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第114話

「俊ちゃん!?」


 爆発音がした方角に戻って来た京子だったが、辺り一面爆発によって地面ごと吹き飛ばし、噴煙をまき散らしていた。

 その噴煙も段々と治まり、少しずつどうなっているのかが見えてきた。

 元々あった魔族の拠点だった施設も全て巻き込まれて跡形もなく消え去っていて、巨大なクレーターが広がっているように見える。


「俊ちゃん!?」


 俊輔の姿が見えない為、京子は不安からまだ噴煙舞い散るクレーターの中に入って行こうとした。


「ピピッ!」


「ネグちゃん!? どいて!!」


 しかし、その一歩を踏み出そうとした瞬間に、ネグロが前に回って京子が行こうとするのを防いだのだった。

 その行為に、京子は余裕のない表情で退くように促したのだった。


「ピピッ!! ピピピッ!!」


「危険だからダメって!?」


 従魔との念話による会話は、従魔と契約を行った者しか行えない。

 その為、京子とネグロは会話を行えるわけではない。

 ただ、幼少期から仲が良かった事から何となくで意思の疎通が出来ているのである。


「でも、俊ちゃんが……!!」


 今回はこの事が功を奏した。

 京子の数歩前の地面は、かなりの深度の溝になっていた。

 ネグロに止められた事によって、余計なケガを負う事無く済んだのだった。

 しかし、京子の心理としてはそんな事よりも俊輔の安否の方が重要である。


「ピピピピッ!」


「えっ!? 任せろ?」


 ネグロが京子に向かって一声上げると、未だに噴煙によって全貌が見えないクレーターの中心に向かって顔を向けた。


「ピー!」


“ヒュー…………!”


 顔を向けたネグロは魔法を放ち、少し強めの風を起こして煙を吹き消していった。

 それによって、煙が急速に消えて行きほぼ全ての様相が見えてきた。


「…………そんな!?」


 煙が無くなった状態を、京子は驚愕の表情で見渡した。

 数キロ四方が吹き飛び、作り上げられたクレーターの中心には、人の姿どころか何の影も形もそこには存在していなかった。

 俊輔の存在がない事に京子は絶望し、跪いて涙を流し始めた。


「やっと結婚したばかりなのに………」


 あまりの絶望に、京子はポロポロと涙を流しながら呟いた。


「ゼッ、ゼッ……」


「!?」


 背後から聞こえた息遣いに、驚きと期待が混じった顔で京子は振り返った。


「………………うぇ~ん!!」


 しかし、背後にいた存在を目にした瞬間、京子は今まで以上に泣き始めた。


「……………………?」


 そこにいたのは、怪我によって気を失っているアマンドを、背に乗せた状態のアスルが立っていたのだった。

 先に戻りだした京子やネグロを追いかけて、ようやくたどり着いたアスルのタイミングは最悪だった。

 その事が分からず、大泣きする京子にアスルは首を傾げたのだった。


「……ピピ~…………」


 大泣きする京子とは違い、冷静に周囲を探っていたネグロだったが、何の感知も出来ないことにどんどん表情が曇っていった。








「…………心配させちったか? 悪いな……」


「「!!?」」


 突然声がしたと思ったら、京子達の右背後から俊輔がふらっと現れたのだった。


「うう~…………、じゅんぢゃ~ん(俊ちゃ~ん)!!」


 俊輔の顔を見た瞬間、京子は顔をクシャクシャにして泣きながら俊輔に抱き着いた。


「ピピッ!」


「わぷっ!?」


 俊輔ならば大丈夫だとは思っていたが、全く感知できなかった事にさすがに不安に思っていたネグロも、その姿を確認して俊輔の顔面に張り付いたのだった。


「!!? 俊ちゃん右手が……」


 俊輔の顔を見た事で安心して抱き着いた京子だったが、少し冷静になって俊輔の全体の状態を見た京子は、その姿にまた驚いた。

 俊輔の今の姿は、上半身の服は焼け落ち、体の右半身は特にひどく、至る所に火傷を負っている状態である。

 そして、京子が指摘したように、右手の肘から先が無くなっている状態だった。


「いや~……、あれほどの実力の奴が、あんなあっさり自爆するとは思わなかったよ」


 俊輔は左手で頭を掻きながら明るい表情で話し出した。


「しかも、魔石で魔力を増大させて爆発力を上げるなんて器用な真似が出来るタイプだとは思っても見なかったのが失敗だったな……」


 俊輔に追い込まれたネストールがあの時行ったのは、魔石の中の魔力を体内に吸収し、それによって膨れ上がった魔力を暴発させて大爆発を起こし、俊輔を消し飛ばす予定だったのである。


「あそこまでの爆発に耐えるのには流石にきつかったよ」


 ネストールの自爆に対して、俊輔は体内の魔力を一気に大量放出して防御力を上げ、特に利き手で魔力を咄嗟に集めやすい右手で爆発を防ごうとネストールに向けた。

 だが、そのあまりの威力によって抑えきれる事が出来ず、その場から吹き飛ばされ、森の中に落っこちたのだった。

 魔石を使った巨大な魔力の爆発だったが、俊輔が体内に内包する魔力も超膨大、何とか爆発で右手以外を焼失する事無く済んだ。


「はぁ~……、魔力思いっきり使ったから疲れたよ。ちょっと休んでから町に帰るか?」


 ネストールの捕獲は出来なかったが、なんだかんだで魔族の目的を防ぐ事は出来た。

 研究所で手に入れた資料を読み解けば、次の目的に関することもわかるかもしれない。

 取り敢えず今は休息をして魔力を回復させたいと思う俊輔だった。


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