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第208話

前回は最初の投稿後に続きを書き足しました。

お読みでない方は、そちらを先にお読みください

「アイラ!! 離れないでね!!」


「お姉ちゃん! お兄ちゃんが!!」


 アイラの忘れ物を渡しに追いかけてきたカルメラだったが、遠くから聞こえて来た声で異変を感じ、慌てて走って来たらバスコたちが襲われていた。

 足を止めることなく動かし、そのまま一気にアイラを殴った男の腕を斬り落とした。

 これで1人は戦う力を削いだが、アイラがいる以上動き回る訳にはいかない。

 そのため、アイラを背後に庇い、周りにいる人族たちを睨みつけた。

 そんなカルメラに、アイラは兄のサウロを指さし救いを求めるような声をあげる。


「くっ!!」


 サウロの姿を確認したカルメラは、怒りが沸き上がる。

 すぐにでも治療をしないと、助けることができないかもしれない。

 しかし、バスコだけでなくカルメラも周囲を囲まれてしまった。

 これではサウロを助けたくても助けに行けない。


「……何でこんな所に人族がいるんだ?」


 カルメラを取り囲む人族の男たちの1人が、カルメラを見て疑問に思う。

 この男たちのように裏の依頼を受けた人間でない限り、人族が近寄ることはないのが普通だ。

 しかも集団ならともかく、女性が1人でいるなんてことは考えられない。


「んっ? もしかして、この女混じり者か?」


「みたいだな……」


 カルメラをジッと見ていた1人の男が、あることに気付いた。

 よく見てみると、カルメラが褐色の中に薄く紫の色が入ったような肌をしていることに気が付いた。

 その感じから、人族と魔人の混血であるということを侮蔑するような言葉を呟く。

 それによって、他の者も気付き同意した。


「よくも仲間を殺してくれたな?」


「おいっ! 勝手に殺すなよ!」


 腕を斬られた男は死んではいない。

 大量の出血をして顔を青くしながらも、回復薬を飲んで傷口を回復していた。

 仲間からの死んだような扱いに、少し大きな声をあげてツッコミを入れるが、そのせいでクラっと来たのか座り込んだ。


「お前はおとなしくしとけ」


「くそっ! 再生に金がかかっちまうじゃねえか、このアマ!!」


 斬り落とされた腕をくっ付けて回復薬を飲めば元の腕に戻せたかもしれないが、その腕はカルメラの足下。

 それを取ろうとして時間をかければ、今度は出血の方が心配になる。

 仕方がないので傷口の方を先に回復してしまったが、これではもうくっ付けることができるか怪しい。

 そうなると、高い金と時間をかけて再生しなければなくなる。

 それを考えたら、この男は今回の仕事は完全に赤字なため、怒りが湧いてくる。


「依頼主の貴族なら再生治療師の当てぐらいあるだろ?」


「おぉ! それもそうか!」


 彼らのやり取りから察するに、どうやら今回の魔人の誘拐は貴族の依頼による所らしい。

 たしかに、貴族なら再生治療をしてくれる人間と交流がありそうだ。

 それが分かった男は、嬉しそうな表情に変わったのだった。

 

「それにしても……、よく見たらこいついい女じゃねえか?」


「ほんとだ! 見た目も体つきもそそられるな」


 先程までは敵意の視線を向けていた男たちだったが、カルメラの容姿を見て下卑た笑みを浮かべ始めた。


「気を付けろよ! こいつなかなか危険だぞ!」


「確かに……、だが、こっちにはこれがあるからな……」


 中にはカルメラが現れた時の剣筋から警戒心を解いていない者もいるが、その中の一人の行動によって、カルメラは何も出来なくなる。


「っ!?」「お兄ちゃん!!」


「こいつに止めを刺されたくなければ大人しくするんだな」


 死にかけているサウロの喉元に剣を向け、カルメラが抵抗することを止められてしまった。

 これでは助けに来た意味がない。


「おのれ……」


 子供を斬った上に人質を取るなど、どこまでもクズな連中だ。

 こんなことを平気でするのだから、恐らくカルメラが昔いたような裏組織の連中なのかもしれない。

 何にしても、人質を取られたカルメラは、男たちを睨み返すくらいのことしかできなくなってしまった。


「……こいつちょっと俺たちで味見でもするか?」


 抵抗をできなくさせることに成功した男たちの1人が、カルメラの容姿を気にいったのだろう。

 その体を好きにしたいという性欲が止められず、またも品のないことを言い出した。


「いいね!」


「順番でも決めねえとな!」


 他の男たちも賛成らしく、ドンドンと話が進んで行った。

 そして、とうとう順番決めまで始める始末だ。


「ハイッ! そこまで!」


「おがっ!?」


 順番が決まったのか、男の1人がカルメラへと近寄っていく。

 その時、どこからともなく現れた男が、サウロに剣を向けている男の顔面を思いっきり蹴っ飛ばした。


「俊輔!?」


 その男の顔を見て、カルメラは喜色を浮かべつつ声をあげる。

 そんなカルメラを一瞥すると、すぐさまサウロの傷口を見る。


「ほれ、飲め!! サウロ!!」


 このままでは危険と判断した俊輔は、サウロに少し無理やり回復薬をに飲ませる。


「スー……」


「ふ~……ひとまず安心だな」


 回復薬と俊輔の回復魔法によって、腹の傷が塞がる。

 それによって、弱々しかったサウロの呼吸も安定したものに変わった。

 血を大量に流しているが、このまま安静にしておけば恐らくは大丈夫だろう。

 俊輔はギリギリ間に合ったことに安堵した。


「バスコさん!! カルメラ!! もういいぞ!!」


「「了解!!」」


 これで人質はいなくなった。

 バスコとカルメラも気にする事無く動ける。

 その事が分かり、2人は笑みを浮かべる。


「ガッ!!」「ぐあっ!!」「うごっ!!」


 枷がなくなれば後は簡単。

 バスコは自由に動き回り、カルメラはアイラを庇いながら向かって来る敵を蹴散らしていく。


「くそっ!!」「逃げろ!!」


「逃がさんよ!」


 仲間がやられ、勝ち目がないと悟った残りの男たちは、すぐさま逃走を開始する。

 しかし、そんな男たちを逃がすまいと、俊輔の魔法が襲い掛かる

 それによって、誘拐を企てた人族の者たちは全滅したのだった。



今年最後の投稿になりました。

来年もよろしくお願いいたします。

皆さま良いお年を。

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