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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

猫湊の夢日記シリーズ

とある学校で起きたこと

作者: 蒼藍王国神政省奇発事案記録局一般啓蒙部日本語課

「で?」

蒼天宮の一室。神子の後ろから覆い被さるように抱きついている涼子。

「あれは驚いた。」

[せつめいしてもらえますね。」

我らが素っ頓狂集団の仕事の一つに学校調査というのがある。正式名称は一定範囲内超広域学校拠点型情勢調査。

今回は研究機関を内包する学校を拠点としていた。

「あれはねえ。警察も馬鹿しか居ないのかよ。」


それは、突然起きた。警察から、精神鑑定を依頼された犯罪者が護送されてきてとある研究室に入った。

「こりゃどう見ても精神崩壊起きてるって。」

神子さんそりゃ言わないで。

他の研究員がそう思っていると、一人の研究員が蒼い顔色で犯罪者の頭を凝視している。

「ん?どした?」

神子が問えば、蒼い顔で研究者が、パソコンの画面に犯罪者の頭を除いた映像を映した。

「「……!」」

部屋にいる犯罪者を除く4人が絶句する。そこには目が。そう。脳が写っているはずの場所に脳と同じ大きさの目玉が写っていた。

そして、ぐりぐりと動いているのだ。透過観察装置を動かすが、目玉はそれを追いかけ、じっとこちらを見つめてくる

「…来る。…が来る。」

犯罪者がつぶやいている。見れば、目を見開いて、顔には幾筋も血が垂れている。

「…が来るよ。お兄ちゃんが来るよ。お兄ちゃんが来るよ~!」

いったい何がお兄ちゃんなんだろうか。誰なのか。

その絶叫と表情に他の研究員は逃げ出している。

犯罪者の体から黒いもやのような者が出ている。

「おい、逃げろ。」

犯罪者を凝視して動かない研究者に声をかけつつ部屋を出る神子。

部屋を出ると彼も飛び出してきた。既に校内はパニックだった。

他の研究員が伝えたのだろう。

生徒も研究員も階段を上がっている。後ろからはいやーな気配がする。強烈な焦燥感に襲われた神子も階段を上がり校舎の一番上の階に。律儀にドアをしっかりと閉めて鍵を掛けるのを忘れずに。

階を上がれば大騒ぎの廊下。既に血ぬれで壁にもたれる者も居る。

「何がしたいんだか。」

走るものの邪魔にならないように教室側によけて歩く。

「教室に入って机に伏せれば、あいつに目をつけられないぞ。」

なんのこっちゃとおもいながらも教室を軽く見れば机に突っ伏す生徒達。

二つ覗いたが、二つとも満席だった。

階下では悲鳴が響く。あれが動き出したようだ。

3つ目を覗けば机は一〇席ほど埋まっている程度で、神子は中程に座る。

「済まないが詰めてくれ。」

声をかけられ後ろに座り直す。なにげに廊下の方を見ていると、少なくない生徒が、覗いてはなにやら絶望した感じで隣へ逃げていく。後ろを振り返りながら多くが逃げていく。

「おい、開けたら閉めてけ。」

当たり前だが、ここでは仕方ないことを誰かが言う。

しゃーない。

神子が閉めようと立ち上がるとちょうど覗いた少年と目が合う。まあ、彼も慌てて、隣にかけていくのだが。

扉を閉め、廊下側の後ろから二番目の席に座り廊下を見る。

するともの悲しげな顔をして名残惜しげに廊下を走り去る一人の女生徒が目に映る。それを神子の前に座る男子生徒が追いすがるような仕草をしつつ彼女が奥の教室の方に消えると机に伏せすすり泣いていた。おそらく二人は恋人同士なのだろう。少なくない悲鳴が聞こえる中、思い人の安否を思い、自身の無力さに咽び泣いているようだ。

まあ、少女が去った直後にその反対方向で血しぶきが飛ぶのが見えれば仕方が無い。


10分ほど経ち、教室にいやーな感じの空気が入ってくると共にそれは静かに扉を開けて入ってきた。

わざわざ律儀に扉を開けずに化け物らしくすり抜けてくれば良いのに。

それは何かを探すかのように教室の奥側から、一人ずつ、無理矢理、起こしては顔を覗き優しく戻している。

それが入ってきて十分ほど経って。

「来た。」

それが神子の肩に手をかけた。

「ほう。おおう。」

それは濃い灰色のぼろぼろになったローブをまといフードの中は闇に覆われうかがい知れないが、うっすらと血まみれとなった青白いあの犯罪者の顔が見えたと思った瞬間真っ赤に血走った巨大な眼球がはっきりと見えた。

「キィィイイイエエエエアアアア。」

それがそんな声を上げた次の瞬間、教室内を恐怖を上回る狂気がおそった。

「あっははははひゃひゃひゃひゃひゃははやはyはや。それが、君の。あははははははは。それが。それで。」

神子の狂ったような高い笑い声が、響いたのだ。

それは、部屋を駆けだした。そして律儀扉を開け。これまた丁寧に扉を開けて隣の部屋へ駆け込んだ。隣の部屋から悲鳴が響き渡る。

それを聞きながら神子はまた机に突っ伏す。この子は、こういう空気や強い焦燥感が苦手なのだ。

「涼子連れてくればよかった。」

窓から廊下を見れば至る所が赤く染まっている。

「何がお兄ちゃんだ。あんなテンプレデブキモオタにお兄ちゃんと呼ばれるばけもんもかわいそうだなあ。にしたってでかいめんたまだった。あれダイオウイカの目玉並みだろ。」

苦手な空気を少しでも意識しないようにつぶやく神子。だが、あれはなかなか隣から出てこない。

「くけけけけけけけけけ。いつまで、そうしているのやら、きさんの目的はもう無理何やけとっととどっかいかんかい。」

大声が響く。悲鳴が収まったのは良いが、ついでに神子も寝た。

よく寝られたもんだ。

悲鳴が収まって10分ほどして、部屋の外を見れば既にそれが神子が居る部屋の前に入った二つの部屋からは廊下に生徒があふれている。見える範囲だけでも十数人の人間が廊下にもたれかかりうつむいていた。前の席を見れば件の男子生徒が部屋を飛び出そうとしていた。

気になって追いかければそれが最後に入った部屋に駆け込んだ。あの少女が入った部屋に。

「無事だったか良かった良かった。」

振り返り、喧噪の中を玄関まで行くと、共にこの学校に情勢調査と研究目的できていた高校の同窓生に声をかけられた。

「この後遊ばないか?」

「きさんはこの状況でよく言えるな。それと、遅いぞ奇滅師ども!」

しろいふーどつきの服を着た集団に怒鳴りかけながら外に出る神子。

追いかけてくる青年にけるまねをしつつ、歩く神子の手にはぼろぼろの布が入った袋があった


「それは何だったの?結局。」

「何だったんだろうね。まだ奇滅院で調査中だから。」

あの後それが駆けていった方向の階段の踊り場にあったぼろぼろのローブにくるまれて血まみれのバレーボール大の巨大な眼球が見つかった。

[それに彼が語ったお兄ちゃんが来るというのも気になりますね。]

未だ、それは王国の東。神政省地下で調査が行われているという。

「これで二度目だぞこういう目に遭うの。」

[神子はああいう雰囲気苦手ですものね。]

「肩が攣るからいや。」

それで済ませる神子も神子である。

[襲われ正気を無くした方、ショック死された方のご冥福をお祈りします。]

それがいったい何なのか、何が目的だったのか、何を探していて、何故神子と目が合ったときに駆けだし、隣の部屋をおそったのか分からないことだらけである。

「ほんっと怖かった。」

怖い思いをした際に神子が涼子にねだるのがこの背中を護るように抱きしめるという行為。

「私は神子のあの狂い笑いの方が怖いよ。」


後の調査で目玉から高濃度の悪性霊力が検出された。

だが、事件から千年経つ今でもことの全容は明らかになっていない。

いったい何だったのかは未だ闇に包まれている。もしかするとこれはあなたのそばでも起きることなのかも知れない。

そうそう。件の犯罪者は護送前日まで「右耳の下辺りがうずくように痛い」と言っていたという。虫歯でもないそれが今回の予兆だったのだろうか?

恋列車のホラー版です。要は夢で見たことを掻いてます。

本当に怖かったんだかんなあ。神子視点だからいくらか薄れてたけどさあ

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