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第213話

「どうした? カルメラ」


 魔人の村の中への通路が完成し、アイラに会えた俊輔はバスコの家に戻ってきた。

 俊輔が作った夕食をみんなで食べた後、風呂から出た俊輔が寝床に向かおうとしていたら、カルメラが外でボ~っと空を眺めているのが見えた。

 ここも魔人大陸では北の方に位置する場所。

 夜中の外はかなり冷える。

 長い時間外にいるのは体に良くない。

 そのため、カルメラを家の中へ戻るように言うつもりでいたのだが、カルメラの空を眺める目付きが若干鋭く、何か考え事をしているように感じたため、俊輔は何か悩みがあるのかと思った。


「……奴らのことだ」


「奴ら?」


 話しかけてきたの俊輔を一瞥し、カルメラはまた空を眺め始めた。

 そして出た言葉に、俊輔は首を傾げる。

 誰のことを言っているのか分からないからだ。


「サウロに深手を負わせた奴らのことだ」


「あぁ……、あいつらが何か?」


 サウロとアイラが村から出れなくなった原因を作ったのは、誘拐を企てた人族の者たちによる所が大きい。

 人族といっても、あんなことをする奴らと一緒にされるのは、俊輔からすると気に入らない。

 奴らがサウロを怪我させなければ、こんな穴掘りをしなくてもよかったのだから。


「今思うと、奴らの中に見覚えがある者がいた」


「どういうことだ?」


 カルメラの言葉に、俊輔は引っかかりを覚える。

 彼女が知っているということは、もしかしたら裏社会の人間という可能性がある。

 そうなってくると、少々問題が出てくるからだ。


「恐らく、我々と敵対していた組織だ」


「魔人の血を引くからか?」


「そうだ」


 裏社会で単独行動しているような人間は相当な実力者しかおらず、他はたいてい集団で行動している。

 色々な組織ができており、シモンとカルメラの兄妹の組織もその中の1つでしかなかった。

 シモンたちの組織と敵対しているというのもなんとなくだが想像できる。

 魔人の女子供を誘拐して奴隷として稼ぎを上げる組織と、大陸にいる魔人たちを解放するために色々と動いていた組織では敵対するのが当然だろう。


「奴らの組織はかなりでかい」


「……そうかもな」


 あの時の人族たちはバスコとカルメラによって仕留められたが、俊輔が見た限り、冒険者で言う所のSランク相当の実力だろう。

 それが10人近くもいたとなると、よくよく考えるとたしかに相当な組織なのかもしれない。


「もしかしたら、今回の失敗で本腰をいれてくるかも……」


 魔人を誘拐して、それを売り飛ばすことで組織の資金を集めているような奴ら。

 失敗は当然組織の運営に関わってくる。

 裏の組織はやっていることは汚い癖に、仲間だけは重要視する傾向にある。

 サウロを怪我させた時の10人は、この大陸に直接来るような奴らだ。

 組織の中でも有力なメンバーだったと考えられる。

 それが失敗したとなると、報復に来るという可能性がある。


「……総数はどれくらいいるんだ?」


「数百」


 裏の組織だか知らないが、それも数次第だ。

 たいした数でなければ、村の住人に注意を促せばもしかしたら対応できるかもしれない。

 村人たちも相手にした俊輔の経験上、集団戦闘の上手い彼らならSランク相当の相手なら何とか出来るだろう。

 そう思って、俊輔はカルメラに組織の人数を聞いてみた。


「確かに多いな……」


 聞いてきたら、なかなかの人数だ。

 村の大きさを考えると、村人の人数とそう変わらないのではないだろうか。

 老人、女性や子供を除くと、村人の方が少ないかもしれない。

 とてもではないが、攻め込まれたら終わりだろう。


「さすがに全員が魔闘術を使えるというわけではないが、結構な数の人間が使用可能だ」


「それはまた面倒だな」


 この大陸の魔物のように強い個体が大勢いようと、知能がそれほど高くないので対処しやすいが、知能を持った人間が相手になると、それも面倒なことになる。

 しかも、魔闘術の使い手になると、魔物とは比較にならないほど手こずるのが目に見えている。


「そんなのがここを狙ってきたら、ここの村の規模だと防ぎきれないな……」


「それを危惧している」


 サウロを傷つけた10人はたしかにバスコとカルメラが仕留めたが、まだ魔物にやられたというように考えてもらえる可能性もある。

 ここの魔物は、いくら実力があろうとミスすれば死んでしまうこともある。

 不測の事態によって、魔物に全滅させられたと考えれば、いくら仲間の報復をしようと言っても警戒して、おいそれとこの大陸に乗り込んでくることはないかもしれない。

 村人の中には気に入らない奴もいるが、サウロやアイラのことを考えると、攻め込まれるようなことになって欲しくない。

 カルメラとしても、あの兄妹には元気に育ってもらいたいだろう。

 そのため、裏組織の侵攻が起きないことを願っているように呟いた。


「まぁ、悩んでいても仕方がないだろ?」


「……そうだな」


 裏社会の組織が動く可能性もあるが、無い可能性もある。

 どっちに転がるか分からないことに悩んでいても仕方がない。

 俊輔のいつもの楽観的な言葉に、カルメラも納得し、同意する。


「外は寒いんだからさっさと中入れよ」


「……あぁ」


 折角風呂に入って温まったのに、話していたせいか俊輔は寒くなってきた。

 そのため、最初に思った通りカルメラを家に戻るように促し、自分は家の方へと向かい出した。

 俊輔以上に長い間外にいたため、たしかに自分も体が少し冷えてきた。

 夜空を見ることを十分楽しんだカルメラは、立ち上がると俊輔の後に続いたのだった。



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