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第288話

「ハーーッ!!」


 全力を出すと言ったフェルナンドは、これまで以上に魔力を放出させてその身に纏う。

 それによって、これまで以上に身体強化されたことがうかがえる。


「……たしかにすごい魔力だ」


 フェルナンドが身に纏った魔力を見て、俊輔は感心したように呟く。

 子供の頃から訓練や魔物の討伐によって魔力を高めてきたが、自分を越える魔力量の人間を見るのは初めてかもしれない。


「フンッ!!」


「っ!!」


 魔闘術による身体強化。

 それが成されたフェルナンドは、地を蹴り俊輔へと接近する。

 これまで以上の速度で俊輔との距離を詰めたフェルナンドは、右手の木剣で斬りかかる。

 その速度に驚きつつも、俊輔はバックステップをして脳天へ振り落とされた木剣を躱す。


「ハッ!!」


 バックステップした俊輔に、フェルナンドはすぐさま銃を向ける。

 そして、銃の引き金を引いて 魔力の弾丸を発射させた。


「っ!!」


 腹目掛けて飛んできた弾丸を、俊輔は左手に持つ小太刀の長さの木剣で防く。

 その場にいると、再度弾丸が飛んでくると感じた俊輔は、横へと飛んでフェルナンドとの距離を取った。


『速いな……』


 纏う魔力量を増やしただけあって、かなりの速度が上がっている。

 少しでも対応を間違えれば、結構なダメージを負っていただろう。


『けど、対応できるレベルだ』


 速いがこれならなんとか目で追える。

 次に何をしてくるのか窺いつつ、俊輔はフェルナンドの動きを注視した。


「ハッ!!」


「…………」


 速度で撹乱することを狙ったのか、フェルナンドは俊輔を中心に円を描くように動き回り始めた。

 いつ、リズムを変えて来るのか警戒しながら、俊輔はフェルナンドを目で追い続ける。


「…………ハッ!!」


 フェルナンドの右手が僅かに動く。

 その瞬間、更に加速したフェルナンドが俊輔に突きを放った。


「っっっ!!」


 一瞬にして目の前まで来たフェルナンドが放った突きが、自分の右肩へ向かって迫る。

 その速度に、俊輔は目を見開いた。

 しかし、すぐにフェルナンドの方が目を見開くことになる。


「何っ!!」


 更なる加速に俊輔は反応できず、右肩に突きが当たるとフェルナンドは確信していた。

 それが、俊輔も加速して攻撃を躱したのだ。

 勝利を確信していただけに、驚くのも無理はない。


「まさかこれも躱されるなんて……」


「魔力を凝縮して加速する技術か……」


 攻撃を躱され、フェルナンドは信じられないものを見るような目で小さく呟く。

 驚いているフェルナンドに、俊輔は先程の技術の感想を述べた。

 フェルナンドがおこなったのは、俊輔へ攻めかかる直前に足だけ纏う魔力を増やし、それによって瞬間的に速度を上げたのだ。

 精密な魔力コントロールができないと使えない技術だ。


「他にできる人間がいないとでも思ったのか?」


「くっ!」


 俊輔の指導によって京子も使えるし、危険ダンジョンで知り合ったミレーラも使える。

 カルメラは最初のうちは無理だったが、最近は使えるようになってきている。

 たしかに難しいが、訓練すれば使いこなせる技術だ。

 驚いているフェルナンドに、俊輔は意外そうに問いかけた。


「まさか人族が……、魔法に長けたエルフでも、そう簡単に使いこなせないというのに……」


「そうなのか?」


 後に知ることになるのだが、どうやらこの技術はかなり難易度が高いらしい。

 フェルナンドが驚いたのも、別におかしな事ではないそうだ。

 小さい頃からこの技術を使いこなしていた自分だから、そんなに難しいと思わなかったようだ。


『それにしても、纏っている魔力の割には動きが遅いような……』


 攻撃を躱されて驚いているフェルナンドだが、躱している俊輔としても若干違和感を抱いていた。

 というのも、フェルナンドの纏っている魔力量は俊輔よりも上だというのに、問題なく対応できているからだ。

 これだけの魔力量の差があれば、もっとギリギリの戦いになるはずだ。

 そうならない理由が、俊輔には分からないのだ。


『……そうか。たしか、エルフは元々身体能力が低く、魔物を倒した時の能力上昇が他の人種より低いんだったな』


 少し考えると、その理由に思い至った。

 エルフは、生まれた時から魔力が豊富な人種ではあるが身体能力がかなり低い人種で、魔物を倒した時におこる能力上昇も、他の人種よりも低いと本で読んだことがある。

 だから自分よりも多い魔力を纏って身体強化をしているのに、戦えているのだろう。


「くそっ!!」


 奥の手を使い切ったのか、フェルナンドは冷静さを失っているようだ。

 銃を俊輔へ向け、魔力弾を連射してきた。


「この距離ならその程度の攻撃通用するわけないだろ」


 たしかにフェルナンドの持つ銃による魔力弾は速い。

 至近距離で撃たれれば危険だが、距離を取った状態で撃たれても何の脅威にもならない。

 そのため、俊輔は飛んでくる魔力の弾丸を、左手の木剣で防いだ。


「さてと……」


「……?」


 全ての弾丸を防いだ俊輔は、右手に持つ木剣の剣先をフェルナンドへ向ける。

 何をしてくるのか警戒しているフェルナンドに、俊輔は剣先から魔力弾を発射させた。

 銃と同等の攻撃が顔面目掛けて飛んできたことに驚きつつ、フェルナンドは首を傾けてその攻撃を躱した。

 しかし、完全に躱すことはできずに頬が切れ、僅かに出血した。


「避けたからって安心してるなよ」


「うっ!!」


 頬の怪我に気を取られ、フェルナンドは一瞬俊輔から目を離した。

 その隙を逃さず、フェルナンドとの距離を詰めた俊輔は、腹に蹴りを打ち込む。


「このっ!!」


 腹に攻撃を受けたフェルナンドは、俊輔から距離を取ろうとバックステップする。

 そしてすぐさま俊輔へと銃を向ける。


「遅い!」


「っ!!」


 距離を取って攻撃しようとするフェルナンドを追いかけた俊輔は、自分に向けられた銃を木剣で打ち払う。

 それにより、フェルナンドの銃は手から飛んで行った。


「痛みに慣れていないようだな」


 これまで苦戦という苦戦をしたことが無いのだろう。

 そのため、腹に受けてから反撃に出るまでの反応が襲い。


「くそっ! 負けて堪るか!」


 銃を飛ばされたフェルナンドは、破れかぶれといったように残った木剣で襲い掛かった。

 

「フッ!」


「あっ……」


 冷静さを欠いた攻撃では、いくら速いと言っても俊輔に通用しない。

 フェルナンドの攻撃は、あっさりと俊輔の左の木剣で受け止められた。


「終わりだ」


 銃を失ったフェルナンドとは違い、俊輔はもう片方の手に木剣を持っている。

 

「ぐふっ!!」


 攻撃を受け止められてがら空きになったフェルナンドの胴を打ち付ける。


「……あうっ!」


「京子は俺のカミさんだ! 王子だろうと絶対渡さん!」


 棒に攻撃を受けたフェルナンドは、崩れるように地面へと倒れていった。

 そのフェルナンドが気を失う前に、俊輔は強い口調で告げる。

 その言葉を聞いてすぐフェルナンドは気を失い、俊輔の勝利が決定した。

 


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