魔法少女異世界闖入
―――ドアを開けると森の中だった。
鬱蒼とした森だった。
僅かな木漏れ日だけが光源のでっぷりとした大木が連なった深い深い森。
森の果てはないかのようにみえる。
見渡す限りの緑!緑!緑!
くらくらしてきた…
ふと足元を見るとふかふかとした苔に覆われた人の踏み入った気配の全くない地面と水色やピンクのやけにファンシーなきのこ。
絶対に食べられない。断言していい。
動物さんとかいっぱいいそうな森だけど虫すら…?
サァアアアと心地よい風が頬に当たり我に返る。
『ここどこ…?!』
たしかに私は世間知らずで周りのことに全く無関心だったかもしれない。
二年間一人暮らしのワンルームでおうちのなかで(ひきこもって)魔法少女通信教育をうけていた。
けれど!
先日やっと無事に杖と衣装がア●ゾンから届いて晴れて魔法少女一日目!な私白咲るりですけれど!
世界がこんなに緑豊かになっていたなんて知らなかった…私のマンションの前って公園だったっけ?
二年前の記憶なんて曖昧だよ…地球温暖化とかもう解決してそう…
今日は出直そう、うん!魔法少女白咲るりちゃん興業は明日から開始しま~す!!!
とりあえず家に帰ろうとさっき出てきたドアまで戻ろうとする。
ない。
ドアがない。
一旦落ち着いてよ~く自分の行動を思い出してみる。
家、出る
→外、森
→周り、見渡す
→足元、見る→
ドア、ない…?
おかしい何から何までおかしい…
私は魔法少女になりたかっただけなのに!
動物さんすらいない森にひとりぼっち…?
魔法少女衣装、まだ一回しか写真撮ってなかったのにな…
森歩いたら絶対ボロッボロになるよ…
いつまでも森にいられないしとりあえず街…
があるかはわからないけど進んでみよう。
根拠はないけど魔法少女だから大丈夫、魔法少女だし!
「Wooooooooooooooooooooooooooo!!!!!!!!」
「キャッ」
しばらく闇雲に進んでみたらどうポジティブに考えても人間の叫び声じゃない雄叫びが聞こえた。
それと同時に…女の子の声…?!
助かっためっちゃ心細かった!じゃない!助けに行かなきゃ!
声のした方へ走る。
走りながらやけにトゲトゲした蛍光色のツタに引っかかったけれど不思議と衣装は破けなかった。
汚れもしていない。
魔法少女パワー?
裾のフリルとか、胸元から腰にかけて伸びるおっきいリボンとかすごい汚れそうなのに…
魔法少女パワーに感謝しながら現場に到着。
そこには襲われている少女と獣人系エネミー…
ではなく3mは優にありそうな獣人系エネミーを縄でふん縛り、金色に輝く螺旋状の剣で殴りかかろうとする女の子の姿が!
思わず困惑した声が漏れ出、
その声が届いたのか美少女の濃い紅蓮のポニーテールが揺れる。
秋の空を閉じ込めたような浅葱色の丸いぱっちりとした瞳と目が合う。
「貴方、何者…?」
『魔法少女ですけど!?』
―――ていうか貴方が何者ですか~!???