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第318話

【その反応。思った通りのようだね】


 俊輔の驚いた様子を見て、キュウは自分の予想が的中したことを確信する。

 その念話は、なんとなく安心したような声色に聞こえる。


「何で……?」


 たしかに驚いた。

 初対面のキュウに、どうして自分が転生者だと分かったのだろうか。

 俊輔は思わず疑問の声を漏らした。


【内容が内容だ。念話で話そう】


「えっ?」【えぇ……】


 話の内容的に、俊輔にとって聞かれたくない内容かもしれない。

 そう気遣ってくれたのだろう。

 キュウは俊輔に念話での会話を求める。

 俊輔も念話を使おうと思えば使えるため、その申し出を受け入れた。


【何から話そうかな……】


 俊輔が念話で話せることを確認したキュウは、少しの間思考する。

 その思考時間から、俊輔が思っていた以上に、色々と話したいことがあるようだ。


【もしかしたら君も気付いているかもしれないけど、僕のご主人である初代エルフ王も転生者だよ】


【やっぱり……】


 初代エルフ王の残したエルフの歴史書。

 そのレプリカを見た時、俊輔は初代国王が転生者だと考えた。

 それを確認したくて、初代国王の従魔だったキュウと面会したかったのだが、その答えを最初から聞くことができた。

 思った通りの答えを聞けて、俊輔は納得の頷きをした。


【前世は二ホンという国で生まれ育ったそうだよ。18歳の時に海の事故に遭って気が付いたら、無人島に流れ着いた5歳のエルフに生まれ代わっていたそうだよ】


【5歳……】


 前世の記憶を持って生まれ代わることができたということは喜ばしいことではあるが、状況が過酷過ぎる。

 中身が18歳といっても、5歳の子供がどんな魔物が潜んでいるかも分からない無人島で生活を送らなければならないなんて、心も体も休まる暇がなかった事だろう。

 それに比べれば、自分はまだ恵まれた環境で生まれ育ったのかもしれない。


【君は何で気付いたのかな?】


【彼の使っていた武器と料理ですかね……】


【ふ~ん、そうなんだ】


 態度などから、俊輔が初代が自分と同じ転生者だと気付いている様子だった。

 その初代の従魔だった自分以外で、そのことを知っている人間なんていない。

 同じ転生者だからなのかもしれないが、キュウとしてはどこで気付いたのか気になった。

 その質問に対し、俊輔は素直に返答する。

 何の情報もない状況から、5歳の少年が銃を作り出すなんてどう考えてもおかしい。

 それだけでも疑わしかったが、それに加えて料理も和製英語の品。

 それを見て、俊輔はかなりの確信を持っていた。

 キュウとしては、そんな所に主人の秘密が残されているとは思わなかった。


【ご主人の料理美味しいのばかりだったからな……】


 俊輔の言葉を聞いて、キュウは主人である初代国王ケイとのことを思いだしたようだ。

 懐かしそうにしみじみと呟いた。


【俺からも質問良いですか?】


【いいよ】


 もしかしたら、初代と同じ転生者かもしれないと考え、キュウは自分との面会を求めたのかもしれない。

 そうなるともう話は終わりになってしまう。

 しかし、この国において尊ばれる存在に会える機会なんて、そう滅多にあり得ない。

 しかも、キュウは高齢により体調が優れない。

 最悪なことを考えれば、もう二度と面会するチャンスは訪れないかもしれない。

 なので、俊輔は思い切って質問してみることにした。


【何で俺と面会してくれたんですか?】


【そうだね。君がご主人のことを気にしていて、魔王封印の地のダンジョンの全部を攻略したって来て、もしかしたら転生者かもしれないと思って面会したくなったんだ】


 やはり、自分が転生者か確認したくて、キュウは面会してくれたようだ。


【しかし、確認するだけなら、他に方法があったのでは?】


【確かにね……】


 転生者かどうかを確認するなら、遣いを出すという方法もある。

 その方が簡単なのではないだろうか。

 俊輔の問いに、キュウも納得する。


【実は、僕はご主人に頼まれていたことがあるんだ。もしも転生者を見つけたら、伝えて欲しいことがあるって】


【伝えて欲しいこと……?】


 初代国王のケイから自分に伝えて欲しいこと。

 とても気になる言葉だ。

 そのため、俊輔は前のめりになってキュウからの言葉を待った。


【僕のご主人は、ずっと転生した意味を求めていた】


【あぁ、それは自分も……】


 前世で転落死し、何故だかこの世界に転生した。

 俊輔はずっとその理由を求めていた。

 世界旅行を始めたのも、その理由を求めてのことでもあった。

 しかし、ほぼ世界一周した今でも、その答えは分かっていない。

 もしも先駆者である初代国王が、答えを見付け出しているというのなら、教えてもらいたいところだ。


【実は……、ご主人は最後まで答えは分からなかった】


【そうですか……】


【でも、彼なりの答えを出していた。同じ転生者でも同じなのかは分からないんだけど……、ご主人が出した答えを聞くかい?】


【……はい! 聞かせてください!】


 エルフである初代国王が、長い年月をかけてもその答えを見つけ出せなかった。

 それを聞いた時、俊輔は答えを見つけることは無駄なのではないかと落ち込んだ。

 しかし、正解ではなくても、それに近い答えを導き出していたようだ。

 参考になればと、俊輔はその答えを聞きたいと思った。


【好きに生きる。それだけだよ】


【……えっ?】


 あまりにも簡単なな答えに、俊輔は拍子抜けした反応になる。


【もしも神様という存在がいて君をこの世界に送ったということは、その時点で神様の目的は達成されている。つまり、君が思うがままに生きているだけで良いだと思うよ】


【……そう、ですか……】


 転生しただけで、隙に生きるだけで神様の願いを叶えることができる。

 そんな事を考えたことはなかった。

 だからか、俊輔はあまりピンとこない。


【だから、君も好きに生きなよ。僕はそれが伝えたかったんだ】


【ありがとうございます。参考になりました】


 答えという答えとは完全に言い切れないが、何だかそんな気がして来た。

 これまでずっと考えていたことに、何となく光が見えた気がしたため。俊輔はキュウに感謝の言葉を述べた。


【……良かった。ようやくご主人の思いを伝えることができたよ……】


 俊輔の表情が少し和らいだのを見て、キュウは嬉しそうに、そして感慨深げに呟く。

 まるで、これまで耐えていたことを吐き出すかのように。


【気を付けて帰りなよ。って言っても、転生者なら転移魔法で帰るんだろうけど】


【えぇ、……初代も使っていたのですか?】


【うん。2、3代目の国王までは使えたんだけどね。いつの間にか廃れちゃったよ。フェルナンドはなかなか見込みがあったんだけど、僕は使えないから教えられないしね】


 日本に生まれ育った18歳となると、自分と同じように転移魔法を思いついてもおかしくない。

 そのイメージが伝わらないと魔法は発動しないため、廃れていってしまったのだろう。


【それでは……】


【うん。じゃあね】


 話が終わり、俊輔はキュウに頭を下げて退室する。

 その俊輔を、キュウは嬉しそうに見送った。






「ありがとうな」


「何が?」


「久しぶりにキュウ様の嬉しそうなお顔が見れた」


「そうか……」


 キュウのいる社から王城へと戻る道すがら、フェルナンドが俊輔に感謝の言葉をかけてきた。

 その意味が分からず俊輔が首を傾げると、その理由を説明してきた。

 魔王封印の結界内に入る前から、キュウは体調が悪いと言っていた。

 それが続いているということは、もしかしたらと、良くないことが想像できる。

 自分との面会で、少しでも体調や気分が良くなったというのならお安い御用だ。






◆◆◆◆◆


「では、私は日向に戻ります」


「あぁ、またの訪問を期待している。これは君専用の入国証だ」


「宜しいのですか?」


「魔王封印の地のダンジョンを攻略してくれたということは、この世界の恩人でもある。入国するくらい何の問題もない」


 キュウとの面会を終えた翌日。

 俊輔は日向に帰っているという京子の所へ向かうことにした。

 別れの挨拶に王城へと向かうと、国王のロレンシオから国章の描かれたカードのようなものを渡された。

 どうやら、エルフ王国へ入るための証明証のようだ。

 色々と面倒事があって、エルフの国を満喫できなかったため、出来れば再度訪問して、今度はゆっくりと観光したいと思っていた。

 そのため、入国証をもらえるのはありがたい。

 ロレンシオの言葉を受けた俊輔は、遠慮なく入国証を受けとった。


「次来た時は、再戦させてもらうぞ」


「それは面倒だな……」


 別れの言葉の代りに、フェルナンドは再戦の申し込みをして来た。

 俊輔が1年ダンジョン攻略に挑んでいた時、フェルナンドは約束通りナンパをやめて国の仕事や訓練に力を入れていたらしい。

 そのせいか、魔力が1年前より増えているように感じる。

 ただでさえ魔力量で上を言っているエルフのフェルナンドが、更に魔力量を増やしたとなると、前回の様に簡単には勝てないかもしれない。

 そう考えた俊輔は、嫌そうに返答した。


「では、失礼します」


「あぁ」


 ロレンシオに一礼をして挨拶をすると、俊輔は京子のいる日向へと転移していった。



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