第73話 三笠蔵に挨拶に行くときは璃々亜が必要らしい
「ごきげんよう」
「ごきげんよう、白川様」
昇降口で靴を脱ぐと、相良さんがさっと、下駄箱を開けて上靴を取り出してくれた。
「ごきげんよう白川様」
そして、靴を脱ぐとすかさず相原さんが靴を下駄箱に入れる。そして、相良さんが下駄箱を閉める。
「ありがとう。あの、でも、自分でできますから……」
びっくりして戸惑う私のカバンを相良さんが奪う。
「お持ちいたします」
ええ、いいよ、別にっ。って、断ろうとしたんだけど、にこって嬉しそうに微笑むもんだから、無碍にも出来ず……。
「あ、ありがとう」
な、何これ、何これ……。
私が先頭。二人が私の後ろに並んで歩く。
突き当たりの廊下の窓に映った私の姿。
うん、これ見たことあるよ、こういうの。後ろにとりま気をつれて歩く悪役令嬢だよね。
うぎゃーっ、だから、何これ!なんでこうなってんの!
「あ、やっぱり、私、自分でカバンは持ちますわ!ありがとう!」
相良さんからカバンをひったくると、二人を置いて早足で教室に向かった。
えーっと、相良さんと相原さん、いったい突然どうしたんだろう?
「高円寺様、お茶会部に入ったそうですわ!」
「本当ですの?では、私もお茶会部に入りますわ!」
今日は、部活決定の最終日だ。もちろん、今日を過ぎても退部入部などは自由だが、1年生は今日を締め切りとして最低1つの部に所属する必要がある。
部活を決めた者、まだ迷っている者、とにかく部活の話で盛り上がっている。
……嘉久が入部したからと、お茶会部に入る人がいるなど、モテモテですな。流石攻略対象キャラ。
「三笠蔵様が、どの部に入られたかご存知?」
「いいえ、私知りませんわ……」
「あら、私も。三笠蔵様はどちらに入部なさるのかしら?」
ピクリと耳が動く。
三笠蔵といえば、確か、攻略対象候補だよね。家柄が良くて見た目も良くて成績もよかった……。これで、ただのモブだというなら、ゲームを作った奴出て来い!だよ!
まさか、お菓子部に入ったりはしないよね?困るよ、困る。せっかく、ここまで遭遇せずにすんでるんだから!
「ごきげんよう、璃々亜様」
「皐月さんごきげんよう」
あ、皐月たんは情報通だから、もしかしたら知ってるかな?
「あの、皐月さん三笠蔵様が何部に入るのかご存知ありませんこと?」
私の言葉に、皐月たんがびっくりした顔をする。
「璃々亜様は、三笠蔵様に気があるのですか?」
ふえええっ。ご、誤解だ!
「ち、違いますわ。その、他の方たちが噂していましたから、皐月さんならご存知なのかと思って」
皐月さんが、ちょっと疑わしそうな顔をして私を見る。
うん、そうだよね。他の人が噂してたからって、わざわざ尋ねるの変だよね。
「もしかして、お茶会部に入るのであれば、色々大変なんじゃないかと、少し心配になったのですわ」
と、ごまかしてみる。
本当に、あの張り切り嘉久と同じ部活なんて、大変だと思うよ。なんか、昨日は掃除の修行とか言い出してたし。
嘉久よりも家柄的に権力のありそうな三笠蔵様が入部して、部内で抗争とか起きたら……おお、怖い怖い。
「ああ、そうでしたか。確かに、私たちが多少なりともお茶会部の活動方針変更に関与していることは事実ですから、気になるところではありますよね。ですが、剣崎様が上手くやってくださると思いますわ」
「おはごきげんよう、皐月さん、璃々亜さん」
おっと、芽維たん。おはごきげんようって……。
「何の話してたの?」
うおっ、やばひ。
「三笠蔵様がお茶会部に入るかどうかという話をしていました」
あわあわ、皐月たんっあっさり芽維たんに三笠蔵の名前出しちゃったよ。
どうする、ヒロイン芽維たん。
「三笠蔵様?」
きょとーんとしる芽維たん。よし、まだ芽維たんは三笠蔵に興味なし。接触もしなさそう。
「ほら、成績発表で同率1位でしたでしょう?」
皐月たんが、説明を続ける。
いいって、興味を持たせようとしなくていいってばぁ!
「んん?もしかして、特待生なのかな?特待生仲間として挨拶したほうがいい?」
「いいえ!三笠蔵様は特待生ではありませんし、挨拶はしなくてもよろしいと思いますわよ!逆に、挨拶をしに伺ったりしては……その後が、ねぇ、皐月さん?」
皐月たんなら分かるよね?
学園のアイドル的存在の男子に、挨拶に行くなんて、他の女子からやっかまれ、下手したら嫌がらせの対象になるんだよっ。
「ええ。特に気にするような方ではございませんが、もし芽維さんがご挨拶に伺いたいとおっしゃるなら」
おっしゃらないってば!
「璃々亜様とご一緒にご挨拶に伺ったほうがよろしいと思いますわ。そうすれば、誰も何も言えませんから」
はいーーーー?
皐月たん、何を言い出すの?
「分かりました」
いや、分からないで!
「その時はよろしくお願いしますね」
にこっ。って天使の微笑みとかずるい!ここ、頷くしかないじゃないかぁ!
っていうか、何で、私と一緒に挨拶したら誰も何もいえないわけ?
やっぱり、学園のアイドルに近づいたりなんかしちゃったら、言われるんじゃないの?
さっぱりわかんないんだけど。説明プリーズ!
「おはよう。なぁ、下駄箱にこんなものが入ってたんだけど、心当たりないか?」
そこに、田中くんが封筒をぴらぴらさせてやってきた。
ふあっ!もしや、その手のものは……、ラ、ラ、ラ、ラブレター?
田中くん、モテモテじゃっ。
早いよ、まだ高校スタートして1週間とかだよね?
あああ、普メン枠なんて言って侮りすぎてた?
「あっ、それは!」
芽維たんが顔を青くして、田中くんの手から封筒を奪う。
え?
え?
えええええええ?
ご覧いただきありがとうございます。
前にも書きましたが、
三笠蔵家・・・一、二を争う大財閥
白川家と高円寺家・・・五大財閥に次ぐ家
てなわけで、貴族的に言えば、三笠蔵が王族、白川と高円寺が限りなく公爵に近い侯爵家みたいな感じでしょうか?
というわけで、璃々亜が挨拶に行くのに、文句を入れるお家の方は、学園に一人か二人いるかどうか・・・といった感じです。




