食らい尽くせるとは思えないが、そこはアームズの力が関係しているのだろう。


……そういえば、ユーディットは食人を嫌っていた――俺を除く――筈だが、そこまでして叶えたい願いとはなんなのだろう。


訊いてみる価値はあるかもしれない……!!そしてあわよくばそこからの打破を!


「ユー、ディット……。君の、願いとはなんなん、だ……?」


発声に関する臓器まで食われてしまっているのか、思ったような声は出ない。……本当に、痛みが無くて良かった。


「……廉君は知らなくていいことだよ」


そう言われると困るな。


「冥、土の土産、とはいわんが……。あぐっ!……こ、のまま、で、は成仏、で、きそうに、ないん、でね……!!」


本格的に肺や横隔膜にでも達したのか、呼吸のリズムがおかしくなる。


ゼヒューと変な音をたてて息をすっても満たされる事は無い。……やば、意識が朦朧としていた。


ふと視線を下に向けると、俺のあばらが開かれ変な方向を向き、ユーディットは文字通り顔を埋めていた。


その光景に発狂しかけるが、まだ倒れるわけにはいかないと意識を取り戻す。


畜生!畜生っ!!死んでたまるものか!!!


「――ならば、私が答えようか」


……え?


「……誰?」


最初、幻聴、もしくは走馬灯かと思った。だが、ユーディットも俺の頭のほうを見上げていた。


――その口に俺の腸が引っ掛かっているのを見て、失神しかけたが。


俺も倒れたまま頭を上に向け、その闖入者の姿を見る。


……ほう。やっぱり、か。


ある意味予想の範囲内ではあったが、ある意味予想外であった。


「少々見学していたが……。無様な姿ね。金城廉」


「……ぅ、ぁ、ぃ」


五月蝿いといいたがったが、最早呼吸すら難しくなっている俺の喉からは気の抜けた呻き声しか漏れなかった。


そこにいたのは……そう。


「だが、折角舞台をセッティングしたのにその主賓がいなくなるとあっては私の主が癇癪を起こしかねないのでね。……少々どいてもらう『アエテルヌム・シン』!」


漆黒のアームズを振るう。シンの姿だった。




































「(……手加減していたとでもいうのか?)」


俺にはシンがどのような攻撃を放ったのか見ることすら出来なかった。


今アームズを使うことが出来ない為に知覚機能が劣ったせいなのだろうが、それでも、俺の感覚は戦った時とは次元が違うと確信していた。


ユーディットは咄嗟に体の前でアームズの両腕をクロスさせて受けとめたが、シンの問答無用なパワーはそのガードごと薙ぎ払った。


「要はゲーム。……現代の高校生ならRPGぐらいやったことがあるでしょう?ストーリーが進めば、飽きさせないように敵も強くなる。……ただ、それだけの事」


……ゲームときたか。腹の立つ言いぐさだな。


あれほどの力をもっているのなら、脱走くらい容易いことだとは思っていたがな……。まさか、利害が一致したとはいえ助けに来るとは思わなかった。


シンは俺を無機質な目で見下ろし、しかしやはり正視に堪えうるものではないのか、僅かに目を伏せる。


「……生きているのか」


「(もうすぐ死ぬところだがな)」


最早呼吸すら出来なくなり、意識が闇に落ちていくが、自然と恐怖は無い。……まあ、少なくとも力の面では信頼できる相手ではある、から、な……。


「ならば任せておけ。こちらの目的のためにも、死なせるわけには、いかない」


「ぐ、がぎっ!?」


……と、意識を手放そうとした瞬間、俺の全身に久しい感覚、意識がもう一度飛びかねない激痛が走った。


思わず呻き声を上げるが……。あれ、喋れる?


腹筋に力を入れると容易く俺の体は起きあがる。


体のどこにも傷は無く、アームズも元通り発現できる。


「……何をした?」


「リセット。そしてロード」


睨み上げながらシンにそういうが、シンは適当にそう二言だけ答えた。


その言いぐさから、恐らく数刻前の俺をロードしたのだろうが……。全く、底が知れないな。


「う、ふふ……!あれぇ?廉君が元に戻ってるよ?……もしかして、食べ放題なのかなぁっ!?」


吹き飛ばされたダメージを微塵にも感じさせないユーディットが起きあがり、叫ぶ。


……まあ、それもそうか。俺を食った事によってアービティアリィ・ハッカーの能力を得たのだからな……。


「はぁっ……!はぁっ……!!いっただきまぁーす!!」


最早食料としか見ていない視線に、俺は気圧される。


だが、俺があとずさる前に俺とユーディットの間にシンが割ってはいる。


「邪魔をしないでよ……。じゃないと、君も食べちゃうよぉっ!?」


狂気のこもった叫びにも圧倒される事は無く、ユーディットの放った二対の拳を……なんだと!?


今の俺にとっては受けとめる事すら難しい突きを、アエテルヌム・シンの右手だけで軽くあしらってしまう。


「……単純過ぎるな。やっぱり、いらない」


そして全ての拳を弾いてユーディットの防御を開き、そして残った左手のアッパーを顎に叩きこんだ。


……おいおい、冗談じゃないぞ。


片手間のようにユーディットから二度のダウンを奪ったシンは、ユーディットから目を話して俺のほうをむく。


「さて、このまま倒しても良いんだが……。その前に言っておくことがある」


……何をだ。


「天先ユーディットの、願いだ」


「――ッ!?」


驚いて叫びかけたが、寸でのところで押しとどめる。それが事実である保証は無いのだ。


シンのほうも分かっているのか、特に言及せずに本題へ入る。真偽は本人に訊けってとこだろうな。


「天先ユーディットの願い。……それは、過去へ戻る事」


……有り得る話だな。何かやりなおしたい事があるって所か?


俺も出来るのなら楓との出会いからやりなおしたいとこだ。


始めてあったときの俺が死なないといった発言も、過去に戻るのなら俺が死んだという事実も無くなるのだろう。だが……。


「それを何故俺に言う?」


シンの意図がわからない。それを聞かせて、俺に何をさせたいのだ?


理由の如何によってはどれほど整合性があっても信じないこともありえる。


だが、シンは特に何もいわない。ただ、首を横に振るだけだ。


「……チッ。意味はわからないが、助けてくれた事には礼を言っておく。不本意だがな」


仕方なく立ち上がり、アービティアリィ・ハッカーを発現させていると後からシンの溜息が聞こえた。


普段なら気にもしないのだが、溜息がシンであるという事で妙に癇に障ってしまう。


「……何が言いたいんだ」


振りかえって見たシンの表情には一滴ほどの感情も見取れないのだが、変に呆れられているように感じる。


「なぜ、ユーディットが過去に戻ろうとしたいのか、訊かないのか」


……なんだ、そんな事か。


確かに気にならないといったらそれは嘘だ。何せ、その目的の為の生贄にされかけたのだからな。


……だが、訊いてみたいかといったらそれも嘘だ。


いくら全て無かった事になるとはいっても、そのために何人もの人を惨殺してあまつさえ食らってしまうなど、正気の沙汰ではない。


そのような狂気の源泉となる理由も、まともな理由であるはずも無い。


そんな事をシンに言うと、今度は本当に溜息をつかれた。


「今ごろ私の主は笑いすぎて呼吸困難になっていることだろうね。……過去に戻りたいって言う理由の原因は金城廉、君にあるといったらどうする?」


……何?……ははっ。冗談はそのチート能力だけにしてもらいたい所だな。


「俺とユーディットが接した期間などその後の人生に比べれば一瞬に過ぎないものだ。……加えて、俺とユーディットの別れは酷いものなのだぞ?」


人を殺せるほどの理由が短い期間で培われるとしたら、今ごろ凶悪殺人犯だらけになっている所だろうな。


いくらシンによって理性が削られるとはいえ、その能力は半永久的なものではない。理性を取り戻したときに自責の念で崩れ落ちるのは明白だ。


「……だそうだが。天先ユーディット」


「なに、それ……。酷いよ廉君!!」


シンがそう瓦礫に声をかけた途端、瓦礫が弾けとび、そしてユーディットが飛び出してきた。


そのスピードに対応する事が出来ず、俺はユーディットに容易く押し倒されてしまう。


背中を強かにうったせいで少し息が止まるが、見上げたユーディットの表情を見て更に息が詰まってしまう。


「ずっと……!ずっと後悔してたのに!!あのとき廉君を拒絶してしまった事をっ!元に戻れなかった事を……!!」


……え?


「でも、私は駄目だったから……。もう一度廉に会いに行く勇気も無かったの……!」


……冗談、だろう?


「だから、この力を手に入れたあの時、私は願った!!廉君にまた会えた時、私は叶えようとした!!誤解だって分かったから、廉君が私を嫌ってない事が分かったから!!もう一度やりなおせるって……分かったから!!」


ユーディットはまるで演劇のように声を張り上げ、独白する。


そうか、これがユーディットの願いか。


俺は俺の肩を抑えつける手を取り、握り締める。


「そうか、ユーディット……。それがお前の願いなんだな」


涙を流し、ユーディットは嗚咽をこぼしながら頷く。


「……ははっ!俺も馬鹿だ。そうは思わないか?なにせ――」


ユーディットに笑いかけながら、俺は拳を握り締め――





































「――こんな女に、いつまでも執着していたのだからなっ!!」


――ユーディットの頬を精一杯の力で殴り飛ばした。




































ユーディットは殴られるとは思わなかったのだろう。無防備に吹き飛んでいった。


だが、流石にダメージにはなってはいないようで、すぐに起きあがる。


痣の残る頬を俺から奪ったアービティアリィ・ハッカーで治し、しかし目からは止めど無く流れる涙を拭わぬまま悲鳴のような声で叫ぶ。


「……なんでっ!?どうして!?廉君だってやりなおしたくないの!?」


「耳に障るわめき声を上げるな。……はっ、どれほどめでたい勘違いをしていたんだ?」


そう、まさに勘違いだな。……ユーディットは全く分かっていない。


ユーディットとやりなおしたいってのは、俺だって考えていた事だ。だが……。


「勘違いなんかじゃない!あのとき、私は廉君が大好きだったし、廉君だってそうだったでしょ!?」


……はは。ここまで的外れだと、むしろ笑えてくる。


「ああそうだよ!俺はユーディットが好きだった。ユーディットの側が、当時一番安心できる場所だった!!」


楓のせいで色々疲弊していた俺にとって、ユーディットは唯一の癒しだった。それが恋心に変わるのもあっという間だった。


……だが、違うんだよユーディット。


なら――!と言い縋るユーディットを制し、努めて気を落ち着かせて言う。


「違うんだよ。ユーディット。それは俺じゃないんだ」


首を傾げるユーディットに、俺は更に呆れてしまう。


「考えてもみな。あの時俺とユーディットが別れなかったらどうなっていたら」


彼女ができたという事で楓とは疎遠になり、こんなに喧嘩慣れする事も無かったし……。一人暮しをする事も無かった、か。……いや、今それは関係ないか。


恐らく、本当に、平凡な人生を送っていた事だろう。


どっちが良かったかを優劣をつけることは出来ないが、元々問題はそんな事じゃない。


「多分、別の『僕』になっていただろう。勿論、今の『俺』じゃない」


人の性格なんてものは状況や事件によって容易く変わるものだ。それはこの戦いでよーく思い知らされた。


「ユーディットが思いを寄せているのは僕であって、俺じゃあない」


「違う!廉君は、何があっても廉君だよ!!」


違わない!!と叫びたがったが、寸でのところで抑えこむ。……これも、僕にはできなかった事だ。


「笑わせるな。……なら、逆に訊くが、ユーディットの記憶の中の僕は……こんなにクズな男だったかい?」


……自虐はあまり精神衛生上良くないな。


言葉を失うユーディットに、追い討ちをかけるように続ける。


「ユーディットが言っているのは今の俺に消えろといっているようなものだ。そんな事を俺が許すと思っているのか?」


……多分。あくまで多分だが、今からまた恋人に戻ろうといわれたら俺は揺らいでいたかもしれない。


無論、それは最早過去の話。昔の俺の時に限っての事だ。


「さあ立てユーディット。過去を追うのはもう止めにしろ。……目の前にいる男はもう、お前の思い描く男じゃあない!!」













耕作:はい。今日のゲストはカニバリズム系美少女。天先ユーディットさんです。


ユーディット:はいどうもこんにちわ〜


耕作:なんで逃げるんだよ廉。


廉:本編読めっ!!


ユーディット:大丈夫だよ?ここでは食べないから〜。


廉:まずその爛々と光る目を隠してから言ってくれたまえ。


ユーディット:うん。だから言ってるじゃない。ここでは、って


鳴神:……廉君も大変ねぇ


廉:そう思うなら助けてください。


耕作:なに、安心しろって。ここで何があったって本編には何ら影響無いんだからな。『ピー!!』しても問題はない。……何もな


廉:………………


耕作:OKわかった話し合おう。まずそのモンスターイーターの銃口を下げてくれ


ユーディット:……お腹すいた


耕作:だから一目散に逃げるなって


廉:俺の臆病さを甘く見ないでくれ!!


耕作:それは自慢できる事なのか……?


ユーディット:ねぇ廉くーん?ちょっとかじっていい?


廉:ほーらーねー!?


耕作:はっはっは。そんな照れるなよ


鳴神:……ああもう。あの乱痴気騒ぎは放っておいて次回予告をするわよ。


鳴神:決定的な決別を果たした廉君とユーディット。

……だが、廉君が勝てないという事実は決して揺るがない。しかしそれでも、廉君はシンに助けを求めない――。

次回、『離縁状』……お楽しみに!


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