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第211話

「ハッ!!」


 魔法によって、前方の地面が通路のように広がっていく。

 大人が2人程並んで歩いても大丈夫そうな高さと横幅だ。

 俊輔が今やっているのは、バスコの家の一室から地下へと魔法で穴を掘り、近くの村へと通路を作るということだ。


「……お前化け物か?」


「失礼な……」


 数メートルずつ進んで行く通路の建設を目の当たりにし、バスコは驚きと共に問いかける。

 というのも、出来た通路を色々と確認すると、壁の強度がとんでもない。

 軽く叩いてみたが、まるで金属で作ったかのような強度をしており、地下の魔物も入ってくることは不可能だろう。

 しかも、外から見たら何の変化も起きていないように見えるということは、掘った土を強力に圧縮して壁にしているということになる。

 それを何度も何度も行っているということは、相当魔力量が豊富だということになる。

 魔人族の方が人族よりも魔力の量が生まれながらに豊富なのだが、俊輔の場合そんな常識が吹き飛んでいるように思える。


「これ位頑丈なら、ここに入ってくる魔物はいないだろ?」


「頑丈なんてレベルじゃないように思えるが……」


 元々、強力な魔物が寄り付かなくさせる樹が植えられているため、村とバスコの家周辺には強力な魔物が入ってくることはない。

 それは地下の魔物にも通用しているようで、地中に潜む危険な魔物も姿を現したことがない。

 しかし、やはり比較的弱い魔物が出現したりするが、今俊輔が作っている強固な地下道に入って来れるような魔物は存在しないだろう。

 それ程強固に仕上がっている。


「地下じゃあ、人族も分からないだろうしな……」


「だろっ?」


 探知の方法は、通常魔力を地面の表面に這わせるように広げていくものだ。

 地下の魔物に対応するためには、地下にも魔力を流して探知する方が良いが、それでは魔力を多く消費することになる。

 それに、表面に這わせて広げるだけでも注意さえしておけば、十分奇襲を受けることはない。

 なので、人攫いの人族が侵入してきたとしても、探知に引っかかることもなければ見つかることもないだろう。

 この地下道さえ完成すれば、たしかにサウロとアイラがこれまで通りにバスコの下へ遊びに来ることはできるかもしれない。


「……しかし、2人はもう来ない方が良いんじゃないか?」


 この地下通路ができれば、確かに安全に自分の所に遊びに来れる。

 だが、自分は村人から嫌われている存在。

 今回のことで、村人たちからは更に避けられるようになるだろう。

 そんな自分の所に来ていたら、2人の兄妹も村人たちから何かしらの疎外を受けるかもしれない。

 そうなることは、2人にとっても良くないことのようにも思える。

 そのため、バスコはこれまで通り2人と会っていて良いのかと悩んでいるようだ。


「知らん! それはおっさんと2人で決めろよ」


「……おっさん言うな!」


 真剣に悩んでいるバスコの問いに、俊輔はあっさり突き放すような言葉を告げる。

 かと言って、興味が無いわけではない。

 言葉の通り、これまで通りにあの兄妹と付き合うにしても、もう会わないようにするにしても、それは直接会って話し合うのが一番だと思ったからだ。

 その通路も、その話し合いをするため一回しか使わないかもしれない。

 そうなったとしても、俊輔は別に構わない。


「このままもう会わないってなったら、あの2人には後悔がずっと残ることになるんじゃないか? それを緩和するためには、ちゃんと2人に会うのが一番だと俺は思うぞ」


「……お前、俺より年下だよな?」


 俊輔の言葉に、バスコは納得させられた気分だ。

 あの2人は、このままバスコと会えなくなれば、自分たちが勝手に村から出たりしたからだと思うかもしれない。

 ただでさえ、最近危険エリアに出てしまい、魔物や俊輔たちに遭遇してしまったことを村人たちに叱られたばかりだ。

 今回のことで、完全に村人たちからは注意人物だと思われたはずだ。

 魔物の強さから、毎年魔物に殺されて亡くなる人間が出てくる。

 そのため、なかなか人口が増えないのは、魔人の町や村の共通の悩みの種だ。

 村の未来を担う子供は特に重要だ。

 2人は大きくなるまで、簡単に村の外に出させてもらえることはできなくなっただろう。

 だから、最後に1回だけでも会って話をしたい。

 それを見透かしているような俊輔に、バスコは何だか自分より年上に思えたのだった。


「おっさんに年上とか思われたくないわ!」


 まさかの正解に内心少し驚きつつも、俊輔はバスコに突っ込む。

 たしかに、前世の年齢を合わせれば精神年齢50以上のおっさんだ。

 しかし、この世界に生まれてからはれっきとした20代。

 同じ20代だというのが詐欺のような、老け顔のバスコに言われたくない。


「だからおっさん言うな!」


 もう定番になりつつある言葉をバスコは返す。

 しかし、その言葉には悩んでいたことが消えているように思える。

 どうやら、バスコの中でどうするのかは決まったようだ。


「それより、このまま真っすぐでいいのか?」


「あぁ、この方角に進めば村の端っこに穴が繋げられるはずだ」


 話しながらも、黙々と通路を作り続けている俊輔。

 しかし、方角は方位磁石で分かるが、進んでいる先に村のどこに出るのかは分からない。

 バスコなら村のことを多少は知っているので、俊輔は確認のために問いかける。

 そして、バスコからこのままでいいと分かり、そのまま通路を作り続けた俊輔だった。



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