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第258話

「陛下!!」


 ドワーフ王国の王であるフィデルがいつものように過ごしていたところ、部下であるサロモンが慌てたように報告に来た。

 国王でもドワーフ。

 ずんぐりむっくりしている体型でありながら手先が器用なため、フィデルは編み物が得意だ。

 作られる物はかなりの精度で、結構な値段が付くといわれている。

 その編み物の手を止めて、フィデルはサロモンへと目を向ける。


「そんなに慌てて何事だ?」


 部下のサロモンの様子が普通ではない。

 何か起きたようだが、フィデルは落ち着くように指示する。

 その指示を受けて、サロモンは軽く息を吐いて落ち着きを取り戻した。


「ダンジョンが……」


「……ダンジョンがどうした?」


 ドワーフの国でダンジョンといったら、西にある超危険領域のことを示している。

 そのダンジョンには、俊輔という人族たち一行に攻略を依頼しているが何かあったのだろうか。


「ダンジョンの結界が解除されたようです!」


「……何っ!?」


 あまりのことに、フィデルは驚きの声をあげる。

 外からは森林が広がっているように見えるが、近付いて中に入ってしまえば、外に出ることのできない危険なダンジョン。

 それがドワーフ王国の西のダンジョンだ。

 そのダンジョンの結界が解除されたとなると、攻略されたということになる。

 何年経っても、誰も攻略できないでいたダンジョンだというのに、それが攻略されたというのだから驚くのも仕方がないことだ。


「まさか!? 彼らが……」


「恐らく……」


 この何十年もの間、ダンジョンに送り込んだ人間は帰ってこないでいる。

 送った者の中で攻略を可能にしていそうな人間となると、ある者たちの顔が頭に浮かぶ。

 ここ最近送り込んだ者たちである、俊輔たちだ。

 同じ顔が浮かんだサロモンは、フィデルの呟きに同意するような発言をする。


「しかし、彼らがダンジョンに入って半年も経っていないではないか?」


「えぇ、しかし、彼ら以外に攻略を可能にできそうな人間などいないかと……」


「そうだな……」


 2人が思ったように、攻略した可能性が高いのは俊輔たちだ。

 しかし、フィデルが言うように、俊輔たちが入ってまだ半年経っていない。

 数年かかると思っていたのだが、さすがにここまでだと速いというレベルを超えている。

 何をすればこんなことになるのか、2人は不思議に思った。


「何にしても、これで魔法復活の期間を延ばすことに成功したのだ。攻略者に与える褒賞の手配をおこなわねば……」


 東西南北にある危険なダンジョンは、それぞれ魔王が封印されている。

 その封印を解くための魔力を得るために、封印された魔王本人によってダンジョンが作りだされた。

 このまま放って置けば、いつ魔王が復活するか分からない。

 それを阻止するためには、ダンジョンの攻略をして最奥にあるダンジョン核を破壊するしかない。

 何度も攻略をしていれば魔王が復活することなどできなくなるのだが、如何せん攻略不可能な難関ダンジョンであり、攻略ができる者なんて存在していなかった。

 長年の願いだった攻略がされたのだから、攻略者には褒美を与えなければならない。

 当然攻略者の希望も聞くので、何を言われてもいいように色々と用意を始めなければならない。


「市民に知らせろ! 国を挙げて祝わなければ!」


「畏まりました!」


 ドワーフにとって、この難関ダンジョンは悩みの種だった。

 攻略ができず、魔王がいつ復活するかとビクビクしながら生活していたが、それも今回の攻略でしばらくは魔王の復活を先延ばしにすることができたのだ。

 国を挙げて喜ぶべきことだ。

 そのため、フィデルはダンジョン攻略の記念に、祝い事をすることを決定したのだった。






「陛下! 攻略者の方々にお越しいただきました!」


「うむ!」


 ダンジョンの結界が消えて数分経った頃、攻略した者たちがダンジョン内から出てきた。

 やはり、攻略者は俊輔たちで、彼らはドワーフ兵たちによって丁重に城へと招かれた。

 俊輔たちには、ダンジョン突入前に好きな魔道具を提供すると言っていたが、当然他にも求めるものがあれば与えるつもりだ。


「入室して頂け!」


「ハッ!」


 城に招いた俊輔たちに希望を聞こうと、フィデルは玉座の間に呼び寄せることにした。

 指示を受けた兵は返事をし、俊輔たちを案内して玉座の間へと連れてきた。


「よくぞあのダンジョンを攻略した! 俊輔殿と御一行!」


「どうもです」


 兵に案内され、玉座の間に招かれた俊輔たち。

 ようやく攻略して出て来れたためか、どこか疲れているような表情をしている。

 しかし、従魔共々無事な様子に、フィデルは安堵した。

 そのフィデルに感謝の言葉をかけられ、俊輔は照れつつ返答した。


「これでダンジョンの地下に眠る魔王の復活がしばらくの間停止されることだろう」


「えぇ」


 普通に出現するダンジョンなら、核を破壊すればただの洞窟へと変わってしまう。

 しかし、魔王が作ったダンジョンは、長い年月によって復活のための魔力を蓄えてきた。

 ダンジョンが魔力を得て、それが封印されている魔王へと流れる。

 復活の魔力を得るためには、壊された核を修復し、またも結界を張ってダンジョンで栄養を得る必要がある。

 そのダンジョン核の修復に、これまで溜め込んだ魔力を放出するしかなくなる。

 東や北のダンジョンと同様なら、1週間くらいで復活することになるだろう。


「ダンジョン攻略の功績を称えるために、以前話していたように攻略者である君たちには希望する報酬を与えるのだが……?」


 俊輔、京子、カルメラの3人と俊輔の従魔であるネグロとアスル。

 攻略を成功してくれた彼ら一行。

 彼らはほぼ半年ぶりとは言っても、顔は覚えている。

 しかし、彼らと共に、もう1人この場に連れてこられた人間がいた。

 その見覚えのない人間に、フィデルは首を傾げた。


「俊輔殿、そちらはどなただろうか?」


 兵によって連れて来られたため、攻略に無関係ではないのだろう。

 金髪碧眼で容姿端麗な女性で、京子やカルメラに負けず劣らずのスタイルをしている。

 突入前の俊輔たちには、彼女のような仲間がいたということは聞いていない。

 そのため、フィデルは俊輔に尋ねることにした。


「あぁ、あのダンジョン内で知り合った……」


「ミレーラです!」


 フィデルに問われた俊輔は、その女性のことを説明しようとした。

 しかし、その説明の途中で、彼女は自分から名を名乗った。

 俊輔が言おうとしていたように、彼女はダンジョン内で知り合った。

 名前をミレーラと言い、その特徴的な耳で分かるように、エルフ族の人間である。



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― 新着の感想 ―
[一言] あやしい人が登場したなぁ ほんとうに人なのかも怪しい
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