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第298話

「貴様何者だ!? 何故日向人がここにいる!? しかも何だその魔物は!! 何で丸烏ごときが竜種にダメージを与えているんだ!?」


 突然現れた俊輔を見て、セントロは問いかける。

 呼び出した魔物たちが傷つけられ、慌てている様子だ。

 そうなることも仕方がない。

 伝説とも言われるほどの竜種2頭が、不意撃ちとは言え弱小として知られる丸烏によって傷つけられたのだから。

 その丸烏の主人らしき人間。

 日向人が、何故エルフの国に存在していることも不思議だ。

 エルフの国は魔人・獣人・ドワーフの種族とは関係が良好だが、人族とは関係が良くなかったはずだ。

 初代の王妃のこともあり特別なのかもしれないが、日向人がどうやってこの地へと来たのだろうか。


「……てめえ、とことん舐めたこと言ってくれるな! てめえとは少し前に会ってっているだろうが!」


「…………何のことだ?」


 セントロの言葉を聞いて、俊輔はカチンときた。

 前回は数年ぶりに顔を合わせたということで覚えていないということも分かるが、その時にちゃんと顔を合わせて話している。

 それなのに忘れているということは、自分のことを舐めているとしか言いようがないからだ。

 しかし、言われた方のセントロは、首を傾げるしかない。

 この日向人のことなど知らないからだ。


「この野郎……」


 セントロが首を傾げたことで、俊輔は完全に自分のことをおちょくっていると判断した。

 そのふざけた態度に、俊輔はこめかみに血管を浮き上がらせた。


「おい! 俊輔とやら!」


「なんだよナンパ王子!」


 やり取りを見ていると、俊輔とセントロの会話が噛み合っていないように思える。

 そのため、それを見ていたフェルナンドが俊輔へと話しかけた。

 フェルナンドに対しては、王族とか関係なく対応している俊輔は、会話の邪魔をされたと思ったのか苛立ち気味に返答する。


「その呼び方はやめろ! いや、そんな事より、そいつはお前の言っていたエステとかいう奴ではなく、セントロとか言うようだぞ」


「……何っ!?」


 フェルナンドの指摘を受けて、俊輔は驚きの声を上げる。

 話が噛み合っていなかった理由は、フェルナンドが指摘したように、俊輔が目の前にいる魔族を宿敵のエステだと思って話しかけていたからだ。

 それを聞いて驚いたのは、目の前にいる魔族の見た目が完全にエステと同じだからだ。

 それなのにエステではなく、セントロとか言う名だとだと言われても信じられなかった。


「……魔族も双子とかいるのか?」


「なるほど……、貴様は以前エステと遭遇していたから勘違いしたのだな? 奴め、そこまで怠けていたのか、全く……」


 よく考えたら、人間でも双子とか3つ子とかいう場合もある。

 見た目がそっくりだということは、魔族も同じようなことでもあるのだろうか。

 俊輔と呼ばれた日向人と、エルフの王子であるフェルナンドの会話を聞いて、セントロは俊輔が言っている意味を理解した。

 俊輔と言う日向人は、自分を見てエステだと勘違いしているということに。 

 魔族が同じ人間に何度も遭遇することなど無い。

 何故なら、遭遇した人間はすぐに始末するのが普通だからだ。

 しかし、エステは魔族の中でも気まぐれに動いていたため、もしかしたら気分が乗らなかったとかの理由で、この俊輔と言う日向人を見逃していたのかもしれない。

 とことん、面倒なことばかりエステに、セントロは思わず嘆息した。


「確かにこの体はエステのものだ。しかし、今は私、セントロのものだ」


「……体を乗っ取ったって事か?」


「その通り!」


 要するに体がエステであって、中身がセントロという者になっているということのようだ。

 どういった方法かは分からないが、エステの体を奪ったということなのだろう。

 俊輔の確認するような問いに対し、自身ありげな笑みを浮かべて返答した所を見ると、どうやら正解らしい。


「魔王復活のために、各地から集めた魔族を指揮していた者だ」


「……つまり、お前が魔族の元凶って事か?」


「そうだ」


 魔族はいつどのようにして生まれるのかということは分かっていないが、生まれながらに強力な戦闘力を有している。

 その力を無闇矢鱈に使っていたのでは、いくら人間が弱いと言っても、徒党を組まれて討伐されてお終いだ。

 そうならないためにも、魔族も力を合わせるべきだ。

 そうすれば、人間を恐れることなく生きていける。

 その思いのもとに、自分がトップとして魔族たちを組織してきた。

 つまり、俊輔がこれまで遭遇してきた魔族たちは、大本をたどればこのセントロのせいだということだ。

 それを聞いた俊輔は、嬉しそうに笑みを浮かべた。


「じゃあ、お前を殺せば、魔族は統率を失うってことだな?」


 魔族と言っても、ピンからキリまでいる。

 エステのような実力の持ち主でない限り、人族でも倒すことが可能だ。

 面倒なのは、どこをどのようにして攻めれば人間を大量に殺せるかなど、頭を使われた場合だ。

 比較的弱い魔族でも、作戦次第で結果が変わってくる。

 その元凶たるセントロが死ねば、頭を失った蛇のようなものだ。

 各地の魔族も減っていくことになるだろう。

 そうするためにも、俊輔はこの場でセントロを殺すことに決めた。


「……舐めるなよ! 日向人ごときが私を殺すだと!?」


 まさかの宣言に、セントロは一瞬呆ける。

 人間ごときに、そんな事を言われたことなど無かったからだ。

 しかし、すぐに舐められて理解すると、そんな事を言った俊輔を睨みつけた。


「この国に来たって事は、あそこに封印されている魔王の復活が狙いなんだろ? 阻止するためにも当然のことをいったまでだ!」


 少し離れた位置にある島を指差し、俊輔は問いかける。

 魔族の狙いは魔王復活。

 その魔王が封印されている島だ。

 復活させるために、ダンジョンに大量の栄養となるものを送り込むつもりなのだろう。

 当然そんな事はさせない。

 そう思い、俊輔は2刀の木刀を抜いてセントロに構えた。


「調子に乗るなよ!」


 自分に武器を向けた俊輔に対し、セントロは片手を上げる。

 それを合図をするように、ファイヤードレイク、ゲオルギウス、ワイバーンの竜種3頭が俊輔の前に立ちはだかった。


「竜種の脅威は、上空からの攻撃だけではないぞ!」


 丸烏の攻撃によってゲオルギウスとワイバーンは飛空能力を削がれた。

 戦闘力が落ちたことは否めない。

 しかし、だからと言って竜種がそれだけで倒せるような種族ではない。

 舐めた口をきいた俊輔を始末するべく、セントロは竜たちに手で合図を送った。



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