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【書籍化】オタクガール、悪役令嬢に転生する。【web版】  作者: 富士とまと


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第61話 バスケは音だけでも十分楽しめるらしい

 予定より少し遅くなったけれど、運動部の見学開始です。

「どの部から、見学いたしましょうか?確か、バレーとバスケと野球とテニスでしたでしょうか?一応他の部活も見ますか?」

 皐月さんの言葉に、

「んー、皐月さんとテニス部を少し見たでしょう?テニス部は、大体分かってるから、バレーとバスケを見学しようかな?璃々亜さんもそれでいいですか?」

「ええ、どちらからでも構いませんわ」

 ポケットから黒縁伊達眼鏡と小さなメモ帳を取り出す。

 攻略対象との遭遇がないことを祈る。


 第一体育館に、到着。第一とかいう名前があるってことは、第二とかあるわけで。

 金持ち学校め!

 これだけ贅沢に練習空間があれば、部活でも好成績残せるだろうよ!

「あら、もしかして……あちらでご指導なさっている方は」

 元日本代表選手がコーチとか。

 金持ち学校め!


 前世の記憶の中の体育館よりも広い空間が広がっている。奥半分がバスケ部、手前半分がバレー部が使用していた。まずは、バレー部。

 女子バレー部が、元日本代表コーチの元、レシーブ練習に励んでいる。その奥では、トス練習やサーブの練習など、何組かに分かれて練習していた。

 ……。

 背が高い人が多いなぁ。まぁ、バレー部だから当たり前といわれればソレまでだけど……。

 も、もしかして、お嬢様は、食べるものがいいから、すくすくと成長するとか?

 そうそう、広い家に住むと、体は大きくなって、狭い家に住むと小さくなるってなんかで読んだことがある。あれ?それは昆虫の話だっけ?植物の話だっけ?

「女子バレー部は、運動推薦で優秀な選手を獲得しているだけあってすばらしいですね」

 やたらと背の高い女子が多いのは、推薦で入ってきた人なのかぁ。

 そりゃそうか。お嬢様が背が伸びるんなら、この学校、ノッポばっかりだよ。心の中で手をぽんと打つ。

 あれ?でも、スポーツ推薦で入っているってことは、庶民ってことだよね?こういう乙女ゲームって、庶民がヒロイン率高いわけで……。

 もしや、バレー部女子に、ヒロインが紛れ込んでいるのでは?

 改めて、部員の顔を一人一人チェックする。スポーツ推薦で入学した人は1年でもすでに練習に参加してるそうだ。顔を見てヒロインかどうか判断するなんて失礼かもしれないが、顔チェック。

 バシュンッ、ビシュンッっと、すごい音をさせてアタックされたボールを、ビシッ、ドシッと、レシーブしている。

 もう、音を聞いているだけで、痛いよぉ。

 ううううっ。

 っていうか、いない。いないと思うよ。なんか、みんなすごく強そうだもん。悪役令嬢をはるか頭上から見下ろすヒロインなんて聞いたこともないよ。私が悪役令嬢の立ち位置なんだよ。首が後ろにがくんっともげそうになるくらい見上げながら「立場を分かっているのですか?」とかいえるわけない。

 踏み台、踏み台持ってきてちょうだい!からスタートするいじめ役とか、ギャグとしか言いようが無い。

 

 ん?

 マネージャーだろうか?ボールを運んだり、モップで床の汗を拭いたりと、背が低い、いや、普通くらいの背の生徒が5人ほど動いている。

「彼女たちは、推薦入学ではなく、一般入学ですね。バレーが好きで続けている子たちで、マネージャーも兼ねているようです」

 情報通な皐月たんが説明してくれた。

 仕事がひと段落すると、ボールを持って開いている場所で練習を始めるのが見える。

「そっかぁ、補欠の部員が、マネージャーも兼ねているんだね。だったら、マネージャーは必要ないんだね」

 男子バレー部は無いみたいで、次はバスケ部。

 バスケ部は逆に男子のみ。女子バスケ部はないようだ。


 バスケ部は男子のみ。

 バスケ部は男子のみ。

 大事なことなので、繰り返してみた。

 あ、だめ。私、3次元BLには興味がないんだから!

 まずは、メンバーチェック。け、決してBL妄想要員がいるかどうかチェックするわけじゃないからね!攻略対象候補がいるかいないかのチェックだからね!

 男子バスケ部も、高身長な人間が多い。やっぱりスポーツ推薦らしい。

 ふむふむ。

 でもね、バスケは背が高ければいいってわけでもないんだよ!

 京様はね、バスケをするにはそれほど身長が高くないんだけど、努力に努力を重ね、自分にしかできないような技術をいくつも身につけてるんだ。

 まるで、手の一部じゃないかと思うようなドリブルに、足の速さとスタミナを生かし華麗にディフェンスを交わした攻撃。そして、正確にリングを狙うシュート。

 背の高い選手のように、リバウンドで勝負したり、ダンクシュートを決めたりといった派手なことはできない。だけど、都キャプテンが言うのだ。

「お前に足りないところは、俺が補う。だから、俺に足りないところは、お前が補ってくれ」と。

 むふ。落ちたね。落ちた。その台詞で背が伸びないことを悩んでいた京様ってば、コロリと落ちたー!ふふ。

 手に持っていたバスケットボールもコロリと落ちたー。西日に照らされ、長く伸びたバスケットボールの影が、二人の足元にかかっている絵。

 あら、京様ってば、爪先立ちになってるじゃないの!何してんのかな、二人!っていう同人誌があってだなぁ。ふふふのふふ腐。


 いけない。つい、妄想が……。

 くいっと、眼鏡を人差し指で上げて、バスケ部メンバーを観察する。

 うん、取り立てて、攻略対象になりそうな人は見つからないなぁ。

 視線を足元に落とす。

 そうすると、視界には体育館の磨き上げられた床と、私の足元だけが目に映る。後は、音だけ。

 バスケットボールが床を叩く音。体育癇シューズがキュッキュと床とこすれる音。

 ああ、バスケの音だ。


「こっちだ、パス」

 ああ、都キャプテンの声が聞こえる。

「させるか!」

 おお、対するは東クン。


 うええっ!何、何?!幻聴?

 やだ。私ってば、あんまり長いことBL成分足りてないから、妄想だけじゃなく、幻聴まで聞こえてくるようになるなんて!


 いや、それはそれで美味しいな。うん。もう少し、幻聴を聞いていよう。

「はっ、止められるかな?」

 都キャプテンがんばれー!

「止めるさ!」

 東くん、都キャプテンを止めて、京様にいいとこ見せないとね!腐。


 ああ、何て楽しい幻聴なんでしょう。

「シュートだ!」

「ああ、くそっ」

 お、都キャプテン、東くんを抜いてゴールしましたか!

 ぐふっ。京×都派の私としては、実に順調な流れですね!まぁ、私の幻聴なんだから、東くんが勝って京様といちゃいちゃなんてありえないんだけれども。

「璃々亜、見てなかったのか……」

 都キャプテンが、残念そうな声を……って、ええ?

 顔を上げると、兄の姿があった。


 幻聴じゃなかったよ。都キャプテン声の兄だった。

 ん?じゃぁ、あの東くん声はいったい?

 ふおっ、新たな攻略対象キャラ?

 だ、だ、だ、だって、東くんと同じ声優を使ったゲームキャラってことでしょ?

 東くんの声優さんはそれなりに有名な人だから、まさかその声優さんを雑魚キャラに使ったりはしないはず!ってことは、東くん声の人は、攻略対象に違いないわけで……。


ご覧いただきありがとうございます。

バスケ部登場です!

あれ?おかしいな。なんでバスケ部に兄がいるの?教えてプリーズ!

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