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第251話

「あれがドワーフ王国か……」


 段々と近付く目的地を、俊輔は船の上から眺めつつ呟く。

 人族国以外とは友好的なことで有名なドワーフ王国。

 俊輔たちは遠く離れた日向という国の出身で、一応人族国の仲間という立ち位置になっている。

 ドワーフ王国からしたら人族は好まないため、入国はできないと諦めていたが、魔人大陸に現れた魔族を倒し、エナグア王国を救ったことを認められ、ドワーフ王国への入国が認められた。

 単純に魔族は気に入らないから倒しているということもあるが、種族に関係なく迷惑な存在だと思えるので倒しておいて良かったと俊輔は思っていた。


「どうも! 俊輔という者ですが……」


「えぇ、伺っております。城へとご案内いたします」


「分かりました」


 魔人大陸から乗った船がドワーフ王国北の港に着き、船を下りた俊輔たちに警備兵らしき人間が近付いてきた。

 どうやら俊輔たちのことを待っていてくれたようだ。

 体型はずんぐりむっくりといった感じで、俊輔が思い浮かべていたドワーフそのものといった感じに思える。

 とりあえず敬語は使っているが、俊輔がいつものように軽い感じの挨拶をしても特に気にした様子もなく、城へと連れて行ってくれるようだ。

 話は通っているかもしれないが、人族としては平民の自分たちが城へ行っていいのだろうか。

 そんな思いもありながらも、俊輔たちはそのドワーフ兵の指示に従いついていくことにした。


「へぇ~、やっぱり色々と魔道具が置いてあるんだな……」


 兵の後を付いて城へ行く途中、町中を歩いている最中に商店街らしき道を通っていると、店の商品にどうしても目が行く。

 ドワーフ王国は魔道具開発のパイオニアとしても有名な国だ。

 人族大陸にも色々な魔道具があるが、そのほとんどはドワーフ王国の発明したものを模倣しているといわれている。

 それが故に、見ただけでも本場の魔道具はやっぱり違い、小型で性能も良さそうな物ばかりに見える。


「港までの船も結構すごかったもんね!」


「あぁ!」


 魔道具に関心を示しているのは俊輔だけでなく、妻の京子も目移りしている。

 感心している俊輔の呟きに対し、京子は思いだしたようにエナグア王国の港からドワーフ王国の港まで乗ってきた船のことを言ってきた。

 同じようにあの船には興味を持っていたので、俊輔は京子の言葉に頷いた。

 俊輔たちが乗って来た船には動力が付いており、それが感心するポイントだった。


「プロペラを回して推進力を利用するなんてよく思いついたもんだ……」


 プロペラが回転しているだけで、どうして船の速度が上がるのかという細かい計算はできないが、前世のことを思い起こせばそんなに驚くことではない。

 しかし、この世界で同じような動力を思いついた人間がいたということが、俊輔にとっては驚きだ。

 動力を動かしているのが魔力の込められた魔石のようなので、こちらの世界の方が環境的にも断然いい。

 魔力のある世界というのは、そういった面では前世よりもいいかもしれない。


「……くっ! 出来れば端から端までの店に入りたい気分だ!」


「ちゃんとついて来いよ! カルメラ……」


「分かってる!」


 ドワーフ王国へ行けることになった時、カルメラが魔道具好きなことが発覚した。

 この商店街に入ってから、俊輔たち以上に目移りしている。

 すぐにでも手に取って試してみたいと思っているのだろう。

 少し目を離すと足が止まって、先へ進めなくなってしまいそうだ。

 とりあえずお偉いさんに挨拶をしなくてはいけないようなので、さっさと済ませて観光をしたい俊輔は、カルメラへ注意するように話しかけた。


「……何か見られているね?」


「そうだな……。人族は珍しいんじゃないか?」


「そうかもしれないね」


 やはり人族が町中へ入ってくることが珍しいのだろう。

 市民のみんなが、俊輔たち一行のことを遠巻きから見ているように思える。

 別に敵対的な視線をしている訳でもないので、俊輔はたいして気にしていない。

 そんな俊輔を見て安心したのか、京子も仕方ないことだろうと気にしないことにした。


「よくぞ来た! お主たちがエナグア王国を救った者たちか?」


「……はい」


 城に着くと、早々に王と謁見することになった。

 王はフィデルと言う名らしく、俊輔たちを見て目を輝かせていた。

 どうやら人族の中でも珍しい日向人に興味があったようだ。

 遠く離れているし、そもそも大陸を渡ってくるなんてめったにないことだから分からなくもない。

 しかも、魔人を救うような人間となると、更に珍しいのかもしれない。

 ずっとテンション高いせいか、俊輔たちは終始引き気味だった。


「このブローチを着けてくれ! 他国からの客人として認めるものだ」


「了解しました!」


 挨拶も終わり、ドワーフ王国内の観光が目的だというと、フィデルは手のひら大のブローチを渡してきた。

 どうやら、このブローチを付けている者は国の客人としての証明になるそうだ。

 エナグア王国の時と同じようなものらしい。

 しかし、ドワーフ王国の物のため、これも色々な機能が施された魔道具のような気がする。

 もしかしたらGPS機能でもついてそうだ。 


「それと、このサロモンをつけるので、案内役に使うといい」


「お気遣い感謝します」


 城までの案内をしてくれた兵のサロモンを、そのまま案内役としてつけてくれた。

 俊輔たちのことを警戒してなのか、単純に手厚い待遇をしてくれているのか分からないが、俊輔たちは平然と受け入れて感謝の言葉を述べた。


「では早速、魔道具を見に行こう!」


「……落ち着けよ!」


 城から出ると、カルメラが待ってましたとばかりに主張をしながら拳を握る。

 来たばかりでどこへ行くかも決めていないのに、1人焦り過ぎだ。


「もうお昼だし、まずは食事に行こうよ!」


「ピ~!!」「……!!」


 京子の言葉に俊輔の従魔であるネグロとアスルが賛成する。

 2匹ともおなかが空いているようだ。


「そうだな。食事してからどこへ行くか決めよう」


「ん~、仕方ない」


 言われてみれば、自分も腹が空いていた。

 別に魔道具屋は逃げる訳でもないので、食事をしてから決めることを提案する。

 すぐにでも見て回りたいカルメラも、少しテンションを落ち着かせるべきだと自重したのか、昼食をとることに賛成した。


「では、私のおすすめの店へ案内しましょう!」


「お願いします!」


 来たばかりなので、俊輔たちはどこにどんな料理店があるか分からない。

 会話を聞いていて察したのか、案内役のサロモンが行きつけの店へ連れて行ってくれることになった。

 城から近いため、兵たちが良くいく店らしい。


「肉料理がメインですが良いですか?」


「「「もちろん!!」」」


「ピ~!!」「……!!」


 サロモンの言葉に、俊輔たちはみんな賛成する。

 俊輔はもちろんだが、女性の京子とカルメラも肉料理は大好きだ。

 一般男性程度の量ならぺろりと平らげる。

 魔物なので当然何でも食べるネグロとアスルも、肉と聞いて嬉しそうだ。







「どうぞ! 召し上がれ!」


「「「いただきます!」」」


 案内されて店に入り、注文はサロモンのおすすめを頼むことにした。

 言っていたように、ウェイターによって運ばれて来たのは肉料理だった。


「アサードという料理です」


「でかい!!」


 アサード、スペイン語で焼かれたものという意味だ。

 焼かれたでかい肉が皿に乗っている。

 あまりの大きさに、俊輔は思わず声に出していた。


「「「ごちそうさまでした!」」」


 みんな黙々と食べ進め、皿に乗った固まり肉をみんな完食していた。


「おなかいっぱいです!」


「……同じく!」


 自分ですらかなりきつめだったのに、京子とカルメラまでも完食したのには俊輔にとっては驚きだった。



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