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第101話

「よっす!」


 翌朝待ち合わせの場所の西門で俊輔達が待っていると、少し遅れてSSSランクの冒険者のアマンドが現れて、片手を上げて挨拶をして来た。


「どうも!」


「おはようございます!」


「ピー!」


「……」


 アマンドの挨拶に、俊輔達はそれぞれ挨拶を返したのだった。

 俊輔の従魔、ダチョウのアスルも無言で頭を下げていた。

 今回行く場所は、変異種が多く出ると言われる結構危険な場所にあると言われている。

 それなので、まだアスルの実力的には危ないので連れて行くのを辞めようかと俊輔は思っていたのだが、昨日の打ち合わせでアマンドが、目的地まで結構距離があるから足を用意しておいてくれと言って来たので、連れて行く事にしたのだった。


「へ~、君がアスル君か? 初めましてアマンドだ」


 昨日話しておいたので、アマンドはアスルに挨拶をしていた。


「……」


 アマンドの挨拶にアスルもペコリと頭を下げていた。


「さて、これから目的地に向かうわけだけど、昨日も話合ったように君達では危険だと思ったら僕が介入するので良いのかな?」


「はい、それで構いません」


 一応この調査は俊輔達のSランクへの昇格の審査も兼ねている。

 なので、審査員役のアマンドは戦闘には参加しないという事になっている。

 とは言っても、俊輔からしたら地獄のような無人島の魔物達程の化け物でもない限り助けなどいらないし、そもそもアマンドが自分よりも強いのかが疑問である。

 それは言っても仕方がないので、アマンドの提案に合わせる事にした。

 戦闘は俊輔達に任せる事になったので、アマンドには道案内と俊輔達の中で一番実力が低いアスルの護衛だけして貰う事になっている。


「では、出発!」


 アスルに魔法の袋から取り出した馬車を引かせ、俊輔達はアマンドと共に目的地に向かって出発したのだった。




◆◆◆◆◆


 2時間西北西に向けて馬車を走らせると、次第に道が無くなって行き、馬車では進めなくなって来た。


「…………そろそろ歩きで向かいましょう」


「そうだね」


 ここまで魔物との遭遇が無く、順調に進んで来た。

 ほぼ獣道になって来たので、俊輔達は馬車から降り徒歩で進む事にした。


「ここからどれくらいかかりますか?」


 ここまでアスルは結構な速度で走って来たので、距離次第では少し休ませてから行かせたいと思った京子はアマンドに尋ねた。


「まだちょっとかかるかな? 少し休憩してから進もうか?」


 京子の提案にアマンドは賛成した。






「よし、そろそろ行こう」


 少しの時間アスルを休憩させ、その間俊輔達はここからは魔物がいる気配が濃くなって来た為、武器などの装備を確認していた。

 その確認が済んだ頃、俊輔はここから先の森に向かって出発の合図を出した。


「…………俊ちゃん!」


「あぁ……」


 アマンドの指示で森の中を進んで行っていると、京子が反応した。

 俊輔も察知していたので、京子に同意の返事をした。


「私が行くね?」


「分かった」


“バッ!”


 俊輔が京子の言葉に了承すると、京子は地面を蹴って高速で茂みの方へ向って行った。


「ハッ!」


「ゲギャ!?」


 茂みの奥にはBランクの魔物であるトロールが潜んでいて、京子が自慢の速度で瞬時に接近し、愛用の木刀を振り下ろすと一刀の下に絶命した。

 トロールはオークに似た体形に鼻や耳が大きく醜悪な顔をしていて、強力な腕力によって振り回す棍棒は大木をもへし折る威力があると言われている。

 しかし、知能は低く大雑把に攻撃をしてくるので、攻撃を対処するのは難しくないが、太っている体形に似合わず鋼のような筋肉をしている為、攻撃を加えるには相当な威力が必要な魔物である。


『速っ!?』


 京子のその速度を見たアマンドは、内心驚いていた。

 その速度は、もしかしたらSSSランクの自分よりも速いかもしれなかったからだ。


『なるほど、この若さでSランク審査を受けられる訳だ……』


 この時点で、アマンドの審査では京子のSランクへの昇格はほぼ決定していた。

 あの速度とトロールを一撃で倒すような攻撃力はSランクどころかもう一つ上のSSランクに上げてもいい位である。


『!? ヤバイ!!』


 トロールを倒した京子に、巨大なダンゴ虫が高速で回転しながら突っ込んで来た。

 Aランクに相当する魔物で、回転による攻撃は岩をも砕くと程の威力で有名である。


「せいっ!」


 そんな京子に向かう巨大ダンゴ虫の攻撃に対して、俊輔が軽い口調のセリフと共にダンゴ虫を横から蹴り飛ばした。 


「へっ?」


 アマンドはその光景に思わず変な声を上げてしまった。

 確かにダンゴ虫のこの攻撃は横から攻撃するのがセオリーだが、武器ではなく普通に蹴り飛ばす事などアマンドでも出来ないというより、下手をしたら脚が吹き飛ぶような事を平気でする神経が分からない。


「ピー!」


“ザクッ!”


 蹴とばされた巨大ダンゴ虫が地面に落下すると同時に、ネグロが放った巨大な氷の槍がダンゴ虫を貫き地面に縫い付けた。


「はっ?」


 またしてもアマンドは変な声を出して驚いた。

 ダンゴ虫を倒した事よりも、丸烏のネグロが強力な魔法を放った事が驚きだった。

 昨日少し話した時に、ネグロが魔法を使えると俊輔から聞かされていたので、そういった変異種だと判断していたが、まさかここまで強力な魔法を放つとは思ってもいなかった。


「よし、先を進みましょう!」


「…………う、うん」


 倒した魔物から手早く魔石を取り出し、平然とした態度で話す俊輔に、いまだ驚きが消えないアマンドは、言葉を詰まらせながら返事をしたのだった。


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