第71話 嘉久は間違った知識でガーンといったらしい
「そういえば、璃々亜は実力テストはどうだったんだ?名前が載っていなかったけど?」
ぐうっ。
兄よ、名前が載っているのが普通基準にしないでくれないか?
「えーっと、その、合計で463点でした……」
「え?463点?」
嘉久が驚きの声を上げる。
ぬ。悪かったな。それでも、平均93点あるんだよ!
くそぅ、兄も嘉久も失礼なやつだ!ちくしょう、ちくしょう。
そうだ。
「ところで、嘉久様は一般常識のテストは何点でしたの?」
私の質問に、嘉久がほほを引きつらせた。
「あー、あれは……」
ふふ。テストと名の付くものは、成績に入らなくても点数が低いと悔しいんでしょうね?
「璃々亜、お前はどうだったんだ?」
ふふん。私は、満点でしたわよ!史上初の!
と、自慢しかけて慌てて口をつむぐ。
どうして満点が取れたんだ?どこでその知識を学んだんだ?とか、色々面倒な質問されそうだ。
「ええ。まずまずの点数でしたわ」
危なかった。
うっかり、実力テストの点数をバカにされた腹いせに、言わなくて良いこと言うところだった。
「そうか、まずまずね」
兄も嘉久も、適当に想像してくれたらしい。
「仕方がない。勉強見てやるよ!何が苦手なんだ?」
その仕方がないは、どこからつながっている言葉なのか、嘉久がやれやれって顔をする。
そ、そんなに残念な点数じゃないよ!平均で93点もあるんだよ!
「ふっ、嘉久、私が璃々亜の勉強を見るから大丈夫だよ」
うん、まぁ、分からないところは兄に聞いてるから問題ないです。
「人の勉強の心配するより、嘉久はどうなんだ?全国模試も、もうすぐあるけど」
げ、まじですかぁ。
今度は全国模試か!こりゃ、早急に数学の苦手分野なんとかしなくちゃ。あと理科。
「ああ、過去問題に目を通したけど、さほど問題はなさそうだ」
よ、余裕の発言。さすがは攻略対象キャラというか。
「そうか、ならいい。おまえにはKHTの点数を稼いでもらいたいからな。期待してるぞ」
KHTか……。
気合入ってるなぁ。
そうだ、兄に言わなくちゃいけなかったんだ。私の破滅回避のため、何としてもキングの座をとってもらわないといけないから!
「あの、お兄様、少々よろしいですか?二酸化炭素削減による社会貢献の件で……」
「ん?ああ、生ゴミ削減の案は、すばらしいと思うよ」
「ありがとうございます。ですが、あの、KHTで評価されるかは微妙だと思います」
私の言葉に兄が目を見開いた。
「何故?」
「いくら減らしても、我が学園が出す二酸化炭素の量は、他の高校よりも多いからです。その、例えば通学風景だけを見てもそれは明らかだと思います。そのような状態でいくら生ゴミを減らして二酸化炭素排出量を削減したと主張しても……」
兄がハッとする。
「絶対評価で考えても無駄ということか……。確かに、KHTは相対評価になるだろうな……」
絶対評価?相対評価?
そうそう、思い出した。
都キャプテンが言っていた。
東クンと戦ってぼろくそだった京を慰める都キャプテンの言葉だ。
「人と比べて褒めるのは相対評価だな。だが、大切なのは、昔の自分と比べてどうだっていう絶対評価だ。京、お前は確かに、まだまだかもしれない。だが、以前のお前と比べたら、見違えるように上達している」
とかなんとか。
あ、もちろん、その後色々ぐだぐだ言い合ったあと、あまあまな展開になって、ぬ……な感じにですな、ふふ。腐。
っていうか、都キャプテンボイスで絶対評価とか相対評価とか、もうっ、あの同人誌の朗読ですか!あ、違う違う。
「ってことは、お茶会部の活動がキングの座を左右するといっても過言ではないということか!」
嘉久が興奮して立ち上がった。
こら、食事中だぞ!席を立つな!……あ、嘉久の皿は空っぽだ。
「ああ、そうみたいだな、期待してるぞ嘉久」
……中学3年間、目標達成のためにボッチもいとわなかった嘉久……。
本気になった嘉久はどこまでお茶会部で社会奉仕活動するんだろうね?でも、正直なところお茶会部がいくら頑張っても知れてると思うんだよねぇ。
他の高校って、全校生徒の行動が評価対象となっていくわけでしょ?件数が違うよ。全校生徒500人の学校の1割が社会貢献したとして50人だもん。
しかも、うちの学校って不利だよ。
「金持ちの道楽」
とか、善意でしたことも、善意として受け取られない可能性もあるんだからさぁ。逆に茶髪のアンちゃんだと、道端のゴミを一つ拾っただけで、めちゃ善行したように評価されたりもするわけだし……。
「金持ちの道楽?」
しまった!また脳内単語が漏れた。
「い、いえ、あの……。そう思われないように頑張って欲しいですわ。例えば、清掃活動も、制服が汚れるからとちょっとしたゴミを指の先で摘み上げるようにしてゴミ袋に入れている姿を見られると、逆に評価が落ちてしまうように思いますし……」
仕方なくしてる感がありありだもんねぇ。
自分の部屋の掃除すら普段しないだろう人たちが集まって清掃活動とか、ハードルが高そうだもん。
「ガーン」
うええっ!
嘉久、口でガーンとかいいおった!
「な、なんですの?」
「いや、世間ではこんなときにガーンって言うんだろう?」
ちゃうわ!どんだけボッチの弊害が出てるんだ!
「清掃活動の仕方をまず学び、特訓しなければならないということだな!」
と、特訓。なんか、もう、方向性があらぬほうへ行ってない?
「そうだ、璃々亜、ライオンズクラゲの家族会員の友達がいると言っていたな?紹介してくれないか?清掃活動について教えて欲しいんだ!」
芽維たんを紹介しろですって?
ヒロインと攻略対象を私が出会わせるの?
やだ!めんどくさいことは先送りにしたい!
いつかは出会うかもしれないが、それは、今ではない!
ごらんいただきありがとうございます。
おかしい、なぜか嘉久が残念すぎるキャラへと進化している。




