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第166話

「……お前ら、全力で行け!」


 仲間の4人が倒され、長と呼ばれた壮年の男は、やや怒気のこもった口調で他の3人に指示を出した。

 長は両刃の直剣、観光で回った時に武器屋でも見たが、バスタードソードと呼ばれる剣だ。


「「「Siはい!」」」


 指示を受けた3人は短い返事をし、使っていた魔闘術の魔力を増大した。

 敵たちからしたら暗殺後のことを考えて、安全に逃走できるよう多少魔力を温存していたが、今は暗殺も失敗し4人がやられた非常事態だ。

 元々、以前同様に俊輔と京子が邪魔に入る事は想定していた事だが、連れてきた精鋭中の精鋭がこうもあっさりと倒されるとは思ってもいなかった。

 中背で2m程の直槍を持った細身のボウズ頭の男。

 左手に丸盾、右手に棘付きの鉄球を先端につけた棍棒、モーニングスターを持った中背で服の上からでも分かる程筋肉が発達した短髪の男。

 他が武器を変える中、1人変わらず短剣を片手に持ったままの長髪の男が俊輔と対峙した。

 その短剣の男は、少し離れた場所にいる長のすぐそばにいる様子を見る限り、もしかしたら魔法を使った遠距離戦闘が得意なのかもしれない。


「…………」


 3人の魔力の増大を目にし、俊輔もこれまで以上に警戒心を高めた。


「……さすがだ。魔人の血が流れているだけあるな……」


「……我々は魔人ではない!」


 俊輔が何気なく呟くと、敵の3人と長と呼ばれた男から殺気が漏れた。


『……何だ? 何かあるのか?』


 敵たちの態度がたった一言で急に変わったことに、俊輔は内心首を傾げた。




“バッ!!”


 ジリジリと俊輔を挟むように左右へと別れて移動していた、盾と棍棒を持った男と直槍を持った男。

 そのうち、俊輔の右斜め前方に移動した盾と棍棒を持った男が先に動いた。


「……っ!?」


 接近した男が棍棒を振りかぶる。

 それに俊輔が対応するべく体を向けると、男は攻撃を中断し、さらに俊輔の右側へステップして距離を取る。


「っと!?」


 棍棒持ちに体を向けたことで、俊輔の視界の端から外れた直槍の男が高速の突きを放ってきた。

 心臓を一突きする攻撃を、俊輔は横にずれることで回避する。

 傷を負わせる事にはならなかったが、その攻撃で俊輔の袖口が僅かに切れた。


「ぐっ!?」


 攻撃を躱され隙ができた直槍の男に、俊輔は木刀を振り下ろした。

 その攻撃を直槍の男は何とか柄で防ぐ事に成功するが、威力に押されて少しの距離吹き飛ばされる。

 着地と共にすぐさま体制を整えた槍の男と棍棒の男は、今度は正面から同時に俊輔に襲い掛かった。


「んっ!?」


 突きと振り下ろしの同時攻撃を放ってきた2人に対し、俊輔は太刀と小太刀の木刀でそれぞれの攻撃を対処しようと構える。

 俊輔は予定通り2人の攻撃を防いだ。

 だが、2人はすぐさまバックステップをして俊輔から離れる。

 攻撃には力がそれ程こもっておらず、まるでわざと俊輔に攻撃を防がせたようだ。


「っ!?」


 2人の行動を訝しんだと同時に、俊輔の左後方から魔力球が飛んできた。

 どうやら2人の動きは、この攻撃を当てるための陽動だったのだろうが、俊輔はすぐに魔力球へ体を向け、弾き飛ばそうと木刀を横に振った。


“パンッ!!”


『目くらまし!?』


 魔力の球に木刀が触れた瞬間、球は破裂し、白い煙が俊輔の視界を覆いつくした。

 飛んできたのはただの魔力の球ではなく、煙を閉じ込めただけの煙幕だったようだ。

 まんまと敵の策にハマった形になり、俊輔は視界を奪われた。


“ガッ!!”


「「っ!?」」


 視界を奪われ、周囲をキョロキョロと見回していた俊輔の背後へ回り、敵の2人が棍棒と槍で音を立てずに襲い掛かった。

 片方は頭部に棍棒を振り下ろし、もう片方は背中へ突きを放つ。

 しかし、俊輔は背後に体を向けない状態で、2本の木刀を使って攻撃を受け止めた。

 視界を奪ったことで確実に攻撃が入ると思っていたからか、攻撃を防がれた2人は俊輔から距離を取ることを一瞬遅れた。


「……生憎、目に頼らないでも戦えるんでな……」


「ぐぼっ!?」


 振り返る腰の回転を利用し、俊輔は槍の男に胴を放った。

 反応が遅れ、攻撃が直撃した槍の男は、呻き声と共にその場に崩れ落ちた。

 視界が奪われようとも、魔の領域での戦闘を繰り返してきた俊輔からすると、魔力を探知することは難しい事ではない。

 2人が音を立てなかろうが、背後に回ったことは手に取るように分かっていた。


「チッ!」


「逃がすかよ!」


 槍の男がやられ、ようやく棍棒の男は距離を取ろうとバックステップする。

 そんなことさせまいと、俊輔は地を蹴り棍棒の男の懐に潜り込んだ。


「ハッ!!」


「っ!?」


 棍棒の男へ攻撃をしようとした俊輔だったが、またも左後方から魔力球が飛んできた。

 そのため、攻撃を中断した俊輔は魔力球を飛ばした小柄な男の方に木刀を向ける。


「なかなかの威力の魔力弾だが……」


“ボンッ!!”


「っ!?」


 今度の魔力球は先程の煙入りとは違い、完全に攻撃用の魔力球だった。

 俊輔にはそんなことはどっちでも構わなかった。

 飛んできたバスケットボール大の魔力球に対し、俊輔は男に向けた木刀の先端からバランスボールほどの大きさの魔力球を飛ばして応戦した。

 俊輔に向かって飛んで来ていた魔力球は、俊輔の魔力球にぶつかると風船が破裂したように弾け飛ぶ。

 そして、俊輔が放った巨大魔力球は、何事もなかったように小柄な男へ高速で襲い掛かった。


「がっ!?」


 あまりの速度で反応も抵抗もすることができず、小柄な男は魔力球を食らって吹き飛ばされ、壁に打ち付けられて気を失った。


「くそっ!!」


「…………」


 魔力球を放った状態の俊輔に、棍棒の男が殴りかかった。

 その攻撃を俊輔は小太刀で防ぐ。

 反撃で俊輔は木刀を胴へ向けて振る。

 それを男は左手に持っている丸盾で防ぐ。

 それから、俊輔と男は攻撃と防御を交互に繰り返す。

 その均衡もすぐに崩れる。

 俊輔の手数の方が多く、男はそれを盾で懸命に防ぐ。


「グッ!?」


 盾で防ぐ事に必死だった男の隙をつき、俊輔は右手へ小手を放つ。

 それが直撃し、一撃で腕の骨が砕ける。


「ぐふっ!?」


 腕が折れた痛みで、盾での防御に精彩を欠いた男に、俊輔は突きを鳩尾に放って仕留めた。



書いていたらまた全部消え、凹んだ。


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