魔法少女異世界葛藤
「さて、と」
最高すぎるお昼ごはんを終えたところでリリィちゃんが切り出す。
ふぁっ?と間抜けな声をあげてしまう。
スカスカだったお腹はすっかり満腹❤で
でも正直とてつもなく眠い…三大欲求を満たそうと全身が悲鳴を上げている…
「これからのことなんだけどね、」
―――頷こうとして大げさに頭が揺れる
「ちょっと!?」
リリィちゃんの焦った声が地面にうなだれてきた頭の上をかすめる。
ダメだ…意識がふわりと浮上する
遠い記憶の高校時代、つまらない数学の授業で寝てはいけないと思いつつ
意識を手放すこの何とも言えない気持ちの良さ…
暖かな日差しのせいだから…
昼休みに食べすぎたお弁当に血を持っていかれてるせいだから…
モフゥツ…
苔に額が埋まる
「こんなとこで寝たら死ぬわよ!」
―――全くもってその通り…
「ねぇちょっと!るり!
シロサキルリ!
アタシの話を聞けぇっ!
…キャァアッ!?」
リリィちゃんの叫び声で私は慌てて空中10mあたりをぼんやり漂ってた私の意識を掴み取った。
そこにいたのは名状しがたい怪物。
薄赤色の甲殻類のような皮膚をもつ中学生ほどの大きさの体を持ち、、
不気味に蠢く蝙蝠のような膜状の翼、
鉤爪の付いた無数の足を有する。
その瞳は深く闇を含んだ沼のようだった。
その怪物がこちら、具体的には私 を 狙って飛んできている!?
羽音は明らかに私に対する威嚇を示している。
あんな怪物は元の世界にいた記憶はないし、
リリィちゃんの動揺と怯えから良くないものだって事はわかる。
とりあえずリリィちゃんにあの薄赤色の化け物について聞いてみる。
魔法少女、情報収集、大事。
可憐にキラキラ敵を倒すには弱点を知るのが大切なのです。
魔法少女通信講座テキスト8月号20Pに載ってるよ!
「ねぇアンタ本当に知らないの!?
アンタがどこから来たかは知らないけどあいつはミーゴ、
ミラハラ村、、、アタシの村を乗っ取った怪物よ…!」
リリィちゃんが唇を噛み締めながら呟く。
リリィちゃんの設定が重すぎるのとミーゴとか言う怪物の足の動きが気持ち悪すぎるので
私の胃は本来の役割の逆の動きをしかかっていた。
まずい…
何か声をかけるべきだし…何か慰めるべき…
そもそも魔法少女はゲロはかない!
昼食を食べすぎた1時間ほど前の自分を恨む
「アンタには嫌なこと聞かせちゃったわね、さぁ戦いましょ」
いやあのリリィさん?この青い顔見て
私の顔真っ青ですよ?
ふわふわ魔法少女服のピンクで血色良く見えちゃってる?
まだどこの魔法少女グループにも所属していないけどピンクだけはやめておこう。。。
私は引きこもってたおかげで体が弱いのだ!(?)
吐く予定は当分ないと思いたいけどね・・・
しかも今戦いましょうって言わなかった?
無理無理無理無理!!!!!!!
魔法少女の敵対象外でしょあれぇ!
そもそも私戦えないよやめよう逃げよう帰りましょう!!!!
口を開けば何かが出てしまいそうなので涙目で訴える
『(おーいおーい)』
はい!通じません!
お頃の声が聞こえだすのは4クールあったら最終クールの最後の一月だけ!
私とリリィちゃん、知り合って3時間!
でも・・・
やるしかない
自分のことばかりになっていたけどリリィちゃんも足が震えてる
スラッとした筋肉質の足をブルブル震わせながら立つ少女を置いて逃げるなんて
魔法少女的にも私的にも・・・
許せない!