第7話 ヒロイン?プードルちゃんは鈴木芽維というらしい
「平成○年度入学式を…………」
開会の挨拶が始まり、騒がしかった講堂が静まる。流石に、お嬢様お坊ちゃまたちは、式典慣れしているのか、無駄に騒ぐ人間はいないようだ。
私たちも会話を止めて、壇上を見る。
流れは普通。校長先生の挨拶だったり、祝辞だったり。ただ、その祝辞を述べるメンバーや祝電のメンバーが普通じゃない。国会議員はもちろん、総理大臣からも祝電が届いてるとか。大物芸能人からお祝いビデオが届いてるとか……。金持ち学校怖い!
新入生代表の挨拶は、攻略対象かヒロインかと思っていたら、何の特徴もない子だった。
名前が「愛西」だったから、あいうえお順の一番なのかもと思ったくらいだ。
そして、在校生代表として生徒会長の名前が呼ばれた。
誰も声を上げたわけではないけれど、講堂内がざわざわし、熱気に包まれる。
「生徒会長の白川敦也です。入学おめでとうございます」
お兄様が壇上に立つと、ため息があちこちで漏れる。すごい人気。
私のお兄様なんだよ!えっへん。
「はぁっ!」
心の中でドヤッてると、隣で小さな声が上がった。
驚いて声を上げそうになったのを、両手で口をふさいでとめているプードルちゃんの姿があった。
お兄様ルートか?
恋に落ちたか?
お兄様ルートに進むのであれば、全力で応援するよ!
早速、親友になり、家に招待してお兄様を紹介するのだ!最短ルートでカップルになってくれれば、破滅フラグ回避が楽になるからさー。
入学式が終わり、各クラスの教室へ移動する間、女性徒たちはお兄様の話題で持ちきりだった。
ぐふっ。身内が褒められるのって嬉しいもんだね。
ニマニマしていると、プードルちゃんもそんな女子たちの話が聞こえたのか
「生徒会長人気ですね」
「ありがとうございます」
お礼を言うと、きょとんとした顔をされる。
「私の、自慢のお兄様なの」
「本当ですか?」
「ええ、申し遅れました。私、白川璃々亜と申します」
「あ、私、鈴木芽維です」
鈴木!
ああ、なんということでしょう……。生前の親友みっきゅんと同じ苗字!すばらしい!
「芽維さんと呼んでもよろしいかしら?私のことは、璃々亜と呼んでください」
ボッチいや。
孤高の女帝なんて二つ名なんてすぐに返上してやる!
前世ではありえない、出会ってすぐに下の名前呼びを実行してやるっ!
「り、璃々亜様?」
うおっ、様付け来たー!
やだ、悪役令嬢みたいじゃないのんっ。
「芽維様と呼ばれたいのですか?」
「あ、いえ、あの、でも、いいんですか?」
芽維さんは、目を動かしてちょろちょろと周囲を気にする。
周りの生徒たちは、お互いに様付けで呼んでいる人も多い。まねしないとだめかなって思ってるのかな?
中には呼び捨てだったり、愛称っぽいもので呼んでいる人もいるから大丈夫だよね?
「もちろんです。私たち、お友達になれますわよね?」
にこっと笑って見せた。
でも、内心バクバクです。
断られたらどうしようって……。
孤高の女帝なんてやだーっ!
「はい。よろこんで」
にこって笑ってくれる芽維ちゃんは、そりゃもうポケットに入れて持って帰りたいくらいのかわいさ!
ぐおおおっ、お兄様と結ばれれば、お義姉様になるわけですね!
にやりっ。
「えっと、その……」
もじもじ芽維たん。
「?」
「メールアドレスとか……」
おー!それだ!友達といえば、それ!
シャッキーンと、ポケットからスマホを取り出し構える。
芽維たんも、桃色のカバーのスマホを手に持ち、操作を始めた。
あれ?
「ストラップは付けていませんの?」
付けてたよね?
「バスケの王子様」の都キャプテンみたいな人形のついたやつ。
やっぱり見間違えだったのかな。
って、そりゃそうか。ゲームの世界で、他の版権作品があるわけないか……。コラボでもしてないかぎり……。
「皆さん、ちゃんとした物を付けてるのを見て、はずしました」
え?ってことは付けてたのは間違いないの?