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第106話

「「「「「!!?」」」」」


「グルルルルル…………!!」


 アマンドを含む俊輔一行が突如鳴り響いた音の方角を見てみると、ひと際大きな檻の壁が壊れ、一対の瞳こちらを眺めていた。

 呻き声を上げ、その魔物はジリジリと檻から這い出て、その全体像を俊輔たちの前に現したのだった。


「…………リンド、ブルム?」


 アマンドは、信じられないと言ったような表情でその魔物の名前を呟いた。

 その魔物は胴体が細く、足は4本、首と尾が長く、尾の先は矢のように尖っており、口はワニのように長くなっている。

 表皮は鱗で覆われていてパッと見ただけで頑丈そうな姿に見える。


「ガーーーーー!!!」


 アマンドの呟きに反応したのか、その魔物は巨大な声を上げてこちらを威嚇し、口に魔力を一気に集め始めた。


「っ!!? マズッ!!」


 魔物がこれからする事を察知した俊輔は、庇う様に味方の前に立ち、攻撃に備えるように両手を前に突き出して構えた。


“ゴウッ!!”


「ぐっ!!」


 俊輔は両手から魔力を放出し壁を作り、魔物が放った強力な炎のブレスを防いだ。


「アチチ……」


 防いだのはいいが、咄嗟だったため熱を完全には抑えきれなかった俊輔の手の平は軽く火傷を負っていた。


「俊ちゃん!?」


 急な攻撃によって俊輔が怪我を負った事に、京子は慌てたように声を上げた。


「ネグ!! 京子達を連れて地上に避難しろ!!」


「ピッ!!」


 京子の声を聞き流し、俊輔はネグロに避難の指示を出した。

 ネグロもその指示にすぐに反応し、京子をアスルの方に押して乗るように促した。


「あれ相手に一人で戦うなんて無理だ! 俊輔君もこの場を離れるんだ!」


「ちょ!? ネグちゃん押さないで! 俊ちゃんが……」


 現れた魔物の事を知っているようなアマンドは、俊輔が戦う事に決めた事に対して反対の声をかけた。

 その横で、京子は魔物と対峙する俊輔の事が心配で自分を押してくるネグロに抗議の声を上げていた。


「アマンドさん! あの魔物が何だか知ってるんですか?」


 アマンドの注意を聞き流し、魔物を注視しながら魔物の正体を尋ねたのだ。


「あの魔物はリンドブルム。強力な電撃と炎を操り獲物を仕留める肉食竜だ!」


 俊輔に問われたアマンドは、魔物の特徴を簡潔に答えた。


「……確かに強力でしたね。ハハ……」


「グルルルル……」


 先程のブレスで火傷を負った俊輔は、アマンドの答えを聞いて苦笑した。

 一方リンドブルムは、自慢のブレスを防いで睨みつける俊輔に対して警戒したようにうなりを上げていた。


「笑っている場合じゃない! 実力派の冒険者を集めて戦わないと俺でも無理な相手だ! 幾ら君が強くても一人でどうにかなる相手じゃない!」


 ここまで一緒に行動してきたことによって俊輔が自分と同等、もしくはそれ以上の実力を有している可能性が有る事を感じているが、それでも相手が悪すぎる。


「俊輔君! 俺と一緒に奴の気を反らしつつ逃走を図るんだ!」


 自分と俊輔が気を反らせば何とか逃走は可能なはずだ。

 その思いから、アマンドはもう一度俊輔に逃走の言葉を発した。


「大丈夫っす。アマンドさんも巻き込まれないように地上に避難してください」


 アマンドにそう答えると、俊輔は太刀と小太刀の長さの木刀を取り出し、リンドブルムに対して構えを取った。


「アスル! 行け!」


「ちょっと! 俊ちゃん! キャ……!?」


 ネグロに押されてアスルに乗せられた京子は、また抗議の言葉を俊輔に出そうとしたが、それをする前に俊輔の言葉に反応したアスルが突如出口に向かって走り出した事で驚きの声を出した。

  

「アマンドさんも地上に戻っていてください」


 京子を乗せたアスルが離れて行った事を確認した俊輔は、もう一度アマンドに離れるように促した。


「しかし……」


「スー…………」


 それでも反対しようとするアマンドを他所に、俊輔は深く息を吸い込んだ。


「ハッ!!」


“ドウッ!!”


 吸い込んだ空気を一気に吐くと共に、俊輔は魔闘術を発動した。


「っ!!?」


 発動した魔闘術を見たアマンドは、その魔力の密度に寒気を感じ、目を見開き驚愕の表情になった。


『な、何なんだ? この肌に響くような魔力は……』


 俊輔の魔闘術を見たアマンドは、頭に浮かんだ言葉が出せずに固まっていた。


「……アマンドさん?」


「………………」


「アマンドさん!!」


「はっ!?」


 俊輔が声をかけても反応しないアマンドに、もう一度強めの語気で声をかけるとアマンドはようやく反応した。  

 

「最後の忠告です。離れてください」


「…………分かった。君に任せるよ」


 俊輔の纏う魔力を見て格の違いを感じ取ったアマンドは、俊輔の行動と発言に納得し、京子達を追ってその場から離れて行った。


「さてと……、態々待ってもらって悪いなリンドブルム」


「グルルル……」


 アマンド同様に俊輔が纏う魔力の濃度に固まっていたリンドブルムに対して、軽口を吐きながら前傾姿勢に構えた。


“バッ!!”


「っ!!?」


 リンドブルムが瞬きをした瞬間、俊輔はリンドブルムの目の前に移動し、その事にリンドブルムは驚き目を見開いた。


「ハッ!!」


“バキッ!!”


 目の前に現れた俊輔は、木刀をリンドブルムの脳天に喰らわせ、反応を見る為リンドブルムから距離を取った。


「グッ!? グルルル……」


 攻撃を喰らってダメージを受けたリンドブルムは、頭を振るった後、自分に痛みを与えた俊輔を強敵と見なし、唸りながら睨みつけた。


「反応が遅いぞ。このまま痛めつけられてくれると有り難いんだが……」


 睨みつけてくるリンドブルムの目が戦闘態勢に変わったのを感じ取った俊輔は、警戒心を強めて木刀を構えたのだった。


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