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第263話

「やっちまえ!」


 魔族として本来の姿になった魔族たちは、近くにいた者から俊輔へと襲い掛かってきた。

 まず、襲い掛かってきたのは猪型の魔族だ。


「オラッ!!」


 直進力によって俊輔との距離を詰めた猪魔族は、両手に持つ棍棒のような物を振り回してきた。

 腕力があるのだろう。

 振り回す棍棒の風切り音が、俊輔の耳にはっきりと届いてくる。

 いくら威力があろうと、当たらなければ意味がない。

 俊輔の速度に付いてこれず、猪魔族の攻撃は空を切るばかりだった。


「この野郎!!」


「フッ!」


 当たらないことにイラ立ったのか、猪魔族は両手の棍棒を振りかぶる。

 そして、そのまま俊輔へと振り下ろしてきた。

 その攻撃を、俊輔は笑みを浮かべつつ躱す。

 猪魔族の攻撃は空振り、そのまま地面を打ちつけた。


「隙だらけだ」


「っ!!」


 地面を殴ったことによる振動を苦にせず、大振りをして隙だらけになった猪魔族の真横へと回り込んだ。

 そして、右手に持つ木刀を振り、首を斬り飛ばした。


「クッ!」「このっ!!」


 頭がなくなった猪魔族の体から大量の血が噴き出す。

 仲間が殺られたことに怒りを覚えたのか、猪の攻撃の巻き添いを受けないように距離を取っていた他の魔族が攻めかかってくる。

 鹿型の魔族と羊型の魔族だ。


「ほいっ!」


「っ!?」


 同時に攻撃してくる気の2体のうち、羊魔族の方に向かって猪魔族の体を蹴とばす。

 それによって、羊魔族の方は一旦足を止めて猪魔族の体を弾く。


「くらえ!!」


 羊魔族が止まったため、鹿魔族の単体攻撃になった。

 頭の角を使って、串刺しにしようと突っ込んでくる。


「がっ!?」


 しかし、その鹿魔族の横から顔面に何かが飛来し直撃する。

 死角から飛んできた飛来物に、鹿魔族は驚きながら視線を向ける。

 飛んできたのは、俊輔が斬り飛ばした猪魔族の頭部だった。

 その頭部に魔力が付いている所を見ると、俊輔が操作して飛ばしてきたのだと分かる。

 予想だにしなかった1撃に、鹿魔族は軽い脳震盪を起こした。


「ヌンッ!!」


「ゴバッ!!」


 足元がふらついている鹿魔族。

 当然その隙を逃す訳もなく、俊輔は木刀を袈裟斬りする。

 その攻撃によって、鹿魔族は体を斜めに斬り裂かれた。


「ハッ!!」


「っと!」


 鹿魔族を倒した直後、右側から火球が飛んで来る。

 それを躱した俊輔が飛んできた方向に目をやると、そこには猿の魔族が立っていた。

 火球の威力から言って、魔法戦闘タイプのようだ。


「クラッシュ!!」


「おわっ!」


 猿魔族に目が行った俊輔に、先程一旦足を止めた羊魔族が襲い掛かる。

 体毛を魔力で強化して利用した体当たりだ。

 見た目のモコモコとは違い、石の壁のような硬さの毛に、小太刀の木刀で防御した俊輔は驚いたような声をあげる。

 体当たりが小太刀に当たるのに合わせて、力を流すように後ろに跳び退く。

 それによって、俊輔はノーダメージでその場を回避した。


「毛を使った攻防が得意ってか?」


 自ら飛んでダメージを回避した俊輔は、着地をして羊魔族の戦闘スタイルを分析する。

 あれほどの硬さにできるということは、防御にも利用できる。

 それが羊魔族の得意な戦い方なのだろう。


「ハッ!」


「チッ! 今度は鼠か!」


 防御の高い羊魔族をどう倒すか考えようとしたのだが、そんな間を与えないように左から鼠の魔族が攻めかかってきた。

 両手に短剣を持つスタイルらしく、俊輔を追いかけるように斬りつけてきた。

 小柄のためか、鼠の魔族は俊敏に動いて攻撃してくる。

 その小回りの良さは、僅かに俊輔より勝る。


「危なっ!」


 鼠魔族の短剣が、俊輔の顔スレスレを通り過ぎる。

 危うく当たりそうになったことに、俊輔の口から焦ったような声が漏れた。


「もらった!」


 顔へ飛んできた短剣を、仰け反って躱したために俊輔の態勢が僅かに崩れた。

 そこを狙って、鼠の魔族は俊輔の心臓目掛けて短剣を突き出してきた。


「残念!」


「うぐっ!?」


 仰け反って隙を作ったのはわざとだ。

 隙をついて勝利を確信したのだろうが、防御の方ががら空きだ。

 そのがら空きの腹をめがけ、俊輔の振り上げた蹴りが直撃する。

 小柄で軽いせいか、鼠魔族は蹴りの威力で上空へと飛び上がる。


「ハッ!」


「チッ! 猿め……」


 上空に蹴り上げた鼠魔族に止めを刺そうかと思ったのだが、俊輔がそうする前にまた猿の魔族が火球の魔法を放ってきた。

 それを躱すため、俊輔は鼠魔族への攻撃を中断する。

 鼠魔族への止めを邪魔され、俊輔はイラッとしたように猿魔族を睨んだ。


「ガアァァ―ー!!」


「わっ!」


 猿魔族の火球を躱した俊輔に、今度は牛の魔族が襲い掛かってきた。

 手には、どでかいモーニングスターを持っており、それを軽々と振り回し俊輔へ攻撃してきた。

 でかい鉄の塊が迫り来る。

 それを寸での所で躱し、俊輔は距離を取った。


『……何だか段々連携取れて来てるな』


 距離を取る間、俊輔は頭の中で魔族たちの動きの感想を述べる。

 最初は連携なんて関係ないように攻めてきたが、段々自分と仲間の動きを見て攻撃して来るようになった。


『面倒なことになる前に、もう少しだけ本気出すか……』


 当然最初から魔闘術を使って戦っているが、俊輔はまだ本気を出していない。

 京子たちやネグロたち従魔にドワーフ兵たちもいるため、魔物の方は何とかなるだろう。

 しかし、魔族たちが作った魔法陣からはワラワラと出てきていて数がとんでもない。

 これからどんな魔物が出てくるか分からないため、あまりのんびりしているのも良くない。

 この集団の頭らしきライオンの魔族が後に控えているので温存していたが、もう少し本気を出した方が良いかもしれない。

 そう判断した俊輔は、魔闘術の魔力を少し上げることにした。


「この野郎!!」「グルァッ!!」


 仕留めそこなった鼠魔族と牛魔族が、俊輔へ向かって来る。

 少し離れた所には、猿魔族が俊輔の隙を窺うように魔力を練っているのが見える。

 他の魔族も、タイミング次第で襲ってくる気でいるようだ。


「ハッ!! セイッ!!」


「っ!!」「グッ!!」


 先に俊輔に迫った鼠魔族の攻撃を躱し、そのまま木刀で斬りつける。

 俊輔の速度がこれまでよりも速くなったことに、鼠魔族は驚いた時には首が飛んでいた。

 そして、鼠魔族の後に攻撃をしようと考えていた牛魔族は、俊輔の速度に反応できず、モーニングスターを振り上げた状態のまま、腹を横薙ぎにされて内臓をぶちまけた。


「とりあえずあと5体か……」


 残ったのは魔法を放ってきて邪魔をする猿魔族に、防御力を誇る羊の魔族、それと馬の魔族、象の魔族、熊の魔族といったところだ。

 その5体に目を向けつつ、俊輔は木刀についた血を振りはらった。



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