第8話
ペドロ達が村に来て8日目、今日も目当ての兎は捕まえられなかった。
俺も毎日のように丸烏の雛のネグロを頭に乗せて、付いていっていた。
二人には大陸の事など、たくさんの事を教えてもらった。
まず大陸の事だが、ペラ・モンターナと呼ばれていて、この国の日向語ではなく、モンターナ語と呼ばれる言語を使用している。
このモンターナ語だが、色々な単語を聞いて分かったのだが、どうやらスペイン語だと思う。
その事に気付いた理由としては、前世の時、俺がやりたかった事に海外旅行があったからだ。
サッカー好きだった為、特にスペインには1度は行ってみたいと思っていたので、ほんの少しだけスペイン語が分かったのでおそらくそうだろう。
結局スペインどころか、1度も日本から出る事もなく事故死してしまったのだが、まさか転生して使う事になるとは思わなかった。
「えっ! 明後日帰っちゃうの?」
二人はこの村に幸運の兎を探しに来たのだが、元々10日の滞在予定だった事を教えてくれた。
この村からに西に一山越えた港町に行くには、直接山を越えて行く事はとても危険な為、南の村に向かってから西の港町に向かうのが一番安全な道のりである。
安全と言っても山を越えるのに比べたら位の話である。
「港町にパーティーメンバーを置いて来てるんでな」
二人は大陸の冒険者ギルドに登録していて、この国の知り合いに会う、残りのメンバーに付き合ってこの国に来たらしい。
そこで幸運の兎がこの村辺りに生息している事を聞き、2週間だけ友人と会う残りのメンバーを置いて探しに来たらしい。
この村から港町まで最低2日かかるので、兎探しは明日と明後日の午前中までやり、帰りは道に迷わないように余裕を持って、明後日の午後には出発予定だと話してくれた。
「もっと色々教えて欲しい事があるのに……」
何の娯楽もないこの村で、最近は大陸の事を知る事が楽しみだった為、本心から残念な気持ちでいっぱいである。
「いや、こっちこそ魔力の操作をもっと教わりたいよ」
「全くだ」
二人が言ったように兎探しをしている間、彼らに大陸の事などを教えてもらうのと引き換えに、俺は魔闘術を教える為に魔力の操作を教えていた。
「二人共もうちょっと練習すれば、すぐ魔闘術を使えると思うよ」
魔闘術を使う為には魔力を体の色々な場所に集めたり、強めたり弱めたりを繰返し何度も行う事によって、戦闘の時でも使えるようにするだけだ。
しかし、理屈では分かっていても、中々使いこなすのは難しいらしく、大陸の冒険者では上位の人間でないと使いこなす人間はいないらしい。
大陸の冒険者ギルドでは、G~AランクそしてAランクの上にS・SS・SSSランクの全部で10段階あり、二人のパーティーは全員がBランクで、もう少しでAランクに上がれるらしい。
最近名前が売れてきたパーティーではあるのだが、AランクからSランクに上がるには、魔闘術を使えるかどうかで変わってくるのだそうだ。
「まぁ兎探しは上手くいっていないけど、魔闘術の使い方が教われたのは運が良かったかもな」
「あぁ、そもそも自分達の脅威にならない為に、パーティー以外の人間に魔闘術を教えようとする人間はいないからな」
「ふーん、そうなんだ」
話ながら探していたが、結局最終日の兎探しも二人は見つけられなかった。