第88話 幸せにしてくださるらしい
*食後にお読みください的な表現がございます
はぁん。西1ホール。うんうん、シャッターとか開けて行列流したりするんだよねぇ。
なぁんて、堪能している間に、嘉久の姿が見えなくなった。猪突猛進。
うん、ヒロインと結ばれるのは、たぶんあいつじゃないな。あれだけ女性に気を使えないのは致命的だ。いやまて、俺様系ってやつ?
まぁいい。ほっとこう。
メール送信。
『少し疲れましたので、カフェでお茶をしておりますわ。私のことは気にせずに会場を回ってください。帰るときにご連絡ください』
そもそも、もうお昼を過ぎた。本気で食事のことも頭から抜けてるらしい。
さて。私は懐かしみながら、新しい発見をしてピックサイトを堪能いたしましょう。
アトリウム。西館2階は企業ブースとコスプレ広場。って、ないし!
歩く歩道は動いてるし!びっくりするって!
ほとんど歩いたことのない東館2階には、おどろくことにお店がいっぱい。ふわっ。
ん?開催予定のポスター。大エンディング産業展?
エンディング?アニソンの終わりの歌にフューチャーした?
あ、葬儀関係ですか。失礼。ん?美坊主コンテスト?
そういえばだな。坊主BLサウンドノベルというのがあってだな……。これがまた、なんというか……。
みっきゅんからの情報だったのだが、すごい世界もあるなぁとしかいいようが無かった。うん。美坊主さん、頑張れ!
4時になり、嘉久からメール。タクシーターミナルで待ち合わせて合流。
「これ、本当に便利だな!」
はちきれんばかりに何かが詰め込まれたタイヤつきカバンを、からからと引いて現れた嘉久の第一声。
首からはカメラを提げている。そして、カバンに入りきらなかったパンフレットを紙袋に詰めて持っている。ちょこっとスケッチブックが頭を覗かせてる……。
ああ、もう、イケメンといえど、そういう格好すると台無しだな!
なんていうか、背景が普通なのが惜しいくらいだ。イベント(同人誌即売会)を背景にしたら、似合うよ。誰がどう見ても、イケメンオタクなんだね!って太鼓判を押すよ。
「今日は色々と、ありがとうな」
嘉久が、車に乗り込みお礼の言葉をを口にした。
ふふふ。こちらこそ。
東京ピックサイトをおかげで堪能できましたわ!自由をありがとう!
じ、つ、は……。
ダリースで、ホットドック食べちゃいましたー!きゃほーっ!おいしかった。
ビバ、ジャンクフード!
「いいえ、こちらこそ楽しかったですわ」
にっこにっこ笑顔で答えた。
嘉久が、照れたように笑い返す。
「……俺のために、色々と調べてくれたり、」
違うけど。
「一人であちこち回って璃々亜を退屈させたり、」
いや、むしろ助かった。
「こんな便利なカバンをプレゼントしてくれたり……」
‘”‘+>*$*+(#$”)%(”>”B+”!
誰がプレゼントするって言ったー!
返せ!
嘉久が、私の右手をとって、両手で握った。
「俺……、きっと璃々亜に……その……」
何だ?
「幸せにしてやれるように……がんばるから……」
ええ。今日は幸せでした。
ホットドックホットドック。
これからも、家から連れ出して放置してくんないかなぁ~。うふふ。
「何をしている!」
いつの間にか、家の前で車が止まっていたようだ。
兄が車のドアを開けると嘉久の首根っこを付かんで車の外に引っ張り出した。
嘉久に握られていた手が離れた。
「何もしていませんわ。嘉久様が、またどこか楽しいところへ連れてってくれて、私を幸せな気持ちにしてくれるそうです」
「楽しいところへなら、私が連れて行ってやる!どこに行きたいんだ?」
兄よ……。シスコン兄は、妹にぴったりくっついて離れない未来しか見えないのだが……。
私は、放置されたい。行った先で、放置されている間に、食べたいものが山とあるのです!
できれば、一緒に食べたほうが楽しいんだけどね。ボッチ飯は寂しいから……。
田中くんと、また何か食べに行けたらいいなぁ……。
「あ、いや、璃々亜……幸せって……そういうんじゃ」
と、兄の後ろで嘉久がなにやらごちゃごちゃ言っています。
そうだね。
本当はBLに囲まれるのが幸せなんだけど、今はジャンクフードもりもり食べても幸せになれます。
夕食の時間に、嘉久はトイレ産業展で見たことを、兄に大いに語った。
最新のトイレはこうだとかああだとか。
デザインと使いやすさを両立したトイレとはどーだとこかーだとか。
トイレにおける健康チェックがうんたらかんたら。
兄よ、なるほどとか、感心して聞いているが……。おかしいと思わないのか?
今は夕食タイムだぞ!
食事中にトイレの話をするなーっ!
はぁー。まったく、仕方がありません。私は、全力で無視して、食事を楽しませていただきます。
今日の夕飯は……。
カ、カレーか。
だめだめ、トイレと関連付けてしまっては!
わ、私、負けませんわ!
お読みいただきありがとうございます!
本当に感謝しております!
それなのに、ちょっと汚い話で申し訳ありませんでした!
嘉久の残念が加速しております。
でもね、オタって、束縛する人より放置する人との方が相性よさそうじゃない?お互いに、好きなものに熱中するっていう間柄?
うまく誘い込めば、嘉久は濃いオタクになれそうな気もします。




