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第217話

「なにっ!! 人族が攻めてきた!?」


「うんっ!」「いっぱい!」


 地下通路を通って出て来たのは、俊輔が言ったようにサウロたちと村人たちだった。

 バスコが何が起きたのかと尋ねると、サウロとアイラが慌てたように説明してくれた。

 それによると、大軍の人族が村へ向かって攻めてきているという話だった。


「カルメラの言っていた通りになったな……」


「ええ……」


「………………」


 ぞろぞろと地下から出てくる村人たちを見ながら、俊輔たちは予想していたことが当たってしまったことに表情が強張る。

 京子は俊輔の言葉に反応するが、予想していた張本人であるカルメラは、特に思う所があるのか無言で眉をしかめたままだ。


「バスコのおっちゃん! 伯父ちゃんを助けてくれ!」


「……タバレスは残ったのか?」


「えぇ……」


 村を守るために戦える男たちが残ったようだが、その中にサウロたちの伯父であるタバレスも残ったらしい。

 サウロたちの母であるルイシーナ。

 その兄のタバレスだが、バスコも知らない仲でもないので、このまま放って置くという選択はできそうにない。


「……分かった。俺が今からいって来よう」


「ほんと!?」


「あぁ……」


 タバレスが自分で残ると決めたのだから、こちらへ逃げて来るようにするのは難しい。

 しかし、サウロたちからしたらバスコと同様に父親代わりの存在のため、怪我したり、殺されてしまうのはとても悲しい。

 サウロたちを思えば、バスコとしては連れ戻しに行くしかない。


「バスコ! 何故人族がここにいる!?」


 人数が多いので、村人たちには家の庭に集まってもらったのだが、その中の一人が俊輔たちを指さして文句を言い出した。

 他の村人たちも俊輔たちのことを知らない者ばかりだからか、遠巻きに眺めながら警戒した目をしている。

 しかし、その文句を言ってきた者は一度俊輔たちに会っているはずだ。

 サウロが大怪我をした時にも文句を言っていた男だ。

 何があったかは知らないが、バスコのことを目の敵にしているようにも思える。


「……俺の友人だ。今攻めてきている奴らとは関係ない」


「はっ! どうだか! 村に向かって来ているのもこいつらが関わっているんじゃないか?」


 その男は、バスコが言うことを最初から受け入れる気が無いようで、すぐさま疑いの目を俊輔たちに向けた。

 人族というだけで、村に向かって来ている人族との係わりを勘ぐっているようだ。


「……そう思うならここから出ていけ!」


「がっ!?」


 さっきからの態度に我慢が出来なくなったのか、バスコはその文句を言っている男の胸ぐらを掴んだ。

 頭一つ分バスコの方が背が高いからか、バスコに胸ぐらを掴まれたその男は足が浮いてプラプラとしている。


「お、同じ魔人の我々よりもその人族を取ると言うのか?」


「勘違いするなよ! 助けてやるのはサウロたちの頼みだからだ。お前のように文句があるやつは同族だろうと知ったことか!」


 そもそも、自分のことを村から追い出した村人たちを助けてやる義理はバスコにはない。

 しかし、それでも仕方なくここに置いてやっているというのに、文句を言われる筋合いはどこにもない。

 この男のように文句があるというなら、さっさとどこかへいなくなればいい。

 それを、この男に言いつつも、他の村人たちにも聞こえるように大きな声で言い放った。


「ほら! 出ていけよ!」


「クッ……」


 胸ぐらを掴んで浮かせていた男を解放してやると、バスコはこの場からいなくなるように催促する。

 しかし、ここからいなくなろうにも、村には大量の人族が迫っているし、夜の森には夜行性の強力な魔物が蔓延っている。

 出て行こうにもどこにも行けないのが現状のため、その男は何も言えず俯くしかできなかった。


「……すまんな、バスコ。こんな奴だがここにおいてやってくれ」


「……村長の顔に免じてゆるしてやる。いい年こいて、いつまでも親に助けてもらってんじゃねえよ!」


 文句を言っていた男を、この場から追い出そうとしたバスコだったが、それを止めるように老人が間に入って来た。

 この老人が村長で、バスコが言うように文句を言っていた男の父親である。

 30代の中盤くらいの年齢のくせに、文句を言っていた男は村長の陰に隠れた。

 昔からこのように村長に庇ってもらうことが多いので、バスコの方も昔から嫌いだった。

 息子に甘い以外は立派な村長なので、バスコとしてもあまり強く言えない。

 子供の頃両親を早くに亡くしたバスコの面倒を見てくれたのも村長だからだ。


「それで? 村の方はどうなってるんだ?」


「戦える男たちを置いてきたが、いつここがバレるか分からん」


 村長が言うように、村の男たちが人族の相手をするにしても、人数が足らないだろう。

 彼らがやられたら地下通路のこともバレてしまうかもしれない。

 それを考えると、ここも安全とは言えない状況だ。


「バスコ!」


「んっ? 何だ?」


 ここのことも心配だが、村のことも心配になる。

 残った男たちだけでどうにか抑えきれるとは思いきれない。

 そこで、これまで黙っていた俊輔がバスコに話しかけた。


「俺たちがそいつらを相手にする!」


「けど……」


 たしかに、俊輔たちが参戦してくれるのはありがたいが、これは自分たち魔人の村の出来事。

 人族とは言っても、俊輔たちが危険なことに首を突っ込むことをしなくてもいい。

 そのため、バスコが俊輔たちを止めようとした。


「同じ人族として放って置けないからな任せとけって!」


「あっ!? おいっ!!」


 バスコが止めようとするよりも早く、俊輔たち一行は村へ向かって走り出してしまった。

 それに少し遅れるように、バスコも俊輔たちを追いかけようとした。


「サウロ!! みんなのことは任せるぞ!!」


「分かった!!」


 バスコの家のことは、サウロとアイラが一番分かっている。

 そのため、家のことは任せることにしたバスコは、サウロに指示を出して俊輔たちを追いかけたのだった。

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