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第223話

すいません。違う作品に投稿をしてしまいました。

「本当に倒したのか?」


「何だ? 信用ないな……」


 人族大陸なら全員高ランクの冒険者集団を相手にして、バスコからしたらこんなに速く倒せるというのが信じられない。

 アドリアン1人に時間をかけていた自分が、まるで馬鹿みたいに思えてくる。

 そのため、確認のためにもう一度問いかけたのだが、俊輔は心外そうに眉をしかめた。


「いくら何でも速すぎるだろ?」


「結構頑張ったからな……」


 好き勝手に動いて村を破壊してはいけないから、わざわざ大量の魔力で結界を張って戦ったのだ。

 魔力使って感じた疲労度を考えると、かなり頑張った方だと思う。

 そのお陰もあって、あっという間に倒すことができたのだから。


「ここもそうだが、魔物が寄ってくるかもしれないから死体を処理したいんだが……」


「そうだな……村の中より外の方が良いだろ」


 京子とカルメラによって、今4人がいる所には敵の死体が何体も転がっている。

 血も大量に流れたので、その匂いに釣られて魔物が来てしまうかもしれない。

 そのため、早々に処理をしたいため、俊輔は処理場がどこにあるかを求める。

 村の中で燃やしてしまってもいいのだが、なんとなく気が引ける。

 そのため、バスコは村のすぐ外に俊輔たちを案内したのだった。






「俊輔!!」


「おぉ、サウロか……」


 敵の遺体を処分した所で、戻ってきたサウロが俊輔のもとへ駆け寄ってきた。

 バスコが呼び戻しに行ったのだろう。

 他の村人たちも続々と戻って来ていた。


「お姉ちゃんたち、ありがとう!!」


「どういたしまして!」


「たいしたことない……」


 サウロの妹のアイラの方は、京子とカルメラの所の方に行ってお礼を述べていた。

 お礼を言われた2人は、嬉しそうにしている。


「今回は我々のために申し訳なかったの……」


 近寄ってきたサウロの頭をグリグリと撫でまわしていると、一人の老人が俊輔に話しかけてきた。

 村の住人の中でも特に年齢が高いところを見ると、何だかちょっと偉い人のようだ。


「もしかして爺さんがここの村長さんか?」


「あぁ、そうじゃ……」


 なんとなくで聞いてみたら、どうやら俊輔が思った通りこの老人が村長のようだ。

 俊輔の問いに答えるように村長は頷きで返す。


「あいつらの荷物はあそこに積んどいたから好きにしてくれ」


 村長に分かるように俊輔が指さした場所には、多くの武器や荷物が山積みになっていた。

 その武器とかは、村に攻め込んで来た者たちの武器をそのままいただいただけだ。


「お前は追剥か?」


「迷惑かけられたんだから正当な報酬だろ?」


 山積みになっているのは武器だけではない。

 倒した奴らが装着していた防具も、もったいないので脱がして一緒にしていただけだ。

 村人を呼び戻しに行っていたのでそのことを知らないバスコは、わざわざ防具まで脱がし取った俊輔に対し、若干引きつつツッコミを入れる。

 しかし、いきなり攻め込んできて迷惑をかけられたのだから、これぐらいしないと割に合わない。

 なので、俊輔が言うように報酬としてもらうのは当然だろう。


「いいのかの? 倒したお主たちが持って行かないで」


 追剥染みたことをしたというのに、俊輔たちは特に関心がないように全部村に寄越してくれるという。

 それに対して、村長はもらってしまっていいものかという思いがしてくる。


「あぁ、特に良さそうなのなかったから……」


「……それじゃあ、ありがたく頂戴しようかの」


 ボリバルをはじめとする敵が持っていた武器は、どれも俊輔の興味をそそるものがなかった。

 はっきり言って、色々な素材を使って俊輔が錬金術で作り出した木刀の方が強力な武器なため、どれもただの鈍らにしか思えない。

 本当に俊輔がいらなさそうな様子なため、村長も言われたようにもらってしまうことにした。


「あぁ、そうだ!」


「んっ? 何じゃ?」


 そのまま話が終わりになったと思ったところで、俊輔はあることを思いだした。

 そして、村長に向けて懐から取り出した1枚の紙を開いて見せた。

 紙に描かれた内容を見て、村長は首を傾げる。


「これ、数人が持ってたんだけど、これって魔人大陸の地図で合ってるかい?」


「……そうじゃな。確かにこんな感じだと思うぞ」


 倒した人族たちの持っていた物を色々と物色して発見したのだが、数人が同じ内容の地図のような物を持っていた。

 それを見て、俊輔は魔人大陸の地図だと思って1枚拝借したのだが、念のため村長に確認したらやはり思っていた通りだった。

 人族大陸でも紙は結構貴重なものだが、魔人大陸でも同様に貴重なものになっている。

 そのため、地図は村長の家にある1枚だけだが、それと同じ内容になっていると教えてくれた。

 どうやらボリバルたちは、魔人大陸の他の場所からも誘拐のようなことをおこなっていたのかもしれない。


「よっしゃ! これで魔人大陸の旅行がしやすくなった!」


 少し雑ではあるが、他の町や村への行き方が書かれている。

 この村からどこへ行こうか悩んでいた俊輔たちからしたら、これほどありがたい物はない。

 どんな武器を手に入れるよりも嬉しい発見だ。


「……お主たちは、この危険な魔人大陸を旅行するというのか?」


「あぁ、ここに寄ったのも旅行の一環だ」


 喜んだ俊輔の様子に、村長は引き気味に問いかける。

 地図である程度の存在位置くらいは分かっているが、危険な魔物がそこかしこにいるので行き来することができずあまり交流がない。

 時折商人が立ち寄る程度で、それ以外にこの村に来るような者はいない。

 わざわざ危険な思いをして移動するなんてことはしないし、当然旅行しようなんて発想は思いつかない。

 そのため、俊輔の発言を受けて、村長は信じられないような表情へ変わった。


「何ともおかしな者じゃ……」


 思っただけでなく、村長は言葉に出して呟いた。

 折角手に入れた武器や防具を寄越してくれたくれたことといい、確かにちょっとおかしく思うのも仕方がない。


「えっ? 俊輔どっか行っちゃうのか?」


「……まぁ、な……」


 村長との話を聞いていたサウロは、俊輔がいなくなってしまうことを知って表情が曇る。

 その表情を見た俊輔は、何だか言いにくそうに返事をする。


「ここにいて俺を強くしてくれよ!」


 攻めてきた多くの人族を倒すような強さを持っていることを知り、サウロの中で俊輔への印象が変わったようだ。

 俊輔に教われば自分も強くなれると思ったらしく、このまま村に残って欲しいと言い出した。


「う~ん……悪いな、それはちょっと難しいな」


「何でだよ!」


 最初に会った時に比べたら随分株が上がったようだが、残念ながら俊輔はサウロの申し出を断る。

 サウロは断られるとは思っていなかったのか、俊輔に理由を尋ねる。


「俺たちは世界を回る予定なんだ。それに、お前にはちゃんとした師匠がいるだろ?」


 断った理由は単純だ。

 サウロに指導をしているのはバスコだからだ。

 俊輔はその手伝いをしたに過ぎない。

 他に師匠がいるのに、自分が横取りのようなことをする訳にはいかない。


「バスコのおっちゃん?」


「そうだ。バスコに教わって強くなれ!」


 俊輔が指さした方向を見て、サウロはバスコのことを見つめる。

 人族の襲撃を防いだ事で、バスコは村人たちにとても感謝されている。

 以前文句を言っていた男も、若干渋い顔をしながらもバスコのことを認めているようだ。

 その様子を見る限り、バスコが村に住むことを反対する者もいないだろう。

 これからはサウロとアイラの側にずっといてくれるはずだ。


「……分かった! おっちゃんに教わって俊輔より強くなる!」


「そうだ! その意気だ!」


 言いたいことが分かったのか、サウロは拳を握って俊輔に向けてきた。

 その決意を受けた俊輔は、笑みを浮かべてサウロの拳に自分の拳を合わせた。



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