第二十四話:罅割れ行く日々
「………………………」
廉は呆然と立ち尽くしていた。
目の前の光景が信じられなかった。いや、信じたくなかった。
「嘘、だろ……」
フラフラと頼りない足取りで廉は一歩ずつ前に進む。
どんな状況でも諦めないと誓った廉でさえ、目の前の光景は戦意を失わざるをえなかった。
「鳴神先輩……?」
全く不純物の無い清廉とした氷に包まれた鳴神翼。
「氷雨……」
体の至る所を失い、生きているかどうかさえも分からない氷雨。
疑問は尽きなかった。なぜ、氷雨ほどの男がこれほどの惨状になっているのか、なぜ、鳴神が氷雨の能力を食らっているのか。
単純に考えれば氷雨と鳴神が戦い、同士討ちになったのだろうと推測できるが、廉の知る氷雨と鳴神では、そんな事はあり得ないのだ。
第一、氷雨が鳴神に牙をむく事自体があり得ない。
それほどまでに、氷雨が鳴神に向ける感情は真摯だったはずだ。
廉は傍目から見て重傷な氷雨の体に触れる。
氷雨の制御化から離れた氷は夏の熱気に触れて段々溶けていく。ただの氷になったため、アービティアリィ・ハッカーでの介入も出来る。
僅かに残っている顔には悲哀、怒り、驚き、後悔等が綯い交ぜになった表情が浮かんでいる。
そして鳴神は泣き顔にも笑い顔にも見える、若輩者の廉には判別できないような表情を浮かべていた。
先程、氷雨が鳴神に牙をむくなどあり得ないといったが、廉には一つ心当たりがあった。
本来、氷雨のアームズであるグレーシャーブルーは基礎的なパワーやスピードが重視されおり、凍らせる能力はおまけに過ぎなかった。無論、氷雨の性格も影響を与えているだろうが、ともかく、グレーシャーブルーは人一人丸ごと凍らせるほどの能力ではなかったはずである。
しかし、現に氷雨の体と鳴神の体は氷漬けになってしまっている。
他のアームズが介入した可能性も否定は出来ないが、その場合氷漬け程度で放置される理由が無い。能力に自信があるにせよ、どんな能力をもつアームズがいるのか分からないのだから
つまり、廉の心当たりとは
「氷雨……。お前もなのか」
そう、廉がアームズの新しい力を得たように、氷雨も新しい力を得たのだ。
廉の場合アームズ自体の形状変換だったが、氷雨は単純な能力の出力上昇なのだろう。
そして、氷雨は鳴神の能力で焼き尽くされ、新しい力で反撃を試みたものの、能力の出力を誤った……という所だろう。
理性を奪われてしまえば、氷雨ほどの意思が無い限り抗う事は出来ないだろう。自分がいい例だ。
「そうだ、お前は強いはずなのに……!!」
鳴神に傷一つ無い事から、氷雨がどれほど抗ったかは想像できる。
「なんで……!!どうして……!!」
しかし、過程がどうであろうと、結果が伴わなければそれはただの徒労である。
氷雨と廉。二人は同じような状況に一度身を置いた。
相手と自分双方ともに理性を奪われ、その状態で新たな力を手に入れた。
そしてその力で敵味方かまわず薙ぎ払い、全てを破壊してしまった。
しかし、廉はそこから這い上がり、氷雨は出来なかった。
それは廉の能力が状況に適していたとか、廉の意思の方が強かったとか、そういう理由ではない。
ただ、一つ。水晶の部屋の奴らが少し本気を出しただけなのである。
廉の場合も、あそこまでの力を与える必要は無かったし、何よりアービティアリィ・ハッカーで治せる程度の怪我で済ませないことも出来たのだ。
二人の立場が逆であれば、氷雨はグレーシャーブルーの能力で全て炎を消す事が出来ただろうし、東子達は原型をとどめないただの肉塊となっていただろう。
カタン……
打ちひしがれる廉の耳に、自分以外の足音が聞こえた。
「―――誰だッ!」
咄嗟に振りかえるとそこには氷雨と同じように体のあちこちに大火傷を負っている男がフラフラとこちらに歩いてきた。
「助けてくれ……。お願いだ、死にたくない……!!なんでだよ、俺は言われた通りに……。そうだ、悪いようにはしないって……!」
目の焦点はフラフラと揺らぎ、廉の存在も認めていないだろう。
廉は男を観察する。ただ巻き込まれただけの男か、それとも……。
無論、アームズを持っているのは確実だろう。ただ、それが氷雨の一件にどれほど関与しているかだ。
廉は男の胸倉を掴み、地面に叩きつける。
「答えろ。貴様はここで何をした?」
しかし、男はまともに会話できる状態ではないらしく、ただぶつぶつとうわ言を繰り返す。
廉は一度舌打ちをしてアービティアリィ・ハッカーを発現させる。
失われてしまっている部分はどうしようもないが、軽度の部分なら治す事も出来るし、痛覚を切ることも出来る。
なぜか火傷以外にも酷い怪我を負っているが、そこはサービスで治しておく。
しかし、抵抗できないように四肢の傷は治さず、生命維持に必要な部分だけ治して残りは痛覚を切って対処する。
そして気付けにと鳩尾を思いっきり素の手で殴る。
「ブホォ!?」
男は目を覚まし、暫く辺りの状況を把握できなかったが、自分が胸倉を掴まれて押さえ込まれる事に気付くとすぐに暴れだす。
勿論、そんな事が出来る体の状況ではないのだが、かといってこのまま暴れられていたらまともに尋問も出来ない。
「アービティアリィ・ハッカー」
アービティアリィ・ハッカーの手をいくつかに分け、それで男の体を縛り上げる。
優姫のアングイス・リリィほどの力も精度も無いが、半死半生の男を押さえつける事くらいなら出来る。
廉は完全に身動きできなくなった男を見下ろし
「もう一度訊く。貴様はここで何をした?」
廉の問いに男は突然震えだし、しかし訥々と呟く。
「あいつは化け物だ……。でも、言う通りにすれば助けるって言ったから……!なのに……!!」
「理由は訊いていない。貴様は何をしたのだ?」
どうせすぐにアームズを消すのだ。この男がどうなろうと知った事ではない。
「俺は……。そこの女に化けて……。人を、人を……!」
「………………っ!」
最後まで言わなくとも大体予想は出来た。
ここは鳴神家――もはや跡地であるが――の前、そこでどちらかが危害を加えられた事によって乱心する人といえば鳴神のくらいだろう。
「人を殺したんだ……!!」
廉は用は終えたと男を一発殴って気絶させ、氷雨に向き直る。
鳴神はまだ確認はしていないが大丈夫だろう。氷漬けになっただけならば、素材が失われたわけではない。
鳴神の家族の事も気になるが、あの男の能力は化けたといった事から変化系の能力だろう。アービティアリィ・ハッカーで治せないほどではないだろう。
問題は氷雨だろう。炭化した部分ならまだなんとかならなくも無いが、完全に失われた部分はどうしようもない。
所詮人間の体は骨と蛋白質と脂肪、その他諸々の塊だ。適当に牛肉でも持ってくれば素材は事足りる。
だが、素材があったところで設計図が無ければどうしようもない。傷ついた部分や壊れた部分であれば繋がりが途切れた部分を繋いで補填するだけで済むし、後は体が勝手に適応させてくれる。ただ、一から人の体を作れるほど、廉は人体に詳しくない。
所詮、廉は創造者ではなく、改変者なのだ。
自分の体を元にする事も可能だろうが、その場合拒否反応が怖い。
「……まてよ?」
東子と耕作、優姫を同時に直したあの時のような状態になれば、多少の無茶は通るのではないか。
「いや、そんな甘い話が通るはずは無い」
すぐに廉は首を横に振って否定する。
もはや、奴らはトドメを刺しに来ているのだ。ここで塩が送られてくるはずも無い。
あの時のトランスは廉自身の力なのだろうが、必ず邪魔が入ってくるだろう。
「……くそっ!」
いくら頭を働かせても、名案は浮かばない。自分一人の力では必ず限界という名の壁にぶつかってしまう。
一応、義手や義足のようなものであれば、いくらでも創る事が出来る。だが、氷雨の火傷は廉どころかどの生物学者でも理解し切れない脳にまで及んでしまっているのだ。
「とりあえず……、応急措置だけでもしておくか」
グレーシャーブルーの制御化から離れた氷は周りの熱気に溶かされ、いずれ氷雨の傷も露になってしまうだろう。
それを防ぐために、廉はとりあえず主要な血管を繋ぎ、傷口も塞いでいく。
「……見るに耐えんな」
だが、その姿はまるで奇怪なオブジェそのもので、最早人には見えない。
思わず目を逸らし、吐き気も催してくるが、嫌悪感程度の些事で全てを台無しにするつもりは無い。
使い物にならない臓器は切り捨て、心臓や肺などの必要な部分の素材にする。
アービティアリィ・ハッカーの制御化にある以上、殆どの臓器は意味を持たないが、流石に人間の生理機能全てを廉一人で補うのは骨が折れる。
「ぐっ!?」
脳のキャパシティを越える量の情報が頭に流れ、そのたびに頭に痺れるような痛みが走る。
気付けば息も荒くなる。この状態で何か介入があったら一たまりも無い。
その上、さらに氷雨を救い出すための策を考えなくてはならないのだ。
そして、前述のように奴らはトドメを刺しに来ているのだ。懸念は全て現実のものとなるといっていい。
無論、『この状態で何か介入があったら一たまりも無い』という懸念も、現実のものとなる。
カツン……
廉が背後に聞こえる足音に気付いて後ろを振り返ると、そこには先程気絶させた男が無傷で佇んでいた。
「(なんだと……!?確かに生命維持に必要な部分は治したが、こんなにすぐ動けるはずは無い!!)」
だが、現実として男の体には傷一つ無い。
そしてその目には理性の光は無く、無造作に廉へとアームズを向けてくる。
「(冗談じゃない!こんな状態で戦えるはずが……!!)」
焦る廉をよそに、ゆっくりと男は近づいてくる。
今、氷雨体から手を離せばすぐに氷雨は死んでしまうだろう。そして、アービティアリィ・ハッカーは氷雨にかかりきりで他に能力をまわせる部分は殆ど無い。
自分の体の硬化とまでは行かなくともせめて痛覚ぐらいは切りたい所だが、それをする暇も力も無い。
「畜生……!!」
目をつぶってても避けられる程度のスピードで男はアームズを振り上げる。
しかし、廉はそれをよける事も防ぐ事も出来ず、ただ木偶の棒のように受けとめる。
「が、ぁあっ!!」
勢いは無く、しかしアームズの拳はどんどん廉の胸の中にめり込んでいく。
メリメリと嫌な音を立てて骨がきしんでいき、肺が圧迫されて息も苦しくなる。
下手をしなくとも気絶しかねない痛みの中、それでも廉はアービティアリィ・ハッカーの制御を一片たりとも誤らない。
このまま突き通されてしまえば、は絶命してしまうだろうが、なぜか男は一度アームズを引き、もう一度振りかぶる。
男の意識の中では何度も殴っているつもりなのだろうか。再び致命傷になる前にアームズが引かれる。
足に力が入らなくなり、その場に膝を突く。普段痛覚を切っていたために感じなかった痛みが、濁流のように廉に押し寄せる。
男の攻撃は決して致命傷になる事は無い。それが奴らの狙いなら大した物だと廉は自嘲気味に口の端を上げる。
だが、それでも諦める気は無い。辛くたろうと無様であろうと、廉の辞書の諦めという字はそれが書かれた紙面ごとアービティアリィ・ハッカーで紙と形容が出来ないほどに分解されている。
「こんな痛みがなんだっていうんだ!!この程度で音を上げると思ったら大間違いだぞ。貴様らぁっ!!」
天を仰ぎ、かすれた声で叫ぶ。その言葉が届いたのか、男の殴るペースが上がってくる。
しかし相変わらず致命傷は与えず、痛みだけを廉に与えつづける。
百辺りまでは数え、後でその倍殴ってやろうかと廉は考えていたが、ニ百を越えたあたりから段々感覚が無くなってきた。
視界の端にあった太陽は見えなくなり、今は真上から光をそそいでいた。
言葉を紡ぐ余力すら失われた廉はただの生命維持装置に成り下がる。
幸いは、男がアームズの発生源である腕を狙ってこない事だろう。
もしかしたら、希望を持たせるためだけにわざと狙わないだけかもしれないが。
もう先程のような強い言葉は吐けず、出来るのは濁流のような痛みから逃げ続けることだけだ。
ブツッ
漫然と時を過ごす廉の耳に、そんな無機質な音が聞こえる。
光を失った目ではその発信源はわからない。だが、今の廉にはどんなものでも人としての意識を保つために必要であった。
「う、あ……」
単調な激痛の繰り返しで失われていた感覚が再び蘇る。
視覚聴覚嗅覚味覚、そして触覚が蘇り、再び痛みに声無き叫びをあげる。
折角の痛みからの逃避を台無しにはしたが、収穫はあった。
辺りは依然として変化はしていない。ただ一つ、廉の足元を覗いては。
『――廉!どうしたの!?』
『一体どうしたんだ。返事をしてくれ!』
『まだ生きてんでしょーね!?』
いつのまにか地面に落ちていた携帯電話が開き、そこから人の声が届いていた。
これは本当に奇跡なのか、それとも再び希望を持たせて突き落とすための策略なのかは廉にはわからない。
しかし、心が折られかけている廉には、それはかけがえの無い奇跡に見えた。
「……けて」
平静の廉ならこんな事は言わなかったはずだ。
自分の都合に巻き込ませず、自分一人で解決しようとした。
だが、今の廉はそうは行かなかった。自分の体はもう使い物にならず、このままでは氷雨も道連れにしてしまう
廉は最後の力を振り絞り、叫ぶ。
「助けてください。助けてください!!」
*東子視点
『助けてください。助けてください!!』
突然廉から電話が来て、無言のままだったかと思えばそんな叫びが聞こえた。
私はあまりの驚きに信じられなかった。
だって私の中での廉は冷静で感情を抑えこめる強い人だった。
だからこそ不意に見せる危うさに惹かれ、出来る限りそんな心を包んであげたいと思った。
そんな廉が、弱りきった悲痛な叫びで私達に助けを求めている。
いくら老成してるっていっても、廉はまだ十七歳。子供なんだってことを思い知らされた。
……でも、どうすればいいの?今も電話先から廉の叫び声が聞こえて来るけど、廉のいる場所もわからない。
辺りを見回しても隔離された空間は見当たらない。
「ちょっと廉!?答えなさいよ!!」
優姫ちゃんも廉に呼びかけるけど、聞こえてくるのは押し殺した悲鳴だけ。
廉はこんな悪ふざけはしない。これはどう考えたって大変な事態。
……思い出すのよ。今日、なんで廉は私達と一緒に来なかったのかを。
確か、なにかがあるからっていってたはず。
お盆?……ううんまだそんな時期じゃ無いはず。
病院?……これも違う。廉には全く関係ないわ。
パーティ?……確かにそんな事をいってたような……。
……ん?そう。そうよっ!!
「そう!誕生日パーティ!!」
うん。確かにそう言ってた!
「……なんだって?」
耕作さんが首を傾げて尋ねる。
私は昨日廉が誰かの誕生日パーティがあるからっていう会話をした事を説明した。
まだ時間的には早いけど……。うん、目的が無いよりはいい。
もういてもたってもいられなくなった私はすぐに駆け出そうとするけど、耕作さんに腕を掴まれて止められる。
「なんですか!?早く廉を助けないと……!!」
そう、こんな所で無断に時間を費やす暇はないの!
今にも腕を振り払って走り出しかねない私を落ち着かせるように、耕作さんは私の両肩に手を置く。
「気持ちはわかるけど落ち着くんだ!君は『誰の』誕生日パーティだか分かってるのか?」
……えっ。
確か……そう、廉の先輩で、名前は……。
「……なんだっけ」
ああ……もう!ここまで出てるのにっ!!
なんとか思い出そうとしてるけど、焦る気持ちもあいまってうまく行かない。
今も廉は苦しんでるっていうのに……!!
かみがついていったっていうのは覚えてるのに……。山神、違う。浦上、違う!!
なんで……なんで思い出せないのよ!!
「落ち着きなよ!そんなに焦ってどうにかなるもんでもないっしょ!?」
「五月蝿い!邪魔しないで!!」
ちょっとヒステリックになっているのは自覚してる。でも、こんなときに落ち着けるはずなんて無い!!
「大神……。上倉……なんで、なんでよ!!」
もう泣いてしまいそう。泣いたからってどうなるわけでもないのに……!
今から廉の交友関係を洗ってみる?ううん。そんな暇があったら探したほうが早い!
楓さんとか、氷雨君とかじゃないのは分かってるのに……。
気付いたら涙が頬を伝っていった。折角廉が助けを求めてるのに、なんで私はこんなに弱いの……?
優姫ちゃんも焦った顔をしているし、耕作さんも電話から流れる音を拾ってなにかヒントを掴もうとしている。でも、名案は浮かばない。
「――耕作、何をしているんだっ!!」
……え?
突然の怒声に私が見上げると、そこにはどこかで見た事のある人がいた。
物凄く眉を吊り上げて私を……ううん、私の後ろを睨みつけている。
見た事のある人、忍さんは形のいい眉を吊り上げて耕作さんに詰め寄る。
「会社を休んだと思ったらこんな街中でいたいけな少女を泣かせるなど……。ふざけるな!!(心配した私が馬鹿みたいではないか!!)」
そういえば、私達はアームズを出してなかったんだった。だから、周りには人が一杯いるし、ざわざわと好奇の目を見せていた。
恥ずかしい気持ちがどんどん湧き出してくるけど、今はそんな事気にしていられない。
耕作さんに説教を始めようとする忍さんにつめより、叫ぶ。
「あの、かみがつく苗字を思いつく限り言ってくれませんか!?」
「え。か、かみ……?」
状況が飲みこめない忍さんに速くとせかす。もう恥も外聞もいらない!
幸い忍さんは特に理由を言及しないですぐに答えてくれた。
「かみ……か。上山、神永、神崎、鳴神「それです!!」
そう、鳴神先輩。鳴神翼よ!!
ありがとう忍さん!後で出来る限りお礼するから!!
忍さんは相変わらず状況を飲みこめていないみたいだけど、今は説明する暇も無いし、しても理解できないよね。
優姫ちゃんに目配せをすると、すぐに理解してくれて私と同時にアームズを出す。
空間は隔離されて私達は鳴神さん家に急ごうとする。
……あれ、そういえば……。
「私、鳴神さんの家、知らないじゃない……」
ああもう!なんで私は肝心な事覚えてないの!?
また焦りに支配される思考の中、最高のプレゼントがもたらされる。
「鳴神、といえば……あちらのほうに鳴神流古武術の道場があるが……」
「――!!」
もうっ!渡りに船ってこれのことね!!
私は耕作さんのほうを向いて叫ぶ。
「耕作さん!私達を投げてっ!!」
「はぁっ!?」
説明なんてしてる暇無いの分かってるじゃない!いいから早く!
耕作さんのアームズなら私と優姫ちゃんを投げるくらい簡単だし、距離さえ稼げれば後は優姫ちゃんのアームズで微調整は出来る。
なにより、上空ならもし鳴神さんの家に居なくても分かりやすいし。
戸惑う耕作さんだけど、耕作さんだって一刻も争う状況だってわかってるからすぐに私達二人をを持ち上げて投げ飛ばす。
すごい速度で投げ飛ばされ、一瞬意識を失いそうになるけど、気を強く持って耐える。
油断せずに辺りを見回し、隔離空間が無いかどうかを探す。
「ここまで来て徒労なんて御免よ!」
――見つけたっ!!やっぱり、指された方向に空間があった!
待ってて……!すぐに助けに行くから!!
「だから……。頑張って……!!」
*耕作視点
「……さて、どうしようか」
本来なら俺も今から鳴神家に行くのが一番なんだろうが……。
俺は後ろを振り返る。そこには呆然として立ち尽くす人がいた。
視線は俺の腕、アームズに真っ直ぐに注がれている。
あー……。嫌な予感はしてたんだよ。廉の知り合いにばかりアームズがあるってんでよ。
でもまさか、まさかとは思ってたんだよ……。
「なんだそれは……?耕作ッ!!」
さて……どうしようか。なあ、忍さん。
廉:ネタが尽きた
楓:それも一種のネタじゃない?
廉:その発想は無かったな
廉:出番関係のネタはもう既に食傷気味だし……いっそ一般公募でもしてみるか
楓:……はあ、本編で死にかけなのに良くやるわ
廉:大丈夫。主人公が死ぬことは無いからな
楓:なにいってんの。最近は主人公が第一話で死ぬってのも珍しくないのよ?
廉:……ふむ。確かに俺も死にかけではあったな
楓:ところでこの間の後書きでやった戦隊物、もっかいやらない?
廉:断固として断らせていただこう
楓:じゃあ、もう一度ガンダムファイトを
廉:俺は触り程度しか知らんぞ
楓:じゃあ何がしたいってのよっ!!
廉:何もしたくないって言っているだろうが……
???:ふっ!笑止千万!!
楓:な、なにやつ!
廉:もういい加減にしてくれ……
ユーディット:我は悪の組織『エアリアルデーモン』の美少女総帥ユーディット!!
両輔:そして俺はエアリアルデーモン第一の四天王。全てを溶かす鮫島両輔!って名前違うじゃないか!!
ユーディット:勝手に一人で突っ走って返り討ちに合い、周りから奴は四天王には入れたのが不思議なくらいの奴だと言われるポジションだ
耕作:そして俺はエアリアルデーモン第二の四天王。豪腕の佐藤耕作!苗字忘れたとか言うなっ!!
ユーディット:サドでナルシストでオカマで自分の顔に傷がつくと野太い声でよくも俺様の顔に傷をーっ!と叫ぶポジションだ
耕作:よくも俺様の麗しい顔に傷をーっ!!
忍:こ、耕作が壊れたーっ!?
ユーディット:ノリのいい人は好きよ。
忍:耕作は渡さん!!
氷雨:そして俺はエアリアルデーモン第三の四天王。触れるものを全て凍てつかせる霧霜氷雨!しかしそのクールな外見とは裏腹に
ユーディット:ウザい奴のポジション
氷雨:ちょっ!?
東子:そ、そして最後は私!男むさい四天王の中に1輪の花を添える美しき紅一点……。やっぱ恥ずかしいよぉ。
廉:……録画しておきましょうか
東子:や、やめてーっ!
ユーディット:最初は完全な悪役として登場するものの、主人公(廉)の優しさにほだされ、最終的に裏切るポジション
東子:れ、廉が正義の味方ならすぐ裏切るもん!
ユーディット:おお、これはこれは
東子:な、なによそのニヤニヤとした表情はっ!
ユーディット:さあ金城廉!この我々を倒す事が出来るのかっ!
廉:……もう帰っていいか?
ユーディット:駄目よ。今帰ったら廉の子供の頃に秘密無い事無い事尾ひれせびれアームズもおまけして言いふらすわよ?
楓:ぐぅっ!な、なんてひれるな……
廉:楽しそうだな。後噛むな。
楓:ぐぅっ!な、なんて卑劣な……
廉:言いなおすな
楓;廉、こうなったら二人の力を合わせてあの必殺技をうつのよっ!
廉:ああはいはいとっとと一人でいって死んでくれ
楓:地球破壊爆弾〜
廉:それは最早必殺技ではないぞっ!
楓:イチローのレーザービーム〜
廉:一部にしか分からないネタをするんじゃないっ!
楓:ランランルー
廉:ランラ……はっ!
ユーディット:ぐふっ!な、なんて強さなの……!?
廉:……いい加減この茶番やめにしてくれないか
ユーディット:仕方ないわねぇ。折角の出番なんだからもっと活躍させてくれたっていいじゃない
廉:それはあの一角を見てから言うんだな
鳴神:久しぶりの出番で死ぬなんてー……。ははー
伊集院:廉様がわたくしに跪いて靴にキスをするー。唇にするー。靴にするー。唇にするー。
ユーディット:うっ……
廉:な?それと伊集院。その明らかに俺に不利な花占いは止めろ
伊集院:百合子と呼んでくださいませっ!!
廉:おお怖い怖い
廉:……さて、話が一段落ついたところで
楓:ついてないわよっ!!
廉:次回予告でもするぞ
楓;廉が冷たい……。これが倦怠期って奴なのね……
廉:(無視)
廉:とはいっても自転車操業クラスの投稿だから、まともな次回予告は出来ないんだよ。嗚呼、ストックがあった頃は良かった……