第77話 この匂いは、カップラーメンらしい
無事に割烹着をゲットして、お礼を言って手芸部を出た。
で、今二人で、食堂でお茶飲んでます!むふっ。
友達と学校帰りにカフェでお茶するなんて、めっちゃリア充!もうボッチじゃありませーん。
まぁ、まだ学校の中だけどさ。
カフェじゃなくて食堂だけどさ。
お茶っていっても、ティーサーバーの番茶だけどさ。
食堂は24時間営業じゃないから、部活帰りや朝に喉が渇いたら人用に、、ティーサーバーがあって、いつでも暖かいお茶と冷たいお水は飲めるんだけど……。
自動販売機くらい置いてくれてもいいじゃない?と思うんだよねぇ。
ランチ時間とはいちがい、放課後の食堂に人はまばらだ。
「うわぁ、勉強してるねぇ」
いる人たちは、教科書やノートを広げて勉強している人が多い。しかも、持ち物から察するに”庶民”と呼ばれる人たちが多いようだ。
ってことは、特待生?
右を見ても、左を見ても、賢い人たちばかりってことかなぁ……。
くんか、くんか!
賢いエキスを吸収してやる!
と、鼻から粋を吸い込む。
うほっ!こ、こ、こ、この匂いは!
カ、カ、カ、カップラーメン!
いったいどなたなのですか?この高貴な学園内でカップラーメンなんて食べていらっしゃるのわ!
うらやますぎるじゃないですか!
思わず顔をぐるぐる回して、探す。あ、いた。
おいしそうに食べてるわ。くぅっ。
やば、目が合った。あんまりうらやましそうに見てたから、殺気送っちゃったかな?
「璃々亜さんは、部活どうする?金曜日だけ行く?それとも、他の曜日も行く?」
「んー、そうですわねぇ……1学期の間は金曜日だけにしようかと思っておりますわ。先生がいなくても何か作れるようになったら、他の曜日も行こうかと」
「ああ、そうだねぇ。私もそうしようかなぁ。毎日お菓子食べてたら本当に太っちゃうもんね!じゃぁ、当分は金曜日だけだよって田中くんにも言っておかないと」
田中くん?
そうだ、作ったお菓子を練習後の空腹時の足しにするって言ってた。金曜日だけで大丈夫かな?
……。本当は、お菓子くらい前世の知識でなんとでもなるから……毎日作ったほうが……。
いや、だめだめ!
今までまったくお菓子を作ったこともなさそうな璃々亜が、いきなりクッキーもケーキもシュークリームも、バームクーヘンもバンバン作ったら変だよ。うん、我慢しとこう。
だいたい、芽維たんの言うとおり、味見と称して毎日食べてたら、本気で太る!
あ、太っても別に構わないか?
えーっと、モテたいわけじゃないし、白川家なら、服がサイズアウトしたらしたで買ってもらえそうだし。
ん?でも、変装しにくいよね。
「あれ?あそこを歩いてる子、白川様じゃない?あの体系はそうだよ!あんなに太った子、他にいないって!」
みたいな?……。うん、確かに、あんまり太りすぎても目立つよね。変装しにくいよね。
っていうか、困る困らないの前に、ただでさえBL脳で女子力低いんだから、体系くらいは維持しないと、今までの璃々亜に申し訳ない。
「そうなると、他の曜日はどうしようね」
「芽維た……芽維さんは、どうなさいますか?他の部への掛け持ちとか、なさいますか?」
あっぶねーっ!
思わず芽維たんって言うところだったよ!
芽維たんが他の部も入るって言ってもなぁ、なるべく攻略対象とかとの接触は避けたいから、私はお菓子部一つでいいや。
「んー、どうしようかなぁ。こうして、部活じゃなくて、友達とおしゃべりして過ごすのもいいね」
にこにこっと何気なく、殺し文句を口にする芽維たん。
友達とおしゃべりをして過ごすのもいいですって!
聞いた?聞いたの、嘉久!
あ、だから聞いてないのは知ってるけど。
友達って、私ですよ!私!
「そうですわね」
声、震えてない?喜びに胸が張り裂けんばかりの私!
ん?そんな私の鼻に、こんどはカップ焼きそばの匂いが。
誰?いったい誰なの?
芽維たんの後ろのほうの席で、カップ焼きそばに青海苔振ってる男が。
う、うらやましすぎる。
あ、また目があった。やだ。殺気なの?私、殺気を発してるの?
「ここで勉強会とかもいいかもしれないですね」
うんうん。あ、でも……
「私が芽維さんに教えてもらうばかりになりそうですわ……それでは、ご迷惑では……」
「人に教えるのも勉強になるんだよ」
て、天使、芽維たん天使!
「ふふ、では、教えてもらうお礼に、何か甘いもの用意しますね!頭を使うと、甘いものが食べたくなりますから!」
「ええ、いいよ、いいよっ。お礼なんて。むしろ、私のほうこそ、璃々亜さんにはいっぱいお世話になってるから、お礼しなくちゃいけないのに……」
ん?私、芽維たんのお世話なんてしてないよ?
お世話してもらってるほうだよね?……謎の脅迫文回収とかしてもらっちゃってるみたいだし……。
「それにぃ、お菓子を食べ過ぎないように部活に出ないのに、ここで食べてたら結局太っちゃうよ?」
くすくすと笑う芽維たん。
「ふあっ、ほ、本当ですわ!」
勉強会やおしゃべりも、毎日じゃなくて、週に1,2回くらい、皐月たんとも話して決めようということになった。
うん、そうだね。皐月たんも大切な友達だもん。茶道部には何曜日に行くのかなぁ……。
いつもありがとうございます。
芽維たん、璃々亜のおかげで、孤立せずにすんでるって自覚あります。
引越しして、友達がいない土地で、不安だったから、友達になってくれた璃々亜には感謝です。




