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第131話

“ボッ!!”


 3人の魔族を相手する事になった俊輔は、相手の戦力などから本気を出す事にし、これまで僅かだった魔闘術の魔力の量を増大させた。

 魔闘術は、纏う魔力が大きければ大きいだけ身体能力の強化が図れる技。

 魔族の3人も変身した状態でも強力なのだが、更に魔闘術を使っている。

 今までの戦いでも相手になっていなかったのにも関わらず、その3人の纏っている魔力の倍以上の魔力を俊輔が纏った事で、更に勝ち目が無くなった事が3人の魔族に突き付けられた。


「…………こ、こいつ、化け物か?」


 3人の魔族の中の1人、蛙の魔族のセルブロが冷や汗を流しながら呟いた。

 他の2人の魔族も、なんとなく及び腰になるのをどうにか耐えているような感じだ。 


「失礼な奴だな。どう見てもお前らの方が化け物だろ?」


 蛙・蛇・蜥蜴を人に合成したような姿をしているような者たちに、化け物呼ばわりされた事でカチンときた俊輔は、すぐに正論を返した。

 前世でも今世でも、俊輔の容姿はそんなに悪くはない。

 化け物に、化け物と言われる事はかなりの心外だったようだ。


“スッ!!”


 今まで以上に強力になった俊輔が3人に近付こうと一歩足を動かす前に、セルブロが手を軽く振り、何かの合図のようなものを他の2人に送った。


“バッ!!”


「っ!? …………逃げる気……でもないようだな?」


 その合図を機に、3人は夜の森の中へ姿を隠すように散開して行った。

 僅かに逃走を選択したのかと思った俊輔だったが、3人がかなりの距離を取った所で魔力を高めだしたのを見て考えを改めた。


「ハッ!!」


「っと!?」


 蛇の魔族のハコボが、土魔法で放った石の弾丸が高速で俊輔に襲い掛かった。

 かなりの威力なのはその速度で分かるが、俊輔からしたら十分躱す事の出来る速度の為、慌てる事無く避ける事に成功した。


「ハッ!!」


「クッ!?」


 魔法を躱した俊輔は地を蹴り、魔法を放ったハコボへと急接近した。

 しかし、移動する俊輔に向かって、今度は蜥蜴の魔族のエステバンが魔法で作った氷の柱を放ちハコボへの接近を阻止した。

 その魔法も躱す俊輔だが、その躱している隙にハコボはまた距離を取るように離れて行った。


「…………面倒だな」


 今の連携攻撃で、俊輔は3人の考えを理解し、独り言を呟いた。


「……ㇷフフ、日向の人間は魔法を使えないのだったよな?」


「どんなに剣術が優れていようと、距離を取った我々に勝てる事は出来まい!?」


 遠い距離で聞こえ難いが、先程の連携で勝機を見い出したのか、ハコボとエステバンが嬉しそうに話しかけて来た。


「……魔族にも知られているのかよ?」


 同じ人族の大陸の人間は、日向の人間は確かに剣術などによる接近戦が強力だと理解されているが、それと同時に魔法が弱点になっている事が広く知られている。

 以前京子が戦った金藤などは、それを克服するように魔法にも対処できるように訓練していたが、他の日向人はいまだに魔法による攻撃の対処が苦手である。

 日向の弱点を知っていたのか、3人の魔族は俊輔も同じように魔法が苦手なのだろうと考え、長距離による魔法攻撃に切り替えたようだ。


「形勢逆転だな?」


 セルブロの言葉と共に、3人は森の闇を利用するように移動しながら俊輔に遠距離から魔法攻撃を始めた。


「……………………」


「躱すのが上手いようだがいつまで続くかな?」


「言葉を発する余裕もないか?」


「このまま死ぬまで踊り続けろ!!」


 移動しながらの攻撃で、色々な方角から強力な魔法が俊輔に襲い掛かった。

 それを俊輔が無言で躱す様子に勝ちを確信したのか、3人の魔族は3様の言葉を投げかけて来た。


「…………ハッ!!」


 嬉しそうに話しかけて来た3人の返答と言わんばかりに、無言で魔法を躱していた俊輔は3つの水の玉を一瞬で作り出し、闇夜を利用しているつもりだが、探知魔術でずっと探知している3人の魔族に向かって弾丸のような速度で発射した。


「「「っ!!?」」」


 次の魔法を放とうとしていた魔族たちだったが、それを咄嗟に中断して避ける事を選択したため、辛うじて躱す事に成功した。

 いや、3人ともなが完全に躱せたわけではなくそれぞれ僅かに掠り、その掠った部分から血をながしていた。

 魔族の3人は、俊輔が魔法を使う可能性を考えていなかったのか、その攻撃だけで次の行動に移る事を忘れてしまったかのように動きを止めて立ち尽くしていた。


「そんなショッパイ魔法が通用するわけないだろ? 俺を普通の日向人と同じだと思うなよ!」


 言葉を放ちながら、俊輔は動作なしでさっきと同じ水球をポンポンと作り出し、一番近い場所にいるセルブロに右手の木刀を向けた。


「あと、闇に紛れようと探知できるから意味ないぞ?」


 この言葉と共に今度は左手の木刀をハコボがいる方角に向けた。


「この方角に誘導しているみたいだけど、何か罠でもあるのか?」


「「「…………っ!?」」」


 遠距離攻撃を始めた時から、3人の行動には何か違和感があった。

 まるで罠のある方へと誘うように攻撃してきている感じがしていた。

 誘導している方角に目を向けながら、その真意を探った。


「先程と同等の魔法を軽々と……とことん化け物だな」


「……罠だと分かっていても付いて来ていたのか?」


「舐めやがって!」


 3人は策がバレていた事にも慌てたが、分かっていて付いて来ている俊輔の態度に余裕と言うよりも嘲りを感じ、歯ぎしりするように怒りを沸き上がらせていた。

 俊輔は別に余裕をかましているつもりはない。

 3人は単体で戦うならば何ともないレベルの相手だが、罠と彼らの連携に気を向けながらだと仕留めるに至らなかっただけだ。

 ここで余裕のあるような雰囲気を出したのは、探知をしてもこの先に罠らしきものが存在していない様だったからである。


「チッ!!」


「……時間稼ぎか?」


 舌打ちと共に、またもセルブロは魔法陣から呼び出した大勢の魔物を俊輔に対して向かわせた。

 他の2人も、ワンテンポ遅れて同様に魔物を呼び出して向かわせ、セルブロの所に集まって行った。

 向かってくる魔物を、作って置いた魔法や剣撃で屠っている最中、横目でそれを見ていた俊輔は、時間を稼いで策を練るつもりなのだろうと考えた。



「どうする?」


「奴はもしかしたら気付いているのかも……」 


「気付いていてもいい……、何としてもあそこ(・・・)に誘い込む」


「「おうっ!!」」


 俊輔が魔物を殲滅している短い間に意識を統一したのか、簡単な会話だけでついさっきまでの曇っていた表情が、またも覚悟を決めたような表情に変化したのだった。


「いつまで無駄な事を続ける気だ?」


 あっという間に魔物を蹴散らした俊輔は、3人の意図が見えず疑問に思っていた。

 時間的にまだ発動しない罠の可能性もあるが、その場合でも僅かに痕跡のようなものを探知する事が俊輔には出来る。

 しかし、周囲にはそのような痕跡も発見できなかった。

 探知は昔から鍛えているので、俊輔は自分が見逃す事がないと確信している。

 時限式の罠もないのに、何度も魔物を使って誘導を続ける3人の事が分からないのも当然である。


「そろそろやるぞ!!」


「「おうっ!!」」


「っ!?」


 しばらく同じような事が繰り返され、これまでとさほど変わる事のない夜の森の中で3人がこれまで以上の強力な魔物を魔法陣で呼び出し、全員で俊輔に攻撃を開始し始めた。


「……? 何なんだ?」


 これまでと同じで、周囲に罠は探知できない。

 何が変わったのか分からないが、俊輔は警戒しながらもこれまで通りに向かってくる魔物を倒しいった。


「「喰らえっ!!」」


「っ!?」


 最後の魔物を斬り殺したタイミングで、セルブロとハコボが俊輔の両サイドから自爆の魔法を纏ってダイブしてきた。


“ボンッ!!”


「……? 何でそんな無駄な事を……」


 バックステップで2人の自爆を躱した俊輔は、爆発による風を手で防ぎながら首を傾げた。

 その一瞬の間が良くなかった。


「っ!?」


 最初に喰らったのと同じことをエステバンにされてしまった。

 仲間2人の自爆も策だったのか、擬態で姿を透明にしていた状態で抱き着かれて、そのまま数メートルの距離を移動させられ、俊輔はエステバンに押し倒された。


“バッ!!”


「…………んっ? …………何がしたかったんだ?」


 危害を加える意思が無かったため、また同じ手に引っかかった事を反省しつつ、俊輔はエステバンの腕から離れて距離を取った。

 俊輔が離れてもエステバンは立ち上がる事無く、仰向けになって大の字になっていた。


「……ㇷフフフ…………!!」


「……!??」


 大の字のまま笑い出したエステバンの考えが全く分からず、俊輔は頭に?を浮かべるしかなかった。


「我々の作戦は成功した」


「…………どういうことだ?」


 策と言っても周囲に罠は探知できない。

 何が成功したのか分からない事を言っているエステバンに、俊輔は疑問が膨らむ一方だった。


「早い段階でお前との実力は理解していた。そしてすぐにこの策に変えた。我々の狙いはお前をここに引き入れる事だった」


「…………………ここは? ……………まさか!?」


 周囲をよく見る事によって、俊輔もようやくエステバンが言うこの(・・)場所の事を理解した。


「そう! ここ……魔の領域(・・・・)へな!!」


 そう言ったエステバンと俊輔のいる上空には、薄い膜がドーム状に張られているのだった。


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