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第304話

「ナイスだ!! ネグ!」


「くっ!」


 咄嗟のこととは言えセントロの邪魔をしたネグロを、俊輔は褒める。

 今の状況で俊輔の相手をしているわけにはいかないため、速く逃げなければならないため、ネグロを相手に余計な時間を使っている場合ではない。

 なので、セントロはネグロを無視してファイヤードレイクの体を乗っ取ることを優先した。


「ネグ! そいつをその龍に近付けるな!」


「……? ピッ!!」


「チッ!!」


 なんとなくで攻撃したが、俊輔の反応からいってどうやら正解だったようだ。

 どういう理由なのか分からないが、俊輔の指示を受けたネグロは、その指示通りにセントロに向かって光魔法を連射した。

 弱小の魔物である丸烏だというのに、一発でも食らえばかなりの痛手を負うような魔法を飛ばしてくる。

 そんなネグロの攻撃に、セントロは舌打ちをする。

 本当なら殺してやりたいところだが、体の乗っ取りを狙うセントロはネグロの魔法攻撃を躱しながらファイヤードレイクへと接近した。


「くっ!! 間に合わない!!」


 ネグロの攻撃によって、魔力で足場を作り空中を追走する俊輔とセントロの距離は縮まる。

 しかし、木刀による攻撃や魔法攻撃しようにも、この距離では当たらないだろう。

 だからといって、このままではファイヤードレイクの体を乗っ取られてしまう。

 どうしようもない状況に、俊輔は歯噛みするしかなかった。


「グルアッ!!」


 ネグロの攻撃を躱しながらファイヤードレイクに接近するセントロ。

 エステの体を乗っ取っている時の命令なら受けるが、その状態ではないなら敵でしかない。

 そのため、ファイヤードレイクは自分へと接近してくるセントロに対し、炎を噴いて攻撃をした。


「馬鹿竜が!! 俺に炎なんて効かん!!」


 ファイヤードレイクの炎がセントロに直撃する。

 しかし、セントロはその炎の中を平然と通り抜け、ファイヤードレイクとの距離を詰めた。


「グルアッ!?」


「もらった!!」


 自分の攻撃が通用しないことに驚くファイヤードレイク。

 そんなファイヤードレイクまで、セントロはあと一歩の所まで距離を詰めた。

 この距離なら、もう俊輔は何もできない。

 魔王復活につぎ込んだ時間を無駄にされて腸が煮えくり返るが、エルフやドワーフでない人間の寿命は100年にも満たない。

 放っておけば、俊輔とか言う日向人はそのうち死ぬ。

 それを見越して、またじっくり計画を練ればいいこと。

 これでこの場から退避できると確信したセントロは、せめて逃げられることに悔しがる俊輔の顔で我慢することにした。


“ヒュン!!”


「っっっ!! ウガッ!!」


「えっ!?」


 俊輔とネグロの方にばかり警戒していたセントロに対し、予想外の方向から光魔法が飛んで来た。

 その魔法の直撃により、セントロは弾き飛ばされ、俊輔も何者による攻撃だか分からず驚きの声を上げた。


「間にあったようね?」


「京子っ!!」


 魔法が飛んできた方向を見て、誰によるものかすぐに分かった。

 セントロに魔法を放ったのは京子だった。

 近くに息を切らしたカルメラもいる所を見ると、俊輔に置いて行かれたが、ようやく追いついたようだ。


「ネグちゃんが魔法を放っていたということは、その変なのが敵なんでしょう?」


「察しが速くて助かる。流石京子だ!」


 俊輔のいる方向へと向かって走っている最中、京子は空中のネグロの行動が見えていた。

 ファイヤードレイクと争っていたように見えたが、今度は変な霊体に攻撃を開始した。

 それから推測して攻撃したのだが、正解だったようだ。

 いちいち言わなくても察してくれる京子に、俊輔は心底感謝した。


「こっちは俺が相手する。京子たちはアスルとついでにバカ王子を助けてやってくれ!」


「「了解!!」」


 京子の魔法を受けて吹き飛ばされたことで、セントロはファイヤードレイクから離される。

 それによって、セントロがまたファイヤードレイクに近付こうとしても止めることができる。

 なので、俊輔はこのままセントロの相手を引き受け、京子たちにはアスルとフェルナンドを助けるように頼んだ。

 その頼みを受けた2人は、ゲオルギウスとワイバーンを見て表情を険しくしつつも、力強く返事をした。


「残念だったな? これでお前は逃げられない」


 ファイヤードレイクから離されて、最終手段である逃走の選択がとれなくなった。

 少し前まで逃げられると思っていたにもかかわらず、一気にそれができなくなったセントロに対し、俊輔はわざとからかうように話しかけた。


「くっ!! 弱いくせに数ばかり多い。人間ごときが……」


「その人間に殺されるんだ。ざまあないな!」


 魔物が進化した存在、それが魔族だ。

 その進化は数十、数百年に1体くらいの割合でしか出現しない。

 それを自分がどれだけの長い時間をかけて、魔王復活のために世界中から集めたと思っているのか。

 多くの魔族を葬ってきた俊輔に、セントロは呪詛でも唱えるかのように呟く。

 セントロの狙いをことごとく潰し、逃げることすら許さない。

 この期に及んでまだ人間を下に見ているセントロに対し、俊輔は更におちょくるような発言をする。


「くそがーー!!」


「フンッ!」


 とことん馬鹿にするような俊輔の態度に怒りに耐えきれなくなったセントロは、破れかぶれと言うかのように俊輔へと襲い掛かった。

 しかし、エステの体から追い出された時に魔力を失った状態のセントロの攻撃は、俊輔に当たる訳もなくあっさりと躱される。


「くそはお前だ!!」


 攻撃を躱した俊輔は、光魔法を纏わせた木刀を振りかぶる。

 そして、そのまま一気にセントロへ向けて振り下ろした。


“ズバッ!!”


「がっ……!!」


 俊輔の木刀が袈裟斬りに振り下ろされると、セントロの体が両断される。

 そして、浮遊能力を失ったかのように、2つに分かれた肉体は地面へと落下していった。


「おの…れ!! この…私が……」


「じゃあなっ!!」


「ぐふっ……!!」


 魔王を復活させ、この世を魔族と魔物の世界にするのが目的だった。

 それが1人の日向人のせいで台無しになり、とうとう自分までこのようなことになってしまった。

 砂地に落ちたセントロは、最後に恨みがましく呟いた。

 そんなセントロの側に、俊輔は上空から降り立つ。

 そして、自分を睨みつけるセントロに対し、俊輔は容赦なく止めを刺した。



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