プロローグ:トリックスタート
プロローグ トリックスタート
「……よし、これでオッケーだネ」
全てが水晶で出来た部屋、一人の少年がチェス盤のようなものに向かい合っていた。
の、ようなものというのは、本来のチェス盤はポーン等のコマが乗っているのだが、少年が向き合っているものにはそれが無く、小さな光の球がふよふよと漂っているだけである。
少年が指を振ると、光の球は規則正しく動き、それぞれチェス盤のマス目に入っていた。
「フフン、楽しみ楽しみ」
屈託無く笑う少年は一度立ちあがり、虚空に手を振るとそこからもう一つのチェス盤が現れる。
「こっちはもう動き始めてるし、時間の問題だネ」
そのチェスの盤上では、先程のチェス盤にあった光の球が激しく入り乱れ、ぶつかりそして潰えていく。
「あ、もう消えちゃった。これは結構力入れたのにナー……。やっぱ本体の差ってのは大きいんだネ」
フォン
と、その時、甲高い音を立てて水晶の壁が四角に開いた。
少年は音のなったほうに振りかえると、そこに現れた人影を見て喜色満面の顔になる。
「あっ、□□□□!!来てくれたんだネ!!」
少年はその人の名前を呼んだようなのだが、良くわからない発音だったのか、なんと言ったのかが全く分からない。
「別に呼ばれたから来たわけではありません。諫言のために来たのです」
呼ばれた人物は女性のようだが、声は非常に硬質で、女性らしい情感を全く感じられない。
彼女のそっけない反応に、少年は頬を膨らませる。
「ムー、別に良いじゃないのサー。僕にどうこうする権利は無いから、皆に損は無いんだヨ?」
「得も無いでしょう?」
しかし、彼女の声にも態度にも揺らぎは無い。
「大体、同じ所に集める意味はあるのですか?」
少年は、彼女が完璧に反対の立場にあるというので、会話する気を失い、生返事を返す。
「ふーん、その方が面白いのサー。色々とドロドロでネ」
そのままチェス盤に向き直り、一つの光の球をつつく。
「でもネ、これには期待できそうだヨ。ふふ……」
子供らしい、純真故に残酷な笑みを浮かべた少年を見て、女性は溜息をついて今来た方に振りかえり、去る。
「そう、ですか……。やはり貴方には何を言っても無駄なのでしたね……」
一応ラブコメのつもりで書いたんだけども・・あれ、甘さが一欠けらも無いぞ?的なストーリーです