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第127話

「ようやく完成したな?」


「はぁ~、疲れた~」


 セノシの村の村長の依頼によって、村の復興に手を貸す事になった俊輔たちは、一週間かけて防護壁を完成させた。

 本来ならば俊輔とネグロの二人で2、3日あれば終わる所だったが、魔法が苦手な京子の練習もかねてのんびりおこなったため、これほどの時間がかかったのだった。

 最後の壁を作り上げた所で、京子は魔力を消耗した疲労からその場に座り込んでしまった。


「お疲れ! 今日はもう宿に帰ろうか?」


「うん。もう早く寝たい」


 この一週間、魔法の練習で魔力を消費する疲労感を何度も味わったせいか、京子はちょっとストレスが溜まっているようだ。


「俺は村長に壁が完成した事を伝えに行くから、京子は宿で休んでな」


「うん。そうする」


 疲れている事が表情に出ていたので、癒し代わりのネグロを渡して先に京子を宿に返し、俊輔は一人で

村長の家に報告に向かう事にした。






「こんにちは」


「おう! いらっしゃい!」


 俊輔が村長宅に着くと、村長は紅茶を出して迎え入れてくれた。


「防護壁が完成した事を報告に来ました」


 あまり長居するつもりが無かったので、俊輔は早めに報告をして帰ろうとした。

 そもそも温泉が無い事を知り、ここにいつまでもいるつもりが無かったので、明日にでもアルペスの町に帰ろうと思っている。


「わざわざすまんかったの。結構な壁を作って貰えて感謝するぞい」


 防護壁を作っている所を見に来ていたので、村長も出来栄えには納得しているようだ。


「それじゃあ……」


「次になんじゃが!」


 明日にでも帰りますと言おうとした俊輔の言葉に、村長が話を被せて来た。


「以前の魔族の襲撃で温泉の源泉が潰されてしまったのじゃが、お主なら新たに源泉を掘り起こせないかの?」


「…………」


 内心無茶苦茶な事を言いやがるなと思いつつ、俊輔は少し考え始めた。

 源泉が涸れて温泉が無くなってしまった事は、今泊っている宿の女将さんに話を聞いていたし、壁を作るときにも村の北西に向かった時に確認していた。

 今泊っている宿も以前は温泉を引いていて、それをメインにしていたのだが、それが無くなって客も来なくなり、このままでは寂れる一方だと女将も嘆いていた。

 温泉による客目当ての商売をしていた温泉街も、ほとんどの店が閉まっていて観光も楽しめない状況になっている。


『いくら何でも温泉掘り当てなんて出来んのかな?』


 魔法があるので可能性としては出来るかもしれないが、それでもかなり難しいと俊輔は思っていた。

 探知術で地下を探ってみたのだが、以前の源泉が湧いていた付近には特に感じるものはなかった。

 魔法で掘るにしても、適当に掘って当たるのを待つなんて、魔力の無駄遣いをしたくない。

 探知術で探り出すにも結構魔力が必要だし、掘るのだって手間がかかる。

 そんな事からあまり乗り気ではなかったが、もし掘り起こせる事が出来るのなら、最初の目的が達成出来て嬉しいとは思う。


『何とか源泉が湧きそうな場所が分からないかな?』


 沸く場所だけでも分かれば簡単な話なのだが、どうしたものかと悩むところである。


「……取り敢えず、今日は帰って考えてみます」


「おぉ、そうじゃな」


 今すぐには思いつかなかったので、宿に帰ってネグロを撫でながら考えようと、俊輔は村長の家から立ち去る事にした。


「…………あっ!」


 宿に帰っている時にちょっと考えたら、結構あっさりと源泉を探し当てる方法を思い出した。


「でも、やった事ないからな……」


 前世の知識を探ったら、思い出したのがダウジングだった。

 テレビで何度かやっているのを見たが、やる事が無かったので本当に成功するのか分からない。


「たしか、L字の棒のやり方と、振り子のやり方があったっけ?」


 ダウジングの事を思い出してみると、この二つの方法が浮かんで来た。

 他にも方法があるかもしれないが、大体この二つが有名だろう。


「帰ってちょっと作ってみるか……」


 取り敢えず方法は思いついたが、そもそも道具がないので作らなくてはならない。

 適当な材料なら魔法の袋の中に入っているので、錬金術で作ってしまえばいい。

 宿に帰った俊輔は、京子がネグロをモフモフして和んでいる横で錬金術を行い、L字の金属棒と糸でつるした分銅を作って眠りについた。




◆◆◆◆◆




 翌日、俊輔は京子と共に以前の源泉のあった場所に来ていた。


「……これで温泉の流れている水脈が探せるの?」


「ん~……、多分?」


 京子には分銅型の振り子を渡し、うろ覚えながらの知識でやり方を説明した。

 説明を受けても、京子は頭にクエスチョンマークを浮かべているような表情をしていた。

 俊輔自身も半信半疑なので、問いかけられても自信を持って答える事は出来なかった。


「ここは以前水脈があったのだから、もしかしたら他のが近くにあるかもしれない」


 水脈なんてそうそう見つかるとは思えないが、可能性としては高いと感じた。

 地下へ魔力を流すのは結構抵抗があるのであまり探知をしなかったが、いくらここら辺の源泉が涸れたからといって、水脈全てを潰せるとは思えない。

 それほど離れていない場所に見つける事が出来るのではないかと思い、京子と二人で手分けして探す事にした。


「……やってみて駄目なら仕方がない。見つかったら運が良いって事で良いんじゃないか?」


「そうだね。駄目もとでやてみようか!」


 昨日のうちに、もしかしたら温泉が見つかるかもと伝えておいたのが良かったのか、京子は源泉探しにやる気満々のようだ。


「じゃあ、京子は東側を、俺は西側を探そう」


「うん!」


 こうして俊輔たちは源泉探しを始める事にした。


『何だか面倒な事になったな……』


 無言でゆっくりと歩き回りながら、何でこんな事してんだという思いが浮かんで来た俊輔は、アルペスの町に帰ったらロリババアから報酬たんまりふんだくってやると密かに思うのだった。



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