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第295話

「ハッ!!」


「ホォ~、なかなかやるな」


 先制攻撃として、フェルナンドは銃の引き金を引く。

 それによって発射された弾丸を、セントロは横へとステップして躱す。


「セイッ!」


「っ!!」


 フェルナンドの狙いは攻撃を躱された後だ。

 セントロがそちらへ躱すのを見越していたかのように、フェルナンドは回り込む。

 そして、接近すると共に、鞘から抜いた刀でセントロに斬りかかった。


“キンッ!!”


 フェルナンドの刀が当たると思ったところで、金属音が鳴り響いた。


「……危ない、危ない」


 セントロが魔法の指輪から剣を出して防御したのだ。

 もう少し取り出すのが遅かったら斬られていたかと思うと、冷や汗ものだった。


「……貴様、名前は?」


「エルフ王国王子、フェルナンドだ」


 自分に僅かでも死を感じさせるような人間がいるとは思わず、セントロは問いかける。

 それに対し、フェルナンドは律儀に答えた。


「やはりエルフは人種の中でも面倒のようだな」


「そいつはどうも……」


 距離を取ったセントロは一言呟き、それに対してフェルナンドは笑みを浮かべて礼を言う。

 魔王を封印したエルフの一族。

 セントロたち魔族からすると、憎き相手である。

 東西南北にある封印のダンジョンも、このエルフの国の側にある南のダンジョンが一番復活をさせるのに困難だろうと考えられた。

 その予想は当たっていたようだ。

 自分とまともに戦える人間なんているとは思えなかったが、今目の前に存在しているからだ。

 こんなのがいるようなところに手を出すのは、他の魔王を復活させてからにすれば良い。

 しかし、今の魔族はそんな事を言っていられる状況じゃない。


「ここに封印された魔王を復活させたいようだが、考えが甘かったな」


「……全くだ」


「……何?」


 フェルナンドは嫌味のつもりで言ったのだが、セントロは同意の返答をして来た。

 思ってもいない返答に、フェルナンドは不思議に思った。


「はっきり言って、私はここに手を出すのは後回しにするつもりだった」


「……じゃあ、何で?」


 セントロは、視線の先にある魔王が封印されている島を指差して話す。

 まるで、あの島の封印を解くのは自分の考えではないというかのような内容だ。

 魔王が復活しては困るが、被害のことを考えるなら別にここの封印ではなくても良いのなら他に行けばいい。

 そんな思いをしつつ、フェルナンドはここの封印を狙う理由を尋ねた。


「ここを狙う理由は、一番復活に近いからだ」


 フェルナンド言うように、封印が解けるなら他の場所でも良い。

 それでもここの封印を解こうとしているのは、ここが魔王復活に一番近い場所だからだ。


「この数年で、人工的に魔物を造り出そうとした研究所は破壊され、他のダンジョンは攻略された」


 魔王復活のために、セントロは他の魔族に色々と指示を出してきた。

 研究施設を作り、合成獣を作る研究をおこなわせた。

 強力な合成獣を作り、魔王復活のための養分として送り込もうとしていた。

 しかし、その研究施設も崩壊し、攻略なんてされると思っていなかったダンジョンが次々と攻略されてしまった。


「私の計画は全て潰され、魔王復活はまた養分を送り込む作業をおこなわなくてはならなくなってしまった」


 魔族の中でも、セントロは長い間魔王復活へ向けて行動を起こしてきた。

 各地から魔族を集め、彼らを統率することによって魔王を復活させるための養分を封印の結界内に送り込んで来た。

 だが、その地道におこなってきたことも、攻略されてしまえば意味がない。

 普通のダンジョンなら、1度核を破壊されてしまえば復活するなど滅多にない。

 しかし、魔王なら復活のために溜め込んだ魔力を使い、ダンジョンの復活も出来なくはない。

 出来なくはないが、それはつまり復活から遠ざかるということだ。

 ダンジョンを復活できるといっても、かなりの力を使用しているに違いない。

 封印の結界が一時的に消えるということは、存在の消滅に近い程の力を失っているのだろう。

 もしも短期間で何度もダンジョンを攻略されたならば、復活どころか魔王の消滅も起こり得る。

 そうならないためにも、また養分となる生物を送り続ける日々を送るしかない。


「ダンジョンを攻略した者が誰だか知らんが、見つけ次第殺してくれるわ!」


「……あっそ」


 どうやら、ダンジョンを攻略した人間が誰なのかはセントロにまで届いていなかったようだ。

 フェルナンドは、俊輔が各地のダンジョンを攻略したということを聞いているため知っている。

 俊輔のことはひと悶着あって好きではないが、だからと言ってセントロに教えてやるわけにはいかない。

 怒りの表情のセントロに対し、フェルナンドは軽い返事をした。


「だが、その攻略者は発覚した」


「…………」


 俊輔が攻略したということは黙っているつもりでいたが、どうやらもうバレているのかもしれない。

 そのため、フェルナンドはセントロの言葉に無言になってしまった。


「貴様だろう? エルフの王子!」


「…………えっ?」


 攻略したのが俊輔だとバレてしまっても、奴なら降りかかる火の粉は払える。

 それでも、その火の粉すら降りかからないようにと思って黙っていたのだが、どうやらセントロはおかしな勘違いをしたようだ。

 何故だか自分がダンジョン攻略をした人間だと思われ、フェルナンドは少しの間固まってしまった。


「隠さなくても分かるぞ」


「いや……」


 フェルナンドの反応が図星だからだと判断したのか、セントロは勘違いしたまま話を進める。

 その勘違いを止めようとするフェルナンドのことはお構いなしと言わんばかりに、セントロは話し続けた。


「お前ほどの強さの人間など聞いたことが無い。やはり魔王封印をおこなったエルフの血族だ!」


「…………もういいや」


 今更勘違いと言っても聞いてくれる気配がない。

 この場でセントロを倒してしまえば、勘違いも関係なくなる。

 そう判断したフェルナンドは、訂正するのを諦めた。


「私の邪魔をした貴様には、魔王復活に利用させてもらおう」


 勘違いをしたままのセントロは、完全にフェルナンドを標的に決めたようだ。

 そして、話が終わると、全身の魔力を高めた。


「ハッ!!」


 高めた魔力を手に集めたセントロは、地面に手を突き魔法陣を作り出す。

 どうやら魔物召喚の魔法陣らしく、魔法陣からは巨大な魔物が出現してきた。


「っ!?」


「やれ! ニーズヘッグ!」


 現れたのは体が鱗で覆われ、背中に翼を生やした竜だ。

 その竜、ニーズヘッグに驚いているフェルナンドに対し、セントロは攻撃を指示を出したのだった。



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