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第202話

「あった!!」


「本当だ!!」


 山の上から見た時、村から離れた所にポツンとあった一軒家が気になった俊輔たちは、色々とこの大陸のことを聞こうと、その家の主人に会いに来た。

 上から見た時、なんとなくで場所の見当を付けていたのだが、見つけるまで少し時間がかかってしまった。

 そのため、家を見つけた瞬間、俊輔は嬉しそうに声をあげ、京子もそれに追随した。


「草の背が高いから見つけづらかったな!」


「そうだね!」


「おいっ!」


 見つかった事が嬉しいのか、俊輔と京子が少し大きな声で話をしていると、カルメラが2人の襟を引く。


「お前ら馬鹿か!? 大きな声を出すな! 気付かれるだろ!」


「そういうお前の声がでかいっての……」


「ぐっ!」


 離れた所にある村の住人には、門前払いどころか近寄ることすら拒否された。

 人族大陸よりも一段・二段上の魔物が蔓延るこの大陸で、1人で住んでいるということは普通じゃない。

 俊輔たち人族が近寄ってきたことに気付けば、村人たちのようにいきなり襲ってくるかもしれない。

 そのため、カルメラは俊輔たちが大きな声をしているのを注意したのだが、カルメラのその声も大きいと俊輔はツッコミを入れる。

 その正論に、カルメラは顔を赤くした。


「まぁまぁ、わざと気付かせようとしてるんだって……」


「何っ!?」


 立腹したカルメラが拳を握ったのを見て、殴られては嫌だと思った俊輔は、両手で落ち着けと言うようなジェスチャーをする。

 怒りが治まらないカルメラだが、俊輔の言葉に引っかかる。

 気付かれたら困るはずなのに、わざととなると何が目的なのか分からない。


「こそこそ行ったら余計警戒されるだろ? だから、何もたくらんでませんよ~って態度で行かないと」


「そんなことで……」


 堂々としていたからと言って、この大陸の人間にとって人族は敵でしかない。

 何か理由があるのかと思ったら、その程度のことにカルメラは怒りを忘れて力が抜ける。

 そして、また文句を言おうとしたのだが、


“ガチャ!”


「っ!?」


「……ほらっ! 出てきてくれた」


 俊輔たちが言い争っていると、急に家の扉が開いた。

 そして、その音に反応して俊輔たちが顔を向けると、1人の魔人族の男性がこちらをジッと眺めていた。


「すいませ~ん!」


「いや、おいっ!」


 その男性が目に入ると、俊輔は警戒心ゼロな口調で手を振りながら近づいて行った。

 俊輔のその態度に、カルメラは焦る。

 家から出てきた男が襲い掛かってくるかもしれないのに、その態度では攻撃を受けてしまうかもしれない。

 そのため、止めようと声をかけたのだが、俊輔の耳には届かずそのまま行ってしまった。


「そこでとまれ!」


「はい!」


 普通に近寄ってくる俊輔に対し、男性は低い声で止まるように指示をする。

 それに、俊輔は素直に応じて足を止める。


「お前らが最近来たおかしな人族たちか?」


「おかしな?」


 男性の言葉に、俊輔の隣に立つ京子は首を傾げる。

 襲い掛かって来た村人をおとなしくさせただけで、おかしいと言われる理由が分からなかったからだ。


「村人を叩きのめしたというのに、そのまま返したと聞いた」


「あぁ、そう言えば……」


 襲い掛かって来た村人たちは、俊輔たちが魔人を攫いに来たと勘違いしていた節がある。

 その村人たちを返り討ちにしておいて、攫うどころかそのまま返したことが、この大陸に来る人族とは違うために変だと思ったのだろう。


「村人と交友があるのか?」


「……まあな」



 俊輔たちがこの大陸に来てまだ数日、なのに一人で住んでいる彼まで知っているということは、村の情報を得るパイプがあるということになる。

 そのため、男性の言葉を聞いてカルメラは問いかけた。

 聞かれた男性は、妙な間を作って答えた。


「知られているなら話が早い。俺は俊輔」


「………………」


 空気を読む気がないのか、俊輔は男性に話しかける。

 俊輔のその態度に、男性も呆れたのか無言になる。


「ちょっとこの大陸の話が聞きたいんだけど、おっちゃん教えてくれないか?」


「お……」


 声が低く、無精ひげを生やしていることから、自分よりだいぶ年上だと思って俊輔は言ったのだが、男性の方はおっちゃんと言われたことに若干ショックを受けたようだ。


「おっちゃん言うな! 俺はまだ20代だ」


「「「「「っ!?」」」」」


 容姿などから30代中盤から後半ぐらいに見えていたのに、まさかの20代と聞いて、俊輔、京子、カルメラだけでなく従魔のネグロやアスルまでもが驚愕の表情に変わる。


「……お前ら、ふざけてんのか!?」


「いいや。全然……」


 全員に驚かれたことで、男性はピクピクと怒りに震える。

 もしかしたら、見た目にコンプレックスを持っていたのに、そこをイジられたことが気に入らなかったのかもしれない。

 おっちゃん呼ばわりは良くなかったらしい。

 なので、俊輔たちは男性の言葉に首を横に振って否定した。


「俺はバスコだ。もういい、お前ら中に入れ!」


「よっしゃ! よろしくなバスコさん!」


 これまでのやり取りで俊輔たちが危険ではないと分かったのか、バスコは家の中へ招き入れてくれた。

 話が聞けることができると分かり、俊輔は笑顔でバスコの後ろについて家の中へと入って行ったのだった。



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