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第267話

「グルㇽㇽ……」


 虎の魔物が唸り声を上げる。

 その目の前にいるのは、愛刀となる俊輔特製の木刀を手にした京子だ。


「ガアァッ!!」


 虎の魔物が京子目掛けて襲い掛かる。

 爪による斬り裂き攻撃が迫るが、京子はその攻撃を躱して虎の背後へと移動した。


「ネコは好きだから従魔にしたいところだけど、残念だわ」


「ガッ……!?」


 背後へと移動した京子は、悲しそうな表情で呟く。

 虎は京子を追いかけ追撃をしようとするが、それをする事はできなかった。

 首がずり落ち、大量の血をまき散らし、虎の魔物の巨体は倒れて動かなくなる。

 それを見ている京子の木刀に付いた血。

 それからも分かるように、虎が襲いかかってきたところを持ち前の高速移動で首を斬り裂いたのだった。


「……とんでもない速さだな」


 側で見ていたカルメラが、若干引いた表情で呟く。

 ダンジョン内に入ったことで、元々速度重視の戦闘スタイルである京子の移動速度に磨きがかかっていた。

 カルメラ自身も成長している自信があるが、差が全く縮まっていない気がしてならない。


「まぁ、私は地道に倒すだけだな」


 京子のように強力な魔物を相手にするのではなく、カルメラは自分が対応できる魔物を少しでも減らすことに集中することにした。

 色々な武器を使用することができるカルメラだが、槍をメインにすることが多かった。

 しかし、剣も使えるのだからと、俊輔は錬金術で作った薙刀を渡してみた。

 それが気にいったのか、最近ではそれを主武器としている。

 その薙刀を使い、斬る、突く、払うと振り回し、魔物の数を減らしていった。


「おぉ!」「やっぱりすごいな!」


 自分たち以上の速度で魔物を倒していく京子とカルメラ。

 それを見たドワーフ兵たちは、ダンジョンを攻略した実力を目の当たりにして、感嘆の声をあげていた。


「俺たちも負けてられないぞ!」


「あぁ!」


 居子たちに感化され、ドワーフ兵たちの士気が上がった。

 それにより、魔物たちは少しずつ数を減らしていった。


「ガアァーー!!」


「うわっ!!」


 俊輔に殺された魔族たちが出した魔物たちが減ってくると、獅子の魔物たちがドワーフ兵たちに襲い掛かってきた。

 普通の倍近くの体格をした獅子の魔物の体当たりを受けたドワーフ兵たちは、その身を軽々と吹き飛ばされて地面へと叩きつけられた。


「ガアァーー!!」


「「「「「っ!!」」」」」


 地面へ体を強かに打ちつけたドワーフ兵たちは、ダメージによって立ち上がるのが遅れる。

 そこを狙って、追い打ちをかけるように獅子の魔物がドワーフ兵たちに向かって突進していく。


「危ない!」


「ッ!?」


 今度は体当たりなどではなく、牙による攻撃でドワーフ兵の1人を仕留めようとしていた獅子の魔物。

 その魔物に対し、真横から強力な火球が飛んできて弾き飛ばした。

 死角から食らった火球により、獅子の魔物の全身に火が燃え広がる。

 その火を消そうと少しの間のたうち回るが、火を消すことなどできずに獅子の魔物は全身に大火傷を負って動かなくなった。


「大丈夫ですか?」


「あ、あぁ、ありがとう」


 魔法を放ち、話しかけてきたのはミレーラだ。

 声をかけられたドワーフ兵は、ミレーラのことを見て納得したように感謝の言葉を返した。


「流石エルフ」


「すごい魔法の威力だ」


 強力な魔法を撃ったミレーラに、ドワーフ兵たちは感嘆の声を上げる。

 ミレーラの使う武器は魔銃と呼ばれる銃だ。

 エルフ王国の初代が使っていたことから、エルフ族の人間は銃を使う人間が多い。

 人族の中で身体能力が低い代わりに魔力が豊富なエルフは、魔法を使って戦うのが強くなるのに一番手っ取り早い。

 その魔法を補助するための武器として銃を使うようなり、その銃はドワーフが改良を加えている。


「評価されるのは嬉しいけど、あの子(・・・)がいるからちょっとためらうわね……」


 助けたことでドワーフ兵たちに評価されているのは嬉しいが、ミレーラからすると素直に喜んでもいられない。

 というのも、戦場で強力な魔法を放っているのが自分だけではないからだ。


「ピー! ピー!」


 ミレーラ以外に魔法を放っているのは、俊輔の従魔のネグロだ。

 最初の大規模魔法ではダメージを与えることはできても、ここに集まっている魔物たちを仕留めることができない。

 そのため、ネグロは凝縮した魔力で威力を込めた魔法によって、確実に数を減らしていく方向に転換した。

 ネグロ得意のレーザー光線の魔法が魔物に直撃すると、魔物はいとも簡単に体に風穴を開けて絶命していった。


「……何だあの丸烏」


「何であんな強力な魔法を……」


 弱小魔物で有名な丸烏。

 その丸烏であるネグロが、自分たちも手こずる魔物を屠っていく。

 その姿を見たドワーフ兵たちは、若干引き気味に呟いていた。


「ホントすごいわね……」


 ドワーフ兵たちの呟きに賛同するように、ミレーラもネグロの魔法に驚いている。

 弱いはずの魔物も強くなるということは、エルフ王国にとってはさほど驚きのことではない。

 エルフ王国には、守護従魔と呼ばれる魔物が王族に付いているからだ。

 その魔物も弱小で有名な魔物。

 しかし、それが当たり前となっていたことから、その種族の魔物だけが特殊なのだと思っていた。

 それが、目の前でエルフでもトップレベルの魔法を連発するネグロを見て、勘違いをしていたということを理解していた。


「あのアぺストールも強いぞ!!」


「っ!! っ!!」


 強い魔物は京子やミレーラ、それにネグロに任せ、カルメラ同様中型の魔物を倒すことに集中している生物がいた。

 俊輔のもう1羽の従魔であるアスルだ。

 この世界ではアぺストールと呼ばれているダチョウの魔物だ。

 俊輔の従魔となってから蹴り技重視の戦闘法に磨きがかかり、アスルも普通のアぺストールの強さではなくなっていた。

 というより、馬車を馬の代わりに引くために従魔にするような種族のため、戦闘面で期待するような魔物ではない。

 ネグロ同様強いことに、ドワーフ兵たちが驚くのも仕方がないだろう。


「彼女たちにばかり任せるわけにはいかない! 俺たちも頑張るぞ!!」


「「「「「おうっ!!」」」」」


 無双する京子たち。

 彼女たちの活躍により、ドワーフ兵たちの士気が上がる。

 そのため、ドワーフ兵たちも魔族が呼び出した魔物たちを段々と減らしていったのだった。



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