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第163話

『……とはいってみても、京子より俺の方が対人戦経験は少ないんだったな……』


 実の所、数人との戦闘は先日に1回戦っただけで、この人数を相手にするのは初めてだ。

 魔力の量には自信があるので、俊輔が魔闘術を使えば例え斬られても肉は斬られず打撲程度で済むはずだ。

 でも、油断は禁物。

 彼らも魔闘術が使えるようなので、打撲とはいえ痛いものは痛い。


「っ!?」


 二本の木刀を構える俊輔に対し、敵は八方を囲んできた。


『あれっ!? これやばくね?』


 ジワジワと周囲を細かく動き、どこからでも攻められる8人にとは異なり、攻めたら他から攻撃を受けるであろう俊輔からは攻めることはできない。

 しかも、囲んでる連中を鑑定して見てみると、魔力量がかなりのものだ。

 斬られたら結構痛いかもしれない。


『そういや、魔人族の血を引いてるんだっけ?』


 彼らベンガンサは魔人族の特徴を持っていることが頭から抜け落ちていた。

 魔人族は肌の色が違うだけという思いがあったからかもしれない。

 人族に肌の色が違うだけで他大陸に放り出され、過酷な状況下で生き抜いた種族。

 それが魔人族。

 彼らは大会に参加した冒険者を装っているので肌は出ているが、焼けた肌にしかみえない。

 変身の可能性もあるが、ほぼ人族と同じに見える。

 こうなると彼らがベンガンサの人間かは、捕まえて吐かせるしか無いようだ。


『これ相手に殺さず? 結構難しいな……』


 この人数で、この魔力量の人間相手は初めてだが、負けるつもりは毛頭ない。

 むしろ、殺すつもりならあっさり倒せるだろう。

 難しいのは手加減しないといけないということの方だ。






◆◆◆◆◆


 囲まれた俊輔とは違い、京子の方は早々に動いていた。


“バッ!!”


 対人戦闘の経験上、囲まれるのが一番戦いづらい。

 そうなる前に、京子はパーティー会場から廊下へ飛び出した。

 敵の女性たちもそれを追いかける。


「……来なさい!」


 京子の狙いは、四方から攻められることを回避すること。

 廊下という左右が壁で防がれる状況へ誘い込み、向かって来れる人間を前後だけに絞った。

 王城の廊下ということもあってか、結構幅は広い。

 しかし、戦闘をする上では2人が同時に斬りかかれる程度の広さだ。

 あっさり囲まれていた俊輔のことが気になるが、俊輔ならどうにかするだろうとすぐにその考えを消して、今は目の前の相手たちにだけ集中し木刀を構えた。


「シッ!!」


 京子の軽い挑発に反応したのか、先頭を走って来た小柄で長髪の女が両手の短剣で襲い掛かった。


“タッ! タタタッ!!”


 左右の短剣による連撃が高速で迫るが、京子はバックステップを取りながらギリギリの所で躱す。


「ハッ!!」


「ウグッ!?」


 躱されることに焦りを持ったのか、連撃の中の一撃がやや大振りになる。

 それを見逃すことなく、攻撃を躱されたことで体が流れた敵の女の腹へ、京子は拳を叩きこんだ。

 殴られた女は、くぐもった声を出して崩れるように倒れ込んだ。


「っ!?」


 この廊下は、左右の幅はなくても天井までの高さはかなりある。

 京子が1人を相手にしている内に、ガタイのいい女が両手を土台にし、そこに足を乗せた小柄で短髪の1人の女を上空へ放り投げる。

 投げられた女性は空中で体勢を整え、京子の背後へと着地した。


「フンッ!!」


 前後で挟まれる形になった京子は、体を半身にし、左右交互へ視線を向ける。

 挟まれたことで、警戒心で京子から攻められないと判断したのか、ガタイのいい女はもう一度土台になりもう細身で短髪の1人を放った。

 前に5人、後ろに2人の状態になったが、京子は焦ることなく攻めて来るのを待ち受ける。


 先に痺れを切らしたのは敵の方。

 それもそのはず、時間が経過すれば王城の警備が押し寄せてくるのが分かっているからだ。


「シッ!!」


 後方にいる2人の内、細身で短髪の女が京子に襲い掛かって来た。


「っ!?」


 と思ったら、京子が木刀を向けた瞬間すぐにバックステップを取った。


「「ハッ!!」」


「クッ!?」


 後方に京子の意識を一度向けさせるのが目的だったのだろう。

 警戒が後方へ向いた京子に、2人の筋肉質の女が同時に襲い掛かる。

 最初に向かって来た女とは違い、2人の速度はそれほど速くない。

 しかし、2人同時攻撃で手数が増えたことと筋肉による力の乗った攻撃で対応が困難になっている。

 それでも京子は木刀を使って2人の攻撃を回避する。


「「セイッ!!」」


「っ!?」


 京子が回避に少し下がると、筋肉質の2人に代わるように今度は後方の2人が襲い掛かってきた。

 さっきの2人のように力は乗っていないが速さが違う。

 変化球から今度はいきなり速球に対応するのと同じように、感覚が少しずれる。

 それでも京子は木刀で防ぎ、軽快な足さばきで回避する。


「「ハッ!!」」


「……いつまでも……」


 回避で下がると、またも代わるように筋肉質の2人が攻めてきた。

 その背後にも気を向けると、更にもう1人、中背の女が京子へ魔法を放とうと隙を伺っている。

 まだ1人しか倒していないのに、相手の連携は少々面倒臭い。


「調子に乗ってんじゃないよ!!」


 相手のことを殺さないように我慢していたが、何も全員捕まえる必要はない。

 証言させられるのであれば1人いれば済むことだ。

 そうなると、最初に腹パンで倒した女でその1人は確保した。

 元々、我慢が得意ではない京子は、意識を変えた。

 これまで纏っていた魔闘術の魔力量を増やし、殺しても良いくらいの気持ちで臨むことにした。

 それぐらいで行けば死ぬことはないだろうと、半ば生死は敵の運に任せることにした。


「「「「「「「っ!?」」」」」」」


 纏う魔力が上昇したことで、敵の7人は冷や汗が流れた。


「……今度はこっちが行くよ?」


「「っ!?」」


 京子の魔力量が上昇しても攻撃の手を止めなかった筋肉質の女2人だが、本気になった京子は速度で圧倒する。


「ぐっ!?」


 片方の女の右手に小手を打ち、短剣を落とさせる。

 痛みで声を漏らした女の動きが僅かに止まる。

 そうなると、その一瞬は1対1。

 力だけの相手なんて京子の相手にはならない。


「がっ!?」


 胴打ちを食らい、もう1人の筋肉質の女は吹き飛んで動かなくなった。


「やっ!!」


「ぐわっ!?」


 片手を打たれたもう一人の筋肉質の女が、攻撃し終わった状態の京子に左手だけで襲い掛かるが、京子は躱して回し蹴りを腹へ食らわせ、さっきの女と同じく吹き飛ばす。

 筋肉質の女2人は、京子の攻撃を受けた瞬間骨が数本折れるような音がしたため、戦闘不能になったことは言うまでもない。


「あと5人……」


 そう言うと、京子は前後の敵を睨みつけたのだった。

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