第二十八話:巨人の腕
*耕作視点
「ぜぇ……はぁ……っ!」
き、きつい……。まさか、人一人抱えて逃げるのがこんなにきついとは思わなかった……。
聞いた話じゃ廉は普通に二人くらいまでなら抱えても速度が落ちないらしいが……。レベルが違うな。
「こ、耕作……!だから、おろせといっているだろう!!」
俺の腕の中から忍さんが顔を真っ赤にしながらそう言うが、下ろしてる暇すら惜しいんですよ。
それに、今まで異性との接点が無かった俺にとってこの状況はかなりありがたいもんなのさ。
忍さんは鋭い視線で睨みつけてくるけど……。ははっ!今の忍さんじゃあ怖くないねっ!!
恥ずかしいっていうのが見てるだけで分かるくらい慌てふためく忍さんを見ると、むしろ愛しさすらこみ上げてくるくらいだ。
胸に感じる体重は心地よく、アームズ越しに伝わる感触は……まあ、その、なんだ……色々ともてあましてしまう。
……だが、この幸せな時間ももう幾ばくも無いだろうな。
あの野郎があの一撃程度でダウンするとは思えないし、撒けたとも思えない。最早、土俵からして違うのだろうから、何をしてくるか分からない。
俺が抱きしめる力を強くすると、忍さんはビクッと一度震えた後に体を小さくして俺にもたれかかる。
「(……手放したくない。こんな俺でも、安心を与えられるのなら……)」
忍さんは知らないだろう。今自分が身を預けているこの腕が、既に血に染まっている事を。
俺はその罪を忘れるつもりは無い。だが、少しだけ、少しだけなら、と考えてしまうのだ。
あの時、忍さんの泣き顔を見たときにこみ上げたあの感情に偽りは無い。
「(……守りたい。こんな俺でも、身を預けてくれるのなら……!)」
罪に血塗られた手で身近な人を守れる事が、これほど痛快なものとは、ね。
さて、自己犠牲万歳!既に俺はあの時廉の手で死んだんだ。俺の命の一片まで、BETしてやろうじゃないか!!
「ラルウァマヌス!!」
忍さんを片手に持ち直し、ラルウァマヌスで自分の背後を薙ぎ払う。
何が来たかはわからないが、それなりに修羅場を潜り抜けてきた俺は殺気のようなものを感じたのだ。
「こ、耕作……!?」
忍さんは再びあの恐怖が蘇ってきたのか、体を振るわせ、涙目&上目使いのコンボで俺を見ながら袖を掴む。
あー……。やべ、可愛い。
普段のあの毅然とした態度がある分、ギャップがすごい威力を発揮するぜ。
俺はそれを見て更に決意を硬くし、あえて忍さんを突き放す。
「こうさ「忍さん。……お願いします。護らせて下さい」
不安な顔になる忍さんに俺の心が痛むが、だからといって忍さんを抱えながら勝てるほど、相手は甘くない。
……ほうら。だって、あの野郎は傷一つ無く、俺の前に立ってるんだからな。
「ふふふ……。その体でこれほど逃げるなんて……。君はどれほど丈夫なんだい?」
男の浮かべる笑みは気持ち悪いほどに淫靡で妖艶で、とても男だとは思えない。
その目の宿る色はまるで狂ったときの廉と同じだった。
「はははぁっ!!君ほど壊しがいのある人間に会ったのは初めてだよ!さあ、僕を楽しませてくれ!!」
突然裏返って調子の外れた笑い声を上げながら、男はこちらに向かってくる。
「本当に、あのときに使ってしまったのが悔やまれる。あれが無ければ、もっと楽しめたというのに……!!」
こいつ……。どこまで狂ってやがる。
常軌を逸した狂態に、背後で忍さんが怯える気配を感じる。……だろうな。
なら俺のやるべき事は、一刻も早くこのR-18野郎をぶちのめす事だ!
恐らく、あれが無ければのあれってのは、俺をここまで血まみれにした攻撃の事だろう。
実際、あれのせいで俺はほっといても気絶してしまうだろうからな。
それでも奴はすぐにトドメを刺しにはこないだろう。そこがアドバンテージになればいいが……。
「……生憎、俺に楽しむ暇なんか無いんだ。」
守るべきものがあるときの感情の強さを俺はアームズの力の充実で感じ取っていた。
……そうか、廉があそこまで強くなったのも、これなんだな。
廉は東子さんの為に戦うからこそ、独り善がりの感情しか持たない奴には負けないのか。
正直、勝てる気がしない。
……だが、俺には廉には無い武器がある。
「俺は廉のように甘くは無いぜ。なんせもう、戻れない所まで来てるんだからなぁっ!!」
既に一人の人間を殺したという経験だ。
当たり前の事だが、廉は殺人に関しては強い拒絶を表す。……まあ、だれだってそうだわな。
だから、致死に至る攻撃は使う事が出来ない。あれほどふざけた攻撃力を持つアームズは無いっていうのにな。
でも俺は違う。そりゃあ殺人鬼って訳じゃあないが、それでもこういう奴なら拒絶反応を起こさずに殺す事は出来る。
だから、奴が死ぬ一瞬まで、俺はアームズに殺意を込める事が出来る。この差は大きい。
……できれば、忍さんの前ではやりたくは無いが……。
「――それは楽しみだね。なら見せてくれよ。境界を越えた力ってのを」
――ちっ!?目は離してないってのに!!
いつのまにか目の前まで来ていた男の攻撃を無防備に受け、消しきれなかった痛覚に痛みが走る。
出来れば全部消してほしかったんだが、廉曰く痛覚を全て消してしまうと日常生活に支障をきたしてしまうから無理なんだってさ。
……まあ、だわな。実際、戦いのときだけ痛覚を消して戦うのも、慣れないと難しいらしい。
しかし、俺はアラートを鳴らしつづける防衛本能を気合で眠らせ、揺るがずにラルウァマヌスを振るう。
「そんな大したもんじゃないさ!期待されても困るねっ!!」
無論それがあたる事は無い。さっきので懲りたのか、オートカウンターの能力を使ってくることは無く、バックステップで難なく避けられる。
……甘いぜ。廉にならその選択は効いただろうけどな!
「『ラルウァマヌス』!!」
振るった腕を強引に止め、バックステップしている男に向かって無理矢理に突き出す。
片手しかない俺のアームズ。だけど、その一本の力と速さと大きさなら、誰にも負けるつもりは無い!!
無理な軌道の変更にそれを操った腕に負担がかかるが、今の俺ならショック死級の痛みですら蚊の一刺しに過ぎない。
ガッ!
パァン!
ラルウァマヌスが男の体に触れた瞬間、また全身を衝撃が襲う。
だが、俺はそれでも一歩も退かず、もう一歩を踏み出す。
「ぶち抜け、貫け、死んでしまえ――っ!!」
――ズッガァンッ!!
不安定な姿勢ではあったが、渾身の力を込めた一撃は奴に届いたはずだ。
まるでボールのように男は吹き飛び、近くのビルを薙ぎ払ってようやく止まった。
……問題は、効いてるかどうかなんだよな……。
ま、どっちにしろ追い討ちをする事に変わりは無いけどな。
近くの電信柱を力任せに折り、一気に振り下ろす。
ついでにビルを瓦礫にしてそこからでかめの瓦礫をポンポンと投げ込む。あ、ちなみに実際の効果音はそんなもんじゃないから。
これでもやり過ぎと思えないんだから……。なんだかなぁ。
せめて生き埋めぐらいになってくれれば後で廉に確実なトドメを刺してもらうんだがな。
「……そろそろか」
俺は瓦礫を投げる手を止め、忍さんに振りかえる。
すると忍さんは俺を見て僅かに体を振るわせる。
……ま、しゃあないわな。こんな所業見せ付けられてビビるなって方が無理だ。
さっきは向こうのほうがよっぽどぶっ壊れていたから目立たなかったけど、今は……だからな。
「耕作、あの男はどうなったのだ……?」
「……あの程度でくたばってくれるんなら、俺も幾許か心が楽なんですけどね」
全くだ。稼げて十数分ってとこか。それも、次はもう同じ手は食らわないだろう。
だが、逃げないわけにも行かない。廉たちと合流するのがまず第一の目標だが……。
「ひゃうっ!?」
俺は一度思考を中断して再び忍さんを抱き上げる。今は考える時間も惜しい。
……しかし忍さん。その歳でひゃうっ!?ですか……。なんというか……たまらない。
俺が逃げ出してしばらくたってから後方で、大きな破砕音が轟いた。
うへぇ。思ったより早いな。そろそろ頭に来る頃だろうし……。間に合うか?
「こ、耕作……」
そんな俺の緊張を察したのか、不安そうな瞳で忍さんが見上げてくる。……貴方本当に俺より年上なんですか?
庇護欲がバリバリ刺激されちまう……。
そんな顔をされちまったらする事は一つしかない。
忍さんの後頭部に手を回し、抱き寄せる。
「だーいじょうぶですって。心配しなくても大丈夫ですよ」
……娘がいたらこんな感じなのかな。いやいやいや、結婚どころか女性との接点すら皆無だった俺が何を言う。
忍さんももううろたえる事は無く「……うん。わかった」と小さく呟いて俺の背中に手を回した。
えー……。マジで幼時退行してません?この人。
まあ、あんだけの事をされちゃあ、少しくらい精神に影響も出るだろうが……。劇的にも程があるぞ。
……あー、もうそろそろ空気を読まない奴が出てくるな。
「――いい加減に、素直に壊されてくれないかい?」
「耕作ッ!?」
抱き上げられていたために俺の後を見ていた忍さんが鋭い声を発してすぐ、俺の側頭部に衝撃が走った。
ぐぅ――っ!?いってぇっ……!!
状況が把握できないまま強い破砕音と共にもう一度俺の体を衝撃が襲った。
ガラガラ……と瓦礫が崩れていく音を聞きながら、俺は腕の中の忍さんに声をかける。
「それは……こちらの台詞だ馬鹿者っ!!」
どうやら俺の体は仰向けになってるみたいで、体の上から忍さんの重みと体温、声が感じ取れる。
……はは、みたい、か。それはそうだ。確信が無いんだからな。
脳をやられたのか、視界がぼやけて何も見えず、平衡感覚もおかしくなっている。
時間と共に僅かに、ほんの僅かに戻っては行くが、その時間を奴が逃すはずは無いだろう。
「どうだい?三半規管に直接打撃を食らった気分は」
「ひぐっ……!?」
もはや忍さんにとって奴はトラウマになっているのか、奴が声を発しただけで俺の体に伝わるほどに震え出した。
「安心していいよ。俺はもう既に壊した奴には興味は無い。……ま、本当は俺の姿を見るだけで吐き気を催すくらいが最高なんだけど」
「こ、の……ドSやろ、うが……」
ふらふらする頭を持ち直し、ようやく悪態を吐ける程度にはなったが、まだ足りない。
いい笑顔で最高の誉め言葉をありがとうとかほざく奴に苛立ちは募るが、今開戦のゴングを鳴らすわけには行かない。
時間稼ぎだ。……できるかどうかは分からないが、やるしかない……!!
「……忍さんには、手を出さないのか?」
「ああ、それは心配しなくてもいいよ。こちらにも、美学ってものがあるからね」
……助かった。これを聞けただけで俺の目的は半分は達せられたといってもいい。
だが、目の前で知り合いが無残な殺され方をされたなんてことになったら、トラウマどころじゃ済まないだろう。
まだ、終わっていない。
ようやく今自分がどういう態勢になっているのかを把握できるほどに回復し、でもまだ戦えるほどじゃあない。
「そういう事です忍さん。逃げてください」
「なっ――!?」
……守ると言った手前、こんな事は言いたくなかったが……。ここで忍さんがどういう行動を取っても俺には有利に働く。
俺の言葉に素直に従って逃げる。そうすればこれ以上のトラウマを植えつけられずに済むだろう。
俺の言葉に従わずに逃げない。ごねてくれればそれだけ時間稼ぎになる。まあ、限度はあるだろうが。
最っ高のハッピーエンドは、ここで廉たちが駆けつけてくれることだが……。高望みはしないほうがいいな。
そういう事を考えていると、失敗したときに出足が鈍ってしまう。
……さて、忍さんはどういう反応を――!?
「……うぇっく、ひっく。そんなこと、いわないでよぉ……!!」
……え、あ。うえぇ!?な、なに、ここまで、あれぇ!?
忍さんは泣いていた。それもガチで。
子供のように両手で目を擦り、しゃくりあげながら泣いていた。
俺は、殴られるのも覚悟してたんだが……。この反応は予想外だ。
奴も流石にここまでへたれてるのは予想外だったらしく、唖然とした顔をしている。
「いやだ、いやだよぉ……!離れたくない!離れたくない!!一緒にいてよ、御願いだから!!」
まるでだだっこのように俺にしがみつき、俺の服を涙で濡らしていく。
うぐ……。心が、キリキリ痛むぜ……!!
これがただの子供だったら微笑ましい光景なんだが……。成人女性にここまでされると……不謹慎だが、男性特有で共通のある生理反応が……!!
主に、胸が、胸が……!!
「うーん。流石の俺でもここに割って入るのは勇気がいるなぁ……」
まあ、うん、その、色々あったが、とりあえず目的は達せられた。
俺は小声で忍さんに謝り、後ろ手に瓦礫を漁る。
完全とまでは行かないが、もうだいぶ回復した。
……おーけー。あった。
贖罪の意味も込め、忍さんを強く抱き寄せ、俺はラルウァマヌスを男に向かって突き出す。
「なにっ……!?」
奴にとってはもう既に恐れるに値しないもの、しかし、男は驚き、身構えた。
問題は俺のアームズであるラルウァマヌスが持っている物、さっき瓦礫の中から引っ張り出したもの。
「金城廉の技術の全てを結集したトンデモアイテム。廉曰く『中学生の作った最強の武器』」
全長は2メートルを軽く凌駕し、総重量も1トンに達するそれは、黒く鈍く光を反射していた。
アームズを使っても、持ち上げられるのはそういないだろう。
だが、俺にはなんの問題も無い。
「毎分千発越えの発射速度に採算度外視の50mm越えの大口径。名づけられた名前は、『モンスターイーター』」
反動だけで軽く人の骨を折れるであろう重機関銃を、俺は片手で、ラルウァマヌスで持ち上げていた。
勿論、三脚なんてものはいらない。
形やバランスなんて考えられていない。トリガーの前には巨大な弾倉が備え付けられている。
「装弾数三千発。二分以上、耐えてみさらせぇっ!!」
ドガガガガガガガ―――――――――――――――――――ッ!!!
俺がトリガーを引いた瞬間、爆音があたりを支配し、目の前は真っ白に染まる。
反動はラルウァマヌスで無理矢理に抑えこみ、辺りを一掃する。
すぐに硝煙の匂いが辺りに充満していく。
ここは、廉がその能力を使って作り上げた無茶苦茶な武器を保存している倉庫だった。
他にも五メートルを越える刀なんかもあったりする。
その中で俺は一番無茶苦茶な武器を引っ張り出し、本来人に向けるべきではないそれを奴に向けて放ったんだ。
……まあ、ただの人だったら跡形すら残らないだろうな。
廉も、なんでこんなもの作ったんだろうと苦笑いを浮かべていたからな。
「廉に代わって言わせてもらうぜ……!」
この倉庫を立ち上げるとき、廉は言っていた。
いつかそれを黒幕に向けて言いたいと。
今ここに廉は居ない。でも、それを言うときに使うべき最高の切り札を俺が使ってしまった。
だから、ちょっと心苦しいがここは言わねばならない。
「……この俺が、いつまでも貴様らの力に頼ってると思うなぁ――っ!!」
「……まるでギャグ漫画みたいな吹き飛びっぷりねー……」
「れ、廉!?」
端から見ていても分からなかった。まるで瞬間移動したかのように廉は吹き飛んでいったのだ。
慌てふためく東子に楓は軽く笑いかけ、心配するなと言う。
「廉はあの程度じゃ死なない、……と思うわ。……多分、だけど」
「安心できないよ!!」
最初は自信満々に言い放ったものの、段々と不安定になり、終いには首を傾げるまでになった。
だがどちらにせよ、今から廉の所に行くわけにもいかないだろう。楓は勿論、東子も一人になるのはあまりにも危険である。
それを分かっている楓と東子は動く事も出来ず、女からの攻撃に身構えていた。
しかし、女は特に行動を起こす事は無く、アームズをすぐに仕舞ってしまった。
そこにどんな意図が込められていたのかは彼女の無表情からは察する事は出来ない。しかし彼女が楓達を、少なくともアームズ保持者一人だけで負けることは無いという意図だけは察する事が出来た。
侮辱とも取れるその行動に、楓は眉間にしわを寄せる。
「へぇ……。あたし相手ならアームズなんて無くても充分だっての?大した自信ね」
棘のある言葉を女に向けるが、女は俯いたまま答えない。
それを見た楓は一度溜息をつき、アームズを女に向ける。
「まあいいわ。別にあたしは戦うことにプライドなんか持っちゃいない。ただ、あたしの世界を守れればそれでいい!!」
楓は一気に女との距離を詰め、一歩右足で踏み込むと同時にアームズを顔面に向けて放つ。
だがそれは寸でで空をきり、女の姿も掻き消える。
しかし楓は慌てる事は無く、踏み込んだ右足を軸に一回転して腕を振るう。
するとその軌道上に虹色に揺らめく壁が現れ、目に見えぬ速度で後に回りこんでいた女の拳を弾く。
女は特に面食らうことなく拳を引き、もう一度楓に向かって拳を放つ。
「あまいわっ!!」
しかし、それも楓の壁によって弾かれる。
二度も攻撃を失敗する頃には楓も態勢を戻し、反撃を放つ。
先程のような障壁による攻撃はそれなりの集中力や感情の発露が必要なようで、楓はそれを使うことなくアームズの拳のみの攻撃を行う。
だがやはりそれが女を捉える事は無く、虚しい素振りを続ける事になる。
女の方も攻撃を放った瞬間に拳や蹴りを放つものの、悉く楓の壁に阻まれ、決定打を与える事は出来ない。
どちらも切り札に近いものを持ちながらそれを切る事は無く、ただ不毛でバイオレンスな演舞を続けている。
廉ですら目で追うのが精一杯な戦いに東子が乱入する事は無論出来ず、ただ事の次第を見届ける事しか出来ない。
この硬直した事態を崩す事が出来るのはここには居ない。敵にしろ味方にしろ、外部からの強い力が必要になる。
そのキーはさて、いつ、現れるのだろうか。
忍:……少し旅に出る。探さないでくれ
上山:ちょ、ちょっと。ええ!?課長、どうしたんですか!?
忍:……訊かないでくれ。もう、死にたい……
上山:課長!ほんとにどうしたんですか。まさか、耕作くんが――!?
忍:(耕作の名前を聞いた途端悶えだす)
上山:…………大丈夫そうかな
上山:それにしても何をしたんだろう……。課長がここまでになるなんて……。ま、耕作くんは意図せず恥ずかしい事やる人だからかな。
耕作:……呼んだか?
上山:あ、耕作くん。ねぇねぇ。課長が変なんだけどなんかした?
耕作:(顔を真っ赤にして目を逸らす)
上山:……なるほど。歳相応にアダルティな事をしちゃったわけね
耕作:な、何を言ってるんだよ!そ、そんな……!!
廉:落ち着いてください。別に、恥ずかしがる歳じゃないでしょうに
上山:……?君は誰?
廉:ただの通りすがりですよ
上山:それは流石に無いと思うな……。そんないい訳が通ると思われてたら流石にお姉さんも落ち込んじゃうよ?
廉:なら弟です
上山:……そろそろ泣いていい?耕作くーん。子供に苛められたぁ……。ってなんで本気で逃げるの?
耕作:あ、いや……。別に悪気は無いんだが、ちょっと……。その、なんだ……。
上山:別に今更恥ずかしがる事なんて無いじゃなーい
忍:……今更、か。よし上山、少々話がある。
上山:え、あ!?なんでいつのまに課長復活してるの!?なんでそんなに怖い顔してるのー!?
優姫:……なに?この乱痴気騒ぎは
廉:的確で端的な形容をありがとう
廉:それと、思ったが俺と五十嵐のの会話というものが殆ど無い事に気付いたんだが
優姫:……何を今更。無茶言わないで、この年代の歳の差ってのは大きいのよ?
廉:まあな。……でも、五十嵐はそういうのを気にするようには見えないんだが
優姫:あのねぇ……。あたしをいくつだと思ってるの?ただの中学生よ?
廉:そういうのは自分でいうものか?
優姫:……そうね
耕作:あー……。君達、出来れば瑞樹ちゃんを助けるのを手伝って欲しいんだが……。
優姫:自分の女の手綱くらい自分で掴みなさい
廉:……それは、ただの中学生の台詞じゃないと思うが。