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第277話

「よく来た。私がヴァーリャ王国国王モデストだ」


「初めまして」


 ドワーフ王国を出た俊輔たち一行は、獣人大陸の最初の国ヴァーリャ王国へと入った。

 そして、そのままヴァーリャ王国の王都バルニドに向かい、この国の王と謁見することにした。

 ドワーフ王国から連絡が行っていたこともあったため、すんなりと許可が下りこの日を迎えることになった。

 ヴァーリャ王国は獣人王国の最北の国で、牛人と呼ばれる種族が多くいる国だという話だ。

 牛人族と言うくらいだから、ケンタウロスやミノタウロスのような姿をしているのかと思ったが、角や尻尾が生えているだけで、俊輔たち人族と大差ないように見えた。

 俊輔と挨拶を交わしたモデストも、同じように角が生えているが、王都内の一般市民とは違い、筋肉に覆われた肉体をしている。

 見るからにパワーがありそうな雰囲気だ。


「あの危険ダンジョンを攻略したという話だったな?」


「はい」


 モデストは、まず初めに俊輔たちがダンジョンを攻略したことの確認をして来た。

 ドワーフ王から連絡が来て知っているが、自分の耳で聞きたいということなのだろう。

 俊輔はその問いに頷きを返した。


「その年齢でありながら信じられないことだ……」


「……とっくに成人しているんですが」


「そうか。それは失礼」


 俊輔の迷うことのない頷きに真実だと察したモデストは、感嘆の言葉を呟いた。

 日向の人間は人族大陸では幼く見られがちだ。

 角などが生えているだけで、人族大陸の者と変わりない彼らからしたら、俊輔たちは幼く見えるのだろう。

 しかし、成人(この世界だと15歳)してから世界旅行を始めた俊輔からすると、そう思われるのはなんとなくしっくりこない。

 そのため、俊輔は困ったよう一言呟く。

 すると、モデストは先程の呟きを謝った。


「それでも信じ難いな」


 成人して数年経っていようと、それでもまだ若い。

 その若さで攻略できるようなダンジョンでないことは、これまでの歴史で分かっている。

 ドワーフ王国の魔王の封印には、ヴァーリャ王国も関わりがある。

 封印後にできたダンジョンの攻略を進めるために、何人もの実力者を送ったこともある。

 しかし、誰一人として帰ってこなかった。

 そのため、ドワーフ王から攻略の話を聞いた時は驚きが隠せなかった。

 その難関ダンジョンを攻略した人間が、どんな姿をしているのかと思ったら、子供のように見える人間だったから尚のこと信じられなかったのだろう。


「……ミレーラも久しぶりだな」


「お久しぶりです。モデスト王」


 俊輔との会話をした後、モデストは俊輔の側に立つミレーラへと話しかける。

 それに対し、ミレーラも返事をした。


「陛下が子供の時にお会いして以来ですね?」


「あぁ、懐かしいな」


 どうやら2人は知り合いのようだ。

 ミレーラはエルフなので、見た目通りの年齢をしていない。

 そのため、知り合いだとしても分からなくはない。

 とりあえず、俊輔たちは話の腰を折ることなく黙っていることにした。


「仲間の遺品も持ってこれず、私1人戻ってくる形になってしまい申し訳ありません」


「何を言う。全滅もあり得ると分かっていたことだ。そなただけでも帰ってきて良かったと思っている」


「ありがとうございます」


 どうやら、ミレーラと共にあのダンジョンに潜った仲間たちのなかにこの国の者がいたのだろう。

 しかしながら、あのダンジョンで仲間は皆やられ、ミレーラは俊輔に会うまで身動きできずに1人で生き抜くことしかできなかった。

 遺品すら持ってこれなかったことに、ミレーラは謝罪の言葉を口にする。

 だが、モデストもダンジョンの難易度から攻略失敗の可能性は考えていた。

 むしろ、ミレーラだけでも生き残っていたことを聞いて驚いたほどだ。


「俊輔とやら」


「はい」


 2人のやり取りが終わったのか、モデストはまた俊輔に目を向けた。


「ドワーフ王国は同盟国だ。信じてはいるが……、確認をしたい」


「確認ですか?」


 確認なら先程したと思うのだが、どういうことなのかと疑問に思う。

 そう思っている俊輔を余所に、モデストは玉座の間に端に控えていた一人の兵士を手招きした。


「我が国最強の戦士ビクトリノだ。彼と試合をしてもらいたい」


「……試合ですか?」


「あぁ」


 手招きされて俊輔たちの前に立ったのは、ビクトリノという名前らしい。

 モデストに負けず劣らずの体つきをしており、190cm近い身長をしている。

 精悍な顔立ちで、年齢的には30歳前後といったところだろうか。

 しかし、俊輔としては、何故試合をしないといけないのか分からず首を傾げる。


「実の所、確認のための試合というのは建前だ」


「……えっ?」


 俊輔が乗り気でないことを察したからか、モデストは本音で話し始めた。

 突然のぶっちゃけに、俊輔は呆気に取れられた。


「あのダンジョンを攻略するような者の実力がどれほどのものなのかを見てみたくてな」


「なるほど……」


 ダンジョン攻略はされても、しばらくすればまた復活する。

 復活のために、封印されている魔王はこれまで溜め込んだ力を消費しなければならなくなる。

 その消費した分、かなりの期間魔王の復活を先延ばしにできるというものだ。

 これまで多くの人間が攻略に着手して、戻ってくる者はいなかった。

 そんなダンジョンを攻略した人間が、どれほどのものなのかを今後のために知っておきたいのだろう。


「……分かりました」


 断ることもできるだろうが、獣人国との付き合いを深めるためにも断らない方が良いだろう。

 俊輔は内心では仕方ないと思いつつも、試合を受けることにした。


「本当になったな」


「そうだね」


 俊輔が了承したところで、カルメラと京子が小声で話し合う。

 というのも、このような状況になることを、実はドワーフ王から聞いていたのだ。

 獣人族は、昔から強い者が評価される風潮にあるという話だ。

 強ければ王となれるという訳ではないが、王にも強さは求められるという話だ。


「まぁ、俺も獣人の強さってのに興味あったし構わないんだけどな」


 いきなり国の最強と戦うなんて思わなかったが、この流れは特に問題はない。

 俊輔もこうなることは分かっていたし、獣人族がどのような戦い方をするのかということにも興味があった。

 試合は明日おこなうことになり、俊輔たちは今日の所は旅の疲れを取るように言われた。

 客人扱いとして、王城の一室で寝泊まりして良いということだった。

 王城というだけあり、その日俊輔たちはフカフカのベッドで休むことができたのだった。



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