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第283話

「よく来てくれた、日向の者よ! 私がエルフ王国国王のロレンシオ・デ・アンヘルだ」


「初めまして、入国を許可していただき感謝したします」


 王との謁見が許可され、俊輔たち一行はエルフ王国の王城へと向かった。

 そして、玉座の間にて、目の前にした王のロレンシオへ向かって入国許可の礼を述べた。

 見た目は30代前半に見えるが、エルフの場合見た目と年齢は全く違う。

 ミレーラがドワーフのダンジョンに入る前と変わっていないと言っていたので、300歳以上だという話だ。

 ある程度の年齢を聞いていたが、見た目とのギャップにやはりエルフは違うと、俊輔は改めて感じていた。


「…………」


「……? 何か?」


 礼を述べると、エルフ王は何故か黙って自分と京子の顔をジッと見ている気がした。

 その視線に、俊輔は自分の顔に何かついているのかと気になり、右手で顔に触れながらロレンシオへと問いかけた。


「あぁ、許せ。歴史書の通り、日向の人間は黒髪黒目で幼く見えるのだと思ってな」


 ジッと見ていたことで、俊輔に不思議に思わせてしまったことに気付き、ロレンシオはその理由を述べた。

 黒髪黒目は分かるにしても、エルフの者もやはり日向の人間は幼く見えるようだ。


「歴史書ですか?」


「あぁ」


 俊輔は、ロレンシオの言った言葉が気になった。

 エルフ王国の歴史書。

 なんとなく見てみたいと興味がそそられる。


「歴史書を見せていただくことはできますか?」


「写本が図書館にあるから、そちらへ行くといい」


「分かりました」


 重要な書物なので、見せてもらえるか微妙だと思っていた。

 しかし、ちゃんと図書館に写本があるらしい。

 色々な国の書状によって、来賓としてこの国での行動が許可証を発行してもらえるということなので、それを提示して入館料を支払えば入れるそうだ。

 俊輔としては興味があるので、機会を作っていくこと密かに決めた。


「ドワーフ王国やヴァーリャ王国、それにカンタルボス王国からも文が届いているが、エステとか言う魔族の中でも危険な存在が、我が国にある危険ダンジョンに迫っているということだったな?」


「はい。何を企んでいるのかまでは分からないですが……」


「そうか……」


 ドワーフ王国に現れた時、エステは魔王の復活を目的としているようなことを言っていた。

 東西南北にあるダンジョンのうち、俊輔が攻略していないのはエルフ王国にるダンジョンだけだ。

 一番魔王復活に近いダンジョンだと思われる。

 そのため、俊輔はエステが魔王を復活させるならここだろうと思っている。


「ここだけが攻略されていないので、エステが狙うのはここではないかと思っています」


「なるほど……」


 俊輔が自分の思いを告げると、それを受けたロレンシオは考え事をするように顎に手を当てる。


「しかし、他のダンジョンと違い、我々のダンジョンは100年前くらいに1度攻略している。もしかしたら他を狙うということはないか?」


「っ!! そうなのですか?」


「あぁ」


 東西南北の危険なダンジョン。

 そのうち、俊輔は南以外のダンジョンを攻略した。

 あれほど危険なダンジョンを攻略できる人間が、自分以外にいるのか分からない。

 そのため、南のダンジョンもずっと攻略されていないのかと思い込んでいたが、そうではなかったようだ。

 ダンジョンの攻略者がいるということに、俊輔は驚きの声を上げた。


「攻略者は地上に戻ることはなかったがな……」


「そうですか……」


 攻略者がいるというなら、その者にもエステとの戦いに参加して欲しいところだ。

 しかし、ロレンシオの説明だと、その攻略者は自分の死と引き換えにダンジョン攻略をしたとそうだ。

 それでもすごいことだ。

 その攻略者は相当な実力があったということなのだろう。


「……思い出させてしまったな、ミレーラよ」


「いいえ……」


「「「……?」」」


 ダンジョン攻略者の話になっていたというのに、突然ロレンシオはミレーラを向いて申し訳なさそうに話しかける。

 その言葉の意味が分からず、俊輔、京子、カルメラは、揃って首を傾げた。


「そなたたちは分からないのも無理はない。その攻略者というのが、ミレーラの両親たちだったのだ」


「っ!! ……そうですか」


 説明を受けて、ようやく先程の会話の意味を理解した。

 ミレーラから100年ほど前に両親を亡くしたと聞いていたが、まさかダンジョン攻略をして亡くなっているとは思わなかった。

 それに、いくら強くてもあのダンジョンに入ろうとする人間がいるとは思わなかったため、勝手に南のダンジョンも攻略されていないものだと思い込んでいた。

 気が重いが、ミレーラの両親のことを深く聞いていればもっと早くこのことに気付いていたかもしれない。


「ここのダンジョンが攻略されたことにより、ドワーフ王国も攻略に動いたのだ。そこで攻略者の娘であるミレーラに行ってもらうことになったのだ。しかし、両親のこともあったし、私としては本当は行かせたくなかった」


「陛下! あれは私が勝手に申し出たことです。今思えば、両親の域に達していない自分が無謀だったのです。勝手なことをして申し訳ありませんでした」


 同じく魔王封印のダンジョンを管理しているドワーフ王国からすれば、自分たちも攻略に乗り出すべきではないかと考えるのも致し方ない。

 攻略のために同盟国であり攻略者を出したエルフ王国の協力を求め、それにミレーラ自身が立候補したのだそうだ。

 攻略者の一員の娘が協力してくれるなんて、ドワーフとしてもありがたい。

 そのため、あっさりとダンジョン攻略の部隊に入ることが決定してしまったとのことだ。

 決まってしまったことを覆すのは、相当の理由がないと不可能。

 結局、ロレンシオはミレーラを見送るしかできなかったそうだ。


「結果一人で苦しませるようなことになってしまった。戻って来てくれて本当に安堵したぞ」


「ありがとうございます。俊輔に出会うことができなければ、今も外に出られていたか分かりませんでした」


「そうか……」


 転移の魔法がない状況で仲間と共に危険ダンジョンに挑み、下層で仲間を失うことになってしまった。

 そして、一人では地上に戻ることも更なる下層へ進むこともかなわず、ある階層で何十年も暮らすことになってしまった。

 孤独に負けず生き永らえていたら、運よく俊輔という強者に出会えることになった。


「我が国の民を救って頂き感謝する」


「いえいえ、偶然でしたので」


 自分がミレーラに会えたのは本当に偶然に過ぎない。

 困っていたから助けただけだというのに、まさか国の王から感謝されるとは思わず、俊輔は照れくさそうに謙遜したのだった。



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