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第103話

「……何か雰囲気が変わったね?」


 階段を降り、周囲を探ると、アマンドは素直な感想を呟いた。


「……そうですね」


 俊輔も肌で感じる感覚に警戒の気持ちを強めた。

 ここまででも十分強力な魔物が出現する危険地帯だったが、より一層嫌な空気が流れている事に俊輔は他のメンバーに注意を促した。


「皆、気を付けろよ!」


「うん」


「ピー!」


『了解です!』


 他のメンバーもこの空気を察していたのか、俊輔の言葉にそれぞれ返事をした。


「じゃあ、行こうか?」


 一応審査官としてついて来た自分が注意をする前に、俊輔の言葉によってここにいる全員が警戒の意識を強めた事を察したアマンドは、先に進むことを促した。



 階段を下り、3m程の地下に作られたであろう通路を慎重に進んで行った。


「っ!? ……何か来る!?」


 突然前方から何かを察知した俊輔は、全員に聞こえるように声を出した。


「速い!?」


 察知した方角からは3つの頭をした犬の魔物が、猛烈な勢いで俊輔達に向かって突き進んで来た。


「ケルベロス!!?」


 その向かって来る魔物を見て、アマンドは思わず声を上げた。

 SSランクの魔物のケルベロスが向かって来た事に、アマンドだけでなく京子とアスルも驚きの表情をして固まっていた。


「アマンドさん! 俺が相手します。他の仲間をお願いします!」


 上下左右3m程の広さの道幅ほぼいっぱいの大きさをしているケルベロスの相手をする為、俊輔は京子達の事をアマンドに任せてケルベロスに向かって戦闘態勢に入った。


「しかし……」


 ここまでの魔物との戦闘で、俊輔の実力を少しは理解していたアマンドだったが、流石にSSランクの魔物相手にさせる訳にはいかないと一瞬ためらった。


「早く!!」


「……分かった!!」


 アマンドがためらう間にも、ケルベロスはグングンこちらに向かって来る。

 その為、俊輔は強い口調でアマンドに指示を出した。

 指示を出す俊輔の自信のこもった表情を見て、アマンドもその指示に従う事にした。


「来いや!! 犬っころ!!」


「「「ガアアァァーー!!」」」


 アマンドによって少し下がった仲間達の事を確認した俊輔は、若干楽しそうに三つ首から声を上げるケルベロスを迎え撃とうと魔闘術を発動しようとした。


「ピー!」


“ピチュン!!”


 しかし、ここらで自分の実力を見せようとしていた俊輔を出し抜いて、頭の上に乗っているネグロがレーザーを発射して、向かって来ていたケルベロスの胴体に巨大な風穴を開けるのだった。

 風穴が開いたケルベロスは、鮮血をまき散らして横倒しになり動かなくなった。


「……………………おいっ!! ネグ!! ここで獲物の横取りは無いだろ!?」


 空気を読まない一撃によって獲物を横取りされた俊輔は、少し固まった後ネグロに対して文句を言った。  


「ピピピ、ピピピピッ!!」


「何!? いつものように獲物は早い者勝ちだって? ここはあの無人島じゃねえんだぞ。せっかくやる気になってたってのに……」


 俊輔の苦情に対して、ネグロは悪びれる訳でもなく言葉を返した。

 この世界では魔物を倒すと僅かながら戦闘力が上昇する事が出来る。

 無人島を脱出する為には強くならなくてはならなかった為、獲物を見付けたら早い者勝ちで仕留めるのがルールになっていた。

 その事を今持ち出され、俊輔は鷲掴みにして頭から下ろしたネグロと口論しだした。


「…………、まさかケルベロスを丸烏があっさり倒すなんて……」


 口論しだした俊輔達を眺めながら、アマンドは目を疑うような光景に驚きを隠せずに呟いた。


「……ほんと強くなったわね。ネグちゃん」


 日向の戦争時にも強力な魔法を放っていたのを見ていたが、改めてネグロの魔法の威力に京子も驚いたのだった。


『スゲッす!! 兄貴!!』


 アスルもキラキラした目でネグロの事を称えていた。


「それにしてもこんな所でこんな魔物と会う事になるとは思わなかったな……」


「全くだね……」


 ネグロとの口論を終えた俊輔は、息絶えたケルベロスに近寄り呟いた。

 アマンドも同意の意見だった。

 ここら辺は強力な魔物がいるのは分かっていたが、流石にSSランクの魔物が出現するなどとは露にも思っていなかったからである。


「ここから先に行くのは危険すぎるな。一旦町に帰って冒険者達を集めて来た方が良いかもしれないな」


 調査と俊輔達の昇格の審査で来たのだったが、SSランクの魔物が出るようではとてもではないが続ける訳にはいかなくなった。

 その為、アマンドは調査の中止を俊輔達に提案したのだった。


「……いや、この程度の魔物なら別に平気ですけど? 強力な魔物とは言っても通路の広さから単体で向かって来るしかないですから……」


 無人島のダンジョンの時下層の魔物達は、このケルベロス程度の魔物はゴロゴロいたので、俊輔とネグロからしたらそれほど危険だとは感じないでいた。

 ダンジョンの時はもっと広いエリアで、場合によってはこのレベルの魔物に囲まれる場合もあったので、単体ぐらいでしか向かってこれないような広さのここの通路では苦戦する事が想像できない。

 なので、アマンドの提案を受けても「何故?」と言った感じで答えを返したのだった。


「この程度って……、俺でも相手するのに苦労する魔物なんだけれど……」


 なんてことないと言った感じで言う俊輔の言葉に、アマンドは唖然とした感じで呟いたのだった。


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