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第300話

「フッ!!」


 魔力を纏ったセントロは、左手の親指に付けた魔法の指輪から片手剣を取り出す。

 そして、その剣を手にすると、すぐさま俊輔へと構えをとった。


「ハッ!!」


「っ!!」


 剣を構えたセントロは地を蹴り、一気に俊輔との距離を詰めて斬りかかる。

 その袈裟斬りを、俊輔は左手に持つ小太刀の木刀で受け止める。


「このっ!!」


「っ!!」


 受け止めた俊輔は、右手の木刀で斬りつけ反撃に出る。

 それを察したセントロは、バックステップをして回避する。

 

「フンッ!!」


「……っと!!」


 バックステップしたセントロは、着地と同時に左手を俊輔へ向け、魔法による石の弾丸を放つ。

 高速で飛来するその石弾を、俊輔は左にステップをして躱す。


「人間のくせになかなか反応が良いな……」


「そりゃどうも」


 セントロの放つ石弾は、たしかに普通の人間では躱すことなんてできないだろう。

 それを躱す俊輔に、セントロは面倒そうな表情と共に呟く。

 その呟きに、俊輔は軽口で返答する。


「それにしても意外だな……」


「……何がだ?」


「これまで遭ってきたの魔族は、大量の魔物を使って町や国に挑んで来た。しかし、お前が出したのは4体の竜種しか出していないからな」


 世界を回るうちに、俊輔は多くの魔族に遭遇してきた。

 魔族の面倒な所は、多くの魔物を使役して攻めてくるところだ。

 魔闘術を使えない人間からしたら、魔物の大群は脅威でしかない。

 俊輔たちのように実力のある者でも、他人を守りながら戦うのは面倒でしかない。

 しかし、セントロは魔物をたった4体しか出していない。

 4体と言っても竜種なのだから脅威ではあるのだが、これまでの経験から考えると、少ないように俊輔は感じた。


「この4体でも充分だ。と言いたいところだが、今出せるのは出し尽くしたんでな。……それより貴様、先程他の魔族と遭遇したといったか?」


「人族大陸を横断する時に、バッタだとか蜘蛛だとか、色々な魔族に遭ってきたな。全員殺してやったけど。そういや、魔物を造る研究所みたいのもあったな。それも潰したけど」


 余裕からか、セントロは平然と手の内を晒す。

 それよりも、彼は俊輔の言葉に引っかかりを覚える。

 まるで他にも魔族と会っているかのような発言だ。

 そのことを問いかけると、俊輔はこともなげに返答する。

 俊輔はこれまで何体もの魔族に遭遇し、倒してきた。

 それと、キメラを製造する研究所も発見し破壊してきた。

 そのことを告げると、セントロは表情を歪めた。


「……では、各地の魔族がことごとく死んでいたのも、研究所がなくなったのも貴様のせいだったのか?」


「あぁ」


「やはり貴様だけは絶対殺す!!」


 魔族の討伐と研究所の破壊という言葉を聞いて、セントロは怒りで震えるのを耐えつつ、俊輔に確認を取る。

 魔族の世界を作り出すために、長い年月をかけて魔王復活のために動いてきた。

 人間の町や国を潰し、そこで生まれた死体をダンジョンに吸収させ、ダンジョンを通じて復活のための力を蓄えている魔王へ栄養を送り込むのが、セントロたち魔族の狙いだった。

 それと同時に、吸収させるための強力な魔物も作り出せないかと、キメラの研究もおこなってきた。

 そのどちらも潰されてしまい、魔王復活が遅れることになった。

 ダンジョンを攻略されたのと同じ位の打撃になったのだが、その全てが俊輔によって阻止されていたのだと分かり、セントロは激昂した。


「くらえ!! ハァー!!」


「わっ!!」


 真相を知ったセントロは、怒りに任せて石弾を連射する。

 まるでマシンガンのように飛んでくる石弾を、俊輔は左右にステップをする事で回避する。

 その俊輔を追いかけるように、セントロは石弾を放ち続けた。


「逃げ回るのは得意なようだな!?」


「フンッ!」


「チッ! ならば……」


 セントロは、飛来する石弾から逃げ続ける俊輔を煽る。

 その言葉を、俊輔は鼻を鳴らして無視をする。

 挑発に乗って接近を試みれば、更に速度を上げた石弾でハチの巣にしてやるところだったが、俊輔が全く反応しないことを察したセントロは、戦い方を切り替えることにした。


「くたばれ!!」


「っ!!」


 石弾では埒が明かないと感じたセントロは、魔力を込めた剣を地面に突き刺す。

 それによって、俊輔の周辺の地面が振動する。


「なっ!?」


 何が起きるのかと警戒していると、俊輔の地面が無数の針に変化して襲い掛かってきた。

 その針攻撃を躱すため、俊輔は思わず跳び上がった。


「もらった!!」


 セントロの狙いは俊輔をジャンプさせる事。

 跳び上がった状態なら、翼のない人間は移動することなんてできない。

 つまり、その状態に持ち込みさえすれば、人間なんてただの的でしかなくなる。

 俊輔を跳び上がらせることに成功したセントロは、勝利を確信して石弾を発射した。


「フッ!」


「なっ!?」


 俊輔は鼻で笑う。

 セントロは、この程度の攻撃が通用する相手だと思っているのだろうか。

 そうだとしたら考えが甘い。

 空中で移動する方法くらい、いくつも用意している。

 その中の1つ。

 魔力の足場を造りだし、俊輔は空中で方向転換した。


「ハッ!!」


 ただ石弾を避けるだけではない。

 俊輔は、この機を利用してセントロとの距離を詰める。

 そして、その勢いのままに右手の木刀で突きを繰り出した。


「くっ!! ハハッ! すばしっこいのが自慢のようだが、攻撃が軽いな」


 迫り来る俊輔の突きを、セントロは慌てて剣で防ぐ。

 しかし、その勢いの割に威力がないことを感じたセントロは、俊輔が距離を詰めることに必死になるあまり、攻撃に力が入っていないのだと笑みを浮かべた。


「そうか……よ!」


「なっ!?」


 嘲笑するセントロの言葉に対し、俊輔は左手の木刀で斬りかかる。

 そして、その時になって俊輔の異変に気が付いた。

 俊輔が左手に持っているのは太刀(・・)の長さの木刀で、自分が防いだ木刀は小太刀の長さだということにだ。


「ぐあっ!」


 小太刀の長さならばギリギリ躱すことができただろうが、武器の長さが違う。

 必死になって俊輔の攻撃を躱そうとするが躱しきれず、セントロは左手を斬り飛ばされた。


「ぐうぅ……」


「へっ! ざまあみろ!」


 片腕を斬り飛ばされたセントロは、痛みで顔を歪めつつ俊輔から距離を取る。

 それに対し、俊輔はしてやったりと言うかのようにセントロにドヤ顔を決めた。



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