第68話 史上初の、一般常識テスト満点らしい
教室内を見渡す。
えっと、頭をたれてる人の数が増えてる。それって、なんだろう、あーもうめんどくせっとか思われちゃった。こりゃ失敗だ。
「み、皆様、上を向いてくださいますか?」
顔を上げようね、下を向くと気持ちまで下向いちゃうから。
私の言葉に、クラスメートは意外にも素直に上を向いてくれた。私は天井で煌々と教室を照らしている蛍光灯を指差した。
「クラゲを思い出してください。蛍光灯とクラゲ、一見関係ないようですが、密接な関係があります」
「ノーベル賞を受賞した、青色発光ダイオードですね!たしか、クラゲの発光物質の研究から発見に至ったとか」
芽維たんがナイスフォロー。
「ええ。その通りですわ。皆様、関係ないようでいて、つながりのある事柄というのは世の中にはたくさんありますわ。知らなくてもよい知識など、ございません。今は役に立たないと思われる事柄も、どこでどう役にたつのかは分かりませんもの」
どんなことだって、BL作品に役立てちゃう作家さんたーくさん見てきたからね!
LEDの話だって、みっきゅんから借りた同人誌に載ってたのそのまま引用させてもらっただけだし。
京様が悩んでて「関係ないだろ!」って都先輩を突っぱねたときだ。「関係があるかないか、そんなのは分からないだろ」って。「顔を上げてみろよ」と、両手でほほを掴んで、京様の顔を上に向かす都キャプテン。そこで、クラゲの話来たー!んでもって、二人は……ふふふの腐。まさか、BL同人誌がこんなところで役に立とうとは!ってやつですね!
「分かります!万有引力だって、部屋にこもって机とにらめっこしていては発見できなかったのですものね!外に出て、りんごが落ちるのを見たからこそ発見できたのですわ!自分には関係ないと殻に閉じこもって知ろうとしないというのは色々な可能性を自分で捨ててしまうのと同じことですわ!」
と、皐月たん。
ん?万有引力って何だっけ?
そうだ!「すべての物は、引力があり引き合っているってニュートンも言ってるだろう。だから、僕と君が引かれ合うのも、自然の摂理なんだ」って、東くんが京様を誘惑してた。ふふ腐。
おっと、いけない。また妄想の世界に入り込むところだった!
なんだっけ?
「と、いうわけで、私たちは、色々なことを知る機会を与えてくださる学園に感謝しなければならないのですわ。そうですわね、先生?」
そうそう、とっとと、一般常識おしえろやー!と、プロレスラーっぽく叫んでみる。
「そうだな。じゃぁ、一般常識テストの解説をしてもらおうか。一般常識のテストが実施されるようになって以来、初の満点を取った、」
うお、すごいな。何年前からあるかわからないけれど、初とか。
実力テストなんて、満点がわんさといるのに、一般常識テストでは史上初!って、どんだけすごいんだ!
「白川、引き続き頼んだぞ」
すごいね、白川さんとやら。
……。
って、あたし~!?
嘘でしょ?何で?
私、この世界の常識なんて知らないんだけど?
むしろ、他の人よりも常識知らずなんですけど?
クラスメートの目が、私に向いている。期待に満ちた目。なんだか、キラキラした目も混じってるよ?
「流石は女帝……」
だ、誰!
今、私のこと、忘れたい名前で呼んだの!
一人だけ満点とか……だれが、ボッチ満点ですか!
っていうか、こっちの世界の常識が分からない私に、常識を語らせるなんて無謀もいいところだと思います。はい。
「百聞は一見にしかずと申します。まずは、皆様一度実際に経験なさるのがよろしいのではなくて?実際に電車を利用してみればよろしいかと思いますわ」
内心ひやひやしながら、にっこり笑って見せる。
「物の値段については……、財布の中に3000円だけ入れて、一日街に出てみればよろしいと思いますわよ。電車やバスの運賃、昼食代金に、遊戯費と、お茶代に買い物代。3000円で1日楽しむことが出来れば、大体のお値段が分かるのではありませんこと?」
私の言葉に、顔が引きつっている人が何人かいる。
え?
「白川様、3000円では、その……少なすぎるのではございませんか?」
え?そう?
十分だよね?
「ティータイムのお茶とケーキ代しか出ませんわ」
……こーの、ばかちんがーっ!
「いつも利用しているお店ではそうかもしれませんわね。そこは、ちゃんとお値段を見て、お金を使わなければなりませんわね。そのための、経験ですから」
3000円のうち、電車賃600円。映画が1500円。ランチが600円。300円でティータイム。うん、行ける。
電車を使わない場所にでかければあと600円も使えるし。映画じゃなくて、カラオケ3時間980円なら、あと何ができるかな。
そうだなぁ。遊園地に行くにはちょっと足りないなぁ。パスポートだけで結構な額だからね。でも、そういう場合は奮発して、1万円持っていくんだよ。
っていうか、この間まで中学生だったって考えれば、1日で3000円も使いすぎなんだけどね!4回出かけたら12000円でしょ?
「そうですわねぇ、いきなり実践というのは難しいと思いますから……このテストで70点以上の方は手を挙げていただけますか?」
芽維たんと田中くんと他に2人。私も入れて5人だ。
「では、今手を挙げた方を中心とした5グループに分かれて、1日の過ごし方をシミュレートしてみましょうか?」
……。どうか、この世界の常識知らずがばれませんように。
スターパックスとか、この世界では何て名前なんだろう……。お茶休憩はそこがいいよとか、名前知らないから迂闊なことはいえないよなぁ。
はぁ。
「先生、それでよろしいでしょうか?よろしければ、グループ分けをお願いしても?」
というわけで、5グループに分かれて、3000円で一日楽しむには?の計画を立てました。
小学生か!
ま、おかげで、クラスメートの名前を5人覚えることができました。
相模くん君、相原さん、相良さん、相沢くん、えっと、それから、相撲くんだったかな?
っていうか、相の字多すぎ!すぐ忘れるわ!
忘れないように、えーっと、メモメモ。
相模くんは、うどんが似合いそうな和風顔。
相原さんは、ピーターパンの舞台女優が似合いそうな感じ。
相良さんは、甲子園へつれてってなマネージャーヒロインの後輩マネージャーみたいなモブ顔。
相沢くんは、野球漫画で言うと、背番号も打順も目立たない適当に描き散らかされるモブ顔。
相撲くん……じゃない、えっと、なんていう名前だったかな。そう、轟くんだ。轟くんは、相撲くんという名前が似合いそう。
そして、このグループ、どのように3000円プランを立てても「それじゃぁ、おなかが空く」と轟くんがクレームを出した。
もう、にぎりめし持参でよくね?
いつもありがとうございます。
富士ゆゆでございます。
モブさんをいっぱい出しちゃいました。彼ら、彼女らにも出番はまだあります。
名前似たものばかりで申し訳ないです。
相がついていたら、今回のこのグループメンバーだと思い出してもらえればと思います。




